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第34話。敵の本隊に突撃して無双し、味方から軍神と讃えられる

「このままうまくいけば剣聖バルド様が、レティシア皇女を討ってくれるかも知れないわね、ゼノン! あなたの作戦は最高よ!」

「ああっ、その通りだが……」


 ヴァレリアが俺の首に腕を回して、俺を見つめてくる。

 

 唇が触れそうなほど至近距離にあって、思わず心臓がドキッと高鳴ってしまった。


 だが、彼女の顔色は悪く、疲労が滲んでいた。

 俺は考え込んだ末に、ヴァレリアをそっと地面に降ろした。


「ヴァレリア、ここで待っていてくれるか?」

「えっ……?」


 ヴァレリアは驚きに目を瞬いた。


「俺はこのまま敵本陣に突っ込んで、敵総大将レティシア皇女を討つ」  


 ヴァレリアは、本来のゲームシナリオでは、この戦争で命を落とす運命だ。

 その未来を完全に変えるためには、ここで一気に勝負に出る必要があった。


「なんと、坊ちゃま。本気でございますか!?」


 フェリクスが納刀しつつ駆け寄ってきた。


「もちろんだ」


 連戦に次ぐ連戦で、俺も疲れてはいたが、今が最大の好機だ。


 辺境伯軍に背後を突かれた帝国軍は、大混乱に陥っている。慌ててゴーレム兵を戻したところで、軍を立て直すことは難しいだろう。


 今こそ、レティシア皇女を討ち取れる可能性があった。

 それで、ヴァレリアを救うことができる。


「何を言っているの? 私たちは運命共同体でしょう? 私もゼノンと一緒に戦うわ」


 ヴァレリアは腰に手を当てて、俺に詰め寄った。


「……いや、でもな」


 もうすでに相当な無理をヴァレリアには強いてしまっている。

 身体の弱い彼女に、これ以上の負担はかけられない。


 それにレティシア皇女は、リシュアン皇子とは比べ物にならない、強力な護衛部隊を引き連れている。

 ゲーム同様に奴らがいるとすれば、不死身に近い俺はともかくとして、ヴァレリアは危険だと思う。


 ヴァレリアの命を守ることを最優先に考えるなら、彼女をダラム城に残して行くべきだった。


「王国の剣アスフォデル公爵家の娘を侮らないで。私の魔力はまだ残っているわ」


 ヴァレリアはそう言って、離さないとばかりに俺の両手を強く握った。


「それに言ったでしょう。もう決して私は、大切な人を死なせはしないって」

「ヴァレリア……」


 俺のことを大切な人だと言ってくれるのか。


 俺がヴァレリアに死んで欲しくないと思っているのと同様に、彼女もまた俺に死んで欲しくないと、思ってくれていることを悟った。


 い、いや、もしかして、ヴァレリアも俺のことを異性として愛してくれているのか……?

 だとしたら、嬉しすぎる。


 俺はしばし考えた。

 今こそ、運命を変える最大の好機であるのは間違いない。そのためには……

 

「……わかった、一緒に行こう」

「ええっ! 私たちが力を合わせれば、どんな強敵にも必ず勝てるわ」

「ああっ、その通りだ」


 俺は腹を括った。

 もし何かあっても、俺が全力でヴァレリアを守り抜けばいい。

 今の俺ならきっとできる筈だ。


「そうですぞ、ゼノン坊ちゃま。このフェリクスもお供いたします!」

「いや、フェリクスはダラム城を守ってくれ。ここを奪われたら、元の木阿弥だからな」


 ゴーレム兵団が退却したのなら、フェリクスと傭兵団だけでも、防衛はできるだろう。

 さすがにダラム城を空にする訳にはいかない。


 捕虜にした帝国兵、約2000人を乱暴に地下牢に押し込めている状態だしな。他にも、城外に逃げ出した数百の帝国兵が、まだこのあたりをうろうろしている筈だ。


「……ぐっ、ぐぬぅ。なんとも口惜しい限りですが。坊ちゃまのご命令とあれば」

「頼んだぞ!」


 俺はそう告げると、ヴァレリアを左手に抱いて駆け出した。


 俺の脚力は、尋常ではないレベルに達していた。

 景色が流線となって後方へ飛び去る。

 

