第4話。【超回復】で最強の軍団作りに着手する
「……恐るべきことが判明いたしましたな」
フェリクスは興奮を抑えきれない様子だった。
それは俺も同じだった。
「【超回復】を使えば、いずれゼノン坊ちゃまを中心とした史上最強の軍団が、誕生することになりましょう。このフェリクス、この歳にして、血湧き肉躍る心境にございますぞ!」
まさにその通りだ。
ゲーム主人公の聖女アリシアは心の優しい少女で、【癒しの奇跡】を使って、戦争で仲間が誰も死なないことを目指した。
アリシアは、戦死者がほぼ出ない不死に近い軍団を最終的に作り上げたが、俺はもしかしてそれ以上になれるのか?
「……まだ、МPが少なすぎて、一日一発しかヒールが撃てないけどな」
浮かれそうになるが、現状が厳しいことには変わりない。
破滅を回避するためには、ここから最善手をいくつも打っていく必要がある。
「フェリクスが戦線に復帰してくれるなら、ありがたい。父上ではなく、俺の配下として共に帝国軍と戦ってくれないか?」
「なんと、ゼノン坊ちゃま……!」
本来なら戦力として、フェリクスを父上の陣営に送るのが筋だ。
だが、貴重な戦力としてフェリクスは手元に置いておきたかった。
多分、フェリクスを俺の【癒しの奇跡】で治したと言っても、父上は簡単には信じないだろう。
父上の目を治せば一発だが、再び会いに行っても、また鉄拳制裁で気絶させられて終わるに違いない。
俺はゲーム知識で、帝国軍の陣容や弱点を把握している。
俺の思い通りにグレイヴァン辺境伯軍を動かせれば、帝国軍を撃退できる可能性が高い。だが、俺に失望した父上が俺の意見を聞くことは、まず無いだろう。
なら俺は俺で、自由に動かせる独自の戦力を持ち、それを使って帝国軍と戦うべきだ。
「はっ! このフェリクス、次期当主たるゼノン坊ちゃまに剣を捧げます! 我が力、いかようにもお使いくださいませ!」
フェリクスは感動に打ち震えながら、俺に向かって跪いた。
「ありがたい。それじゃ、まずは父上がコレクションしている壺をすべて売り払って、その金で傭兵団を雇ってくれ」
「えっ、はぁ……?」
フェリクスは面食らった様子だった。
「俺の手足となる兵が必要だ。父上は怒り狂うだろうけど、勝つことが最重要だからな」
「ほ、本当によろしいのですか? お館様の大事な壺を」
「当たり前だ。家宝にするとか言って無駄に高価な壺を買い漁っていたし。1500人くらいは雇える金額になるんじゃないか?」
質的、数的に劣る傭兵団だろうと、【超回復】で強化すれば、帝国軍と渡り合える筈だ。
「領民の命を救うために、お館様の怒りに触れることも厭わぬとは……誠にご立派でございます!」
「領民の命……?」
はて? 俺は、俺の破滅を回避するために力を尽くしているのだが……
もちろん、俺によくしてくれたフェリクスや厨房のおっちゃんたちも救いたいとは思うが、領民のためとまでは、考えていなかった。
まあいいか。
「それとオースティン侯爵家にも、俺への援軍を出して貰えるように頼んでくれないか? あそこのご令嬢とは一応、婚約者だし、最低でも1000人くらいならお義理で兵を貸してくれると思う」
とりあえず、兵を掻き集められるだけ、掻き集めないとな。
「……誠に申し訳ございません。お伝えするのが遅れましたが、残念なことに、昨日オースティン侯爵家からゼノン坊ちゃまとご令嬢との婚約は、白紙にしたいとの連絡がございました」
「はっ? うん、ああっ、そうか……」
まあ、そうなるか。
考えてみれば、将来性皆無の外れスキル持ちとの結婚を望むような貴族令嬢がいる訳もない。
わかってはいたけど、一度だけ会ったオースティン侯爵家のご令嬢は美少女だったんで、少しばかりガクッと来た。
「その代わり、王国きっての大貴族アスフォデル公爵家のご令嬢、ヴァレリア様とのご婚約が決定いたしましたぞ」
「……はっ?」
一瞬、言われた意味がわからずに硬直した。
聞き間違いか? アスフォデル公爵家といえば、王家に連なる名門、王国の剣と称される大貴族だぞ。
「なんで、そんな名家のご令嬢が、こんな辺境に嫁に来るんだ?」
……あ、あれ、待てよ。
ヴァレリア・アスフォデルだって……? その名には聞き覚えがあった。
「お館様とアスフォデル公爵様は、貴族アカデミーの同期で、学生時代は大の親友だったのです。その縁を頼り、お館様はこの地を守り抜くため、昨晩、アスフォデル公爵様と通信魔法で話し合って、急遽、縁談を取りまとめたのです」
「……そんな縁があったんだな」
いや、そんな繋がりを作り、協力関係を生み出すために、貴族は15歳になると3年間アカデミーに通う義務があった。
俺も今年、戦争で死ななければ、アカデミーに通う予定だ。
「はっ、ヴァレリア様は、この地に向かって出立しておられ。その護衛として公爵家の擁する精鋭騎士団シュヴァルツ・リッターの中でも、選りすぐりの騎士と魔法使い合計80名が付き従っているとのことです」
「随分と性急だが。要するに、援軍目的の政略結婚か……?」
「はっ。まさにその通りでございます!」
数は少ないが王国最強と名高いシュヴァルツ・リッターが来てくれるなんて、実にありがたいことだった。
文字通りの一騎当千の武人がいるこの世界では、兵は数より質だ。80名のシュヴァルツ・リッターは、およそ一万の兵力に相当する。
これは、かなり心強いことじゃないか!
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