第33話。巨大ゴーレムを撃破し、ダラム城の防衛に成功する
俺たちの迎撃により、あっと言う間に、ゴーレム兵団は1000体近くも数を減らした。
「おおっ! これはもしや、私の出番はありませんかな!?」
崩れた城壁の前に陣取ったフェリクスが、快哉を上げる。
彼にはここで、防衛の最後の要になってもらっていた。
ダラム城の空気が恐怖から熱狂へと変わった、その時だった。
ズ、ウンッ……。
地鳴りのような振動が、大地を揺らした。
「あっ……アレは何!?」
ヴァレリアの指差す方向に、全長10メートル程の超大型ゴーレムが、現れていた。
「って、あれは、攻城戦用ゴーレムじゃないか!?」
ゲームだと登場するのはもっと先だったが、もう完成していたのか?
良く見れば塗装がされておらず、動きがややぎこちない。攻城戦用ゴーレムの試作型といった感じだな。
レティシア皇女は、帝国随一の錬金術師で、この遠征中も新兵器の開発に熱中していた。というより、新兵器の開発がやりたいから、戦争をしているような娘だ。
『戦場のインスピレーションが、錬金術の新たな境地を切り拓く。やっぱり、戦争こそ技術発展に必要不可欠よね。戦争、万歳!』
というのがレティシア皇女の名言だった。
やべぇ皇女様だと、前世ではWeb上でよくネタにされていた。
今頃、レティシア皇女は、攻城戦用ゴーレムの実戦データの記録を取るのに夢中になっているだろう。
その超巨大兵器が、味方の残骸を蹴散らしてダラム城に迫る。その猛攻に、他のゴーレム兵も続いた。
まずいな。せっかく奴らの残骸で作った即席のバリケードが、突破されてしまったぞ。
「シュヴァルツ・リッターの雷撃が効かない!?」
ヴァレリアは、愕然としていた。
超巨大ゴーレムに対して、デミリッチたちの雷魔法が足止めにもなっていなかった。
ゴーレム兵は、第二世代からは絶縁装甲が採用されており、電撃が弱点では無くなっていた。この新型には、さっそく、その絶縁装甲が装備されているようだ。
「あんな化け物に攻撃されたら、ペシャンコにされちまうぞ!?」
傭兵たちに動揺が広がった。
無理もない。あの巨体は、まさに恐怖そのものだ。
「ヴァレリア、アレをやるぞ。力を貸してくれるか!?」
「ええっ、もちろんよ!」
ヴァレリアが俺の身体にしがみついた。
狙うは、彼女からの魔力供給を受けての最大出力の【過剰回復】だ。
超巨大ゴーレムが、崩れた城壁に向かって突っ込んでくる。
「来るなら来い、化け物めが! ゼノン坊っちゃまからお任せされたからには、この場は死守して見せる!」
剣を構えたフェリクスが吠えた。
さすがに剣鬼フェリクスでも、あの超巨大ゴーレムには歯が立たないだろう。
俺たちがやるしかない。
俺はヴァレリアを左手に抱いたまま助走をつけて走り、超巨大ゴーレムに向かって大きく跳躍した。
「はぁっ!」
奴は俺たちを叩き落とそうと、巨拳を振り上げる。
迫りくる大質量の死の重圧。
だが、俺の身体にはヴァレリアから流れ込む莫大な魔力が渦巻いていた。
彼女が力を貸してくれるなら、恐れなど無い。
俺たち二人の全力を、奴に叩き込むだけだ。
「【過剰回復】!」
発光する俺の右拳と、超大型ゴーレムの拳が空中で激突した。
何度も強化された俺の右腕が、呆気なく砕け散るが……
ズシャアアアアッ!