 退却中のゴーレム兵にあっと言う間に追いつき、追い越した。


「邪魔だッ!」


 追い越しざまの一閃。鋼鉄の巨体が、紙切れのように両断され、火花を散らして崩れ落ちる。

 俺は疾風となって、ゴーレム兵を次々に斬り捨てた。


「黒雷!」


 ヴァレリアも雷魔法を放ち、奴らを片っ端から焼き払った。


「ヴァレリアの魔力量は、本当に無尽蔵に近いんだな!」

「生命力をゼノンが補ってくれるなら、スキル魔法だって、いくらでも使えるわ!」


 ヴァレリアは意気揚々と告げた。

 彼女は疲労のため、息が上がってきていたが、魔法の威力、精度はいささかも落ちていなかった。


「それに言ったでしょ、あなたは私が守るって」

「……これは俺も負けていられないな」


 その強い決意が、ヴァレリアの小さな身体を支えているようだった。

 俺のことをそんなにも想ってくれていると知って、胸が熱くなった。


「二人で必ず勝つぞ、ヴァレリア!」

「ええっ!」


 無数の敵を蹴散らして、俺たちは突き進んだ。


 やがて、敵の本隊が見えてきた。

 雷撃、火炎、凍結などの様々な魔法が乱れ飛び、アチコチで爆発が起きている。

 乱戦状態だ。


 辺境伯軍の兵士が、猛然と敵兵に斬り掛かっている。

 

 魔法使いは接近戦に持ち込まれると、魔法による同士討ちが起きることを恐れて、まともに力が発揮できなくなった。


 さすが、父上はその事を良く理解しているな。辺境伯軍の兵は、みんな被弾を気にせず、勇猛果敢に接近戦を挑んでいた。


「さあ、みんな一斉突撃よ!」


 ヴァレリアがアンデッド兵たち2000体あまりを次々に召喚して、帝国軍に向かって突っ込ませた。

 俺はすぐさま、彼女をヒールで癒やす。


 これで帝国軍は、挟み撃ちをされた形となった。

 この効果はデカい。


 アンデッドに逃げ道を塞がれているというだけで、敵は恐怖し、錯乱状態となった。


「あ、アンデッドだとぉおおッ!?」


 攻撃魔法を辺境伯軍に放とうとしていた魔法使いの部隊が、動きを止めた。彼らの周囲に浮かんでいた魔法陣が霧散する。


 魔法を使うには高度な精神集中が必要となるので、敵を心理的に動揺させれば、魔法を不発にさせることができた。


 ゴーレム兵という恐怖を感じない前衛をレティシア皇女が開発したのは、このためだ。

 ゴーレム兵を盾にして、後方から安全に魔法による射撃を行うという戦法によって、これまで帝国軍は俺たちを圧倒してきた。

 

「聞け! あのアンデッドたちは、ヴァレリアの配下、俺たち辺境伯軍の援軍だ!」


 俺は戦場のど真ん中で、敵味方全てに届くよう声を張り上げた。


「わ、若……!?」

「ゼノン様だ! まさか、城を落としただけでなく、我らの援軍に!?」

「そうだ! ダラム城はフェリクスに任せてある。俺たちで、敵総大将レティシアの首を取るんだ!」

「うっ、うぉおおおおおッ!」


 俺の檄に辺境伯軍の将兵たちから、凄まじい賛同の雄叫びが上がった。


「それだけじゃないわ! ゼノンは帝国の英雄、ボルド将軍を討ち取ったのよ!」


 ヴァレリアが、俺に負けじと大声を出す。


「なっ、なんとぉ……!?」

「素晴らしい、真ですか!?」

「そんなバカな!? 確かにボルド将軍は、ダラム城へ視察に行っておられたが!?」

「あ、有り得ない、デタラメだぁ!」


 ヴァレリアの報告に、味方からは大歓声が、敵からは否定が溢れた。


「デタラメじゃないわ! なら、なぜ帝国軍の危機にボルド将軍はやって来ないの!?」

「た、確かに……!」


 これには半信半疑だった両軍のすべての者たちが、頷かざるを得なかった。

 それは有り得ないことだからだ。


「ボルド将軍が姿を見せないのは、ゼノンが一騎討ちで倒したからよ! みんな、ゼノンを讃えなさい! ゼノン・グレイヴァンが、帝国軍の副将ボルドを討ち取ったわ!」


 ヴァレリアが誇らしげに叫ぶ。


「ゼノン! ゼノン!」

「我らが、新たなる英雄……い、いや軍神だ!」

「ゼノン様、万歳! 万歳!」

「なんということだ!? 若はお父上を超える逸材であられるぞ!」


 辺境伯軍の士気は最高潮となった。

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