俺の拳が触れた先端から、超大型ゴーレムが急速に崩壊した。
それは風化。数百、数千年分の経年劣化が一瞬に起き、鋼鉄は朽ち、砂へと還る。
巨人の腕が崩れ、胴体が爆散し、頭部が砂塵となって崩壊した。
圧倒的な質量が、ただの砂の山となって城壁前に降り注ぐ。
「す、すげぇ……一撃で!?」
「おっ、お見事ぉおお! さすがは、ゼノン坊ちゃまです!」
フェリクスの歓喜の声が響く。
ダラム城から、爆発的な歓声が湧き上がった。
俺とヴァレリアは、敵の巨腕に木の葉のように吹き飛ばされたが、空中で体勢を整えて着地する。
強化された俺の両足は、着地の衝撃に耐えた。
「まだだ、フェリクス! 敵を一体たりとも城に入れるな!」
「はっ、心得ております!」
フェリクスの前に数体のゴーレム兵が押し寄せるが、彼は瞬く間に斬り伏せる。
「ゼノン、大丈夫!?」
「もちろんだ!」
すぐさまヒールで、爆散した右手を再生する。
戦いの興奮で、アドレナリンが出まくっていたおかげか、痛みは感じなかった。
しかも、再生した右手には、以前よりさらに強い力が宿っているのがわかる。
チラリとヴァレリアの様子をうかがうと、彼女にも怪我は無いようだった。
「はぁあああッ!」
俺は剣を抜いて、突進してきたゴーレム兵を右手一本で叩き斬る。敵は、呆気なく両断された。
【超回復】による肉体強化のおかげで、我ながらドンドン化け物じみてくるな。
「来て、ガウェイン!」
ヴァレリアも【死霊騎士】たちを召喚して、崩れた城壁前に鉄壁の防衛陣を敷いた。
「さあ、来るなら来なさい! 私とシュヴァルツ・リッターが相手よ!」
ガウェインたちが、迫りくるゴーレム兵を押し返し、斬り伏せる。
彼らが持つのは、ゴーレム兵の装甲と同じ、ダマスカス鋼の剣だ。ダラム城の武器庫から拝借してきた。
だが、物量は敵の方が圧倒的に上だ。
これまで撃破したゴーレム兵は、多く見積もっても1500体あまり。残りはまだ6500体近くも残っているし、後続には6万の敵兵が控えている。
連戦が続くデミリッチたちの魔力も無限ではなく、いずれは力尽きるだろう。
城に立て籠もっている傭兵たちでは、ゴーレム兵には太刀打ちできない。
このままでは、数の暴力の前に俺たちは押し潰される。
頼みの綱となるのは……やはり。
その時、はるか遠くから鬨の声が聞こえてきた。
俺たちに襲いかかろうとしたゴーレム兵たちが、動きをピタリと止めた。
やがて、奴らは次々に後退していく。
「おおっ、こ、これは……!」
フェリクスが、目を輝かせた。
「大将! 剣聖バルド殿の辺境伯軍が、手薄になった敵軍の背後に突っ込んでます!」
「す、すげぇ、猛攻だ!」
「やったぁ! 大逆転だ!」
城壁上の傭兵たちが、大歓声を上げた。
父上が、俺たちを救うべく、敵の後背を突いてくれたのだ。
6万の敵軍とはいえ、その主力は脆弱な魔法使い部隊。ゴーレム兵という前衛を欠いた状態で、剣聖に率いられた1万5000の剣士軍団に襲いかかられては、たまったものではないだろう。
もともと、このために俺は父上の元に使者を送っていた。
レティシア皇女は自分を守るべく、ゴーレム兵を退却させたようだ。
城を取っても、自分の首を取られては、元も子もないからな。
「よし、この戦、俺たちの勝ちだ!」
「やったわ、ゼノン! あなたって、本当にすごいわね!」
ヴァレリアが、俺にギュッと抱き着いてくる。
フェリクスは、滂沱と感激の涙を流していた。
「まさに、ゼノン坊っちゃまは、我らの誇り、我らが軍神でございます! みな、勝ち鬨を上げよ! ダラム城を守りきったぞ!」
「うぉおおおおおッ!」
6万の大軍を跳ね返したダラム城から、地を揺るがすほどの勝ち鬨が、鳴り響いた。
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