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第29話。名将ボルド将軍に、剣聖を超える逸材と讃えられる

「光栄ではありますが、乗る必要などありませんぞ、ゼノン坊ちゃま! この戦、我らの勝ちです!」


 フェリクスが大声で制止してくる。

 その通り、目的はあくまでダラム城を陥落させ、俺とヴァレリアの破滅の運命を覆すことだからな。


「左様か。だが、是が非でも、俺と戦ってもらうぞ。ふんッ!」


 その時、ボルド将軍が振るった剣より発せられた衝撃波によって、5体近くのデスナイトが吹っ飛んだ。


 ボルド将軍は風魔法の使い手であり、剣に風魔法を【付与】(エンチャント)させることで、その剣速を倍化させたのだ。この衝撃波は、剣が音速を超えることで、発生したものだった。


「……貴様らの技、すでに見切った!」


 ガウェインが果敢にボルド将軍に挑むが、逆に剣を持つ右腕を斬り落とされる。


「ガウェイン!?」


 これには、ヴァレリアも驚いた。

 ボルド将軍の動きは、デミリッチたちのバフ魔法で強化されたガウェインのスピードを上回っていた。


「堪能させてもらったぞ、シュヴァルツ・リッター!」


 ボルド将軍は、さらに踏み込んでガウェインを鎧ごと叩き斬った。ガウェインは、うめき声を上げて倒れる。


 そこに3体のデスナイトが殺到して、ボルド将軍を討ち取ろうとするが、逆に一瞬で斬り倒された。


「この城は落とさせん。今や帝国軍の総大将にまでなられたレティシア皇女殿下の御為にな!」


 ボルド将軍から、空気をビリビリと震わせる覇気が発せられる。


 俺は奥歯を噛み締めた。

 ボルト将軍はゲームでも強敵だったが、今、ここにいる男は、ゲームで知る以上の力を発揮していた。


 そうだ。この男はゲームキャラクターではなく、生きた人間なんだ。


 なら、古くから仕えるレティシア皇女に報いるため、実力(ステータス)以上の力を発揮してもおかしくない。

 ボルト将軍には子がおらず、彼はレティシア皇女を自分の娘のように想っていた。


「戻りなさい、あなたたち!」

  

 ヴァレリアがガウェインたちを治療するべく、冥府に強制送還した。彼らは、その場から煙のごとく消え去る。


「邪魔者は消えた。さあゼノンよ、この俺、ボルドとの一騎討ちを受けてもらうぞ!」


 ボルド将軍が、剣の切っ先を俺に向けて挑発してきた。

 その勇壮なる姿に、帝国兵たちが奮い立つ。


「さすがは、ボルド将軍だ!」

「将軍がおられれば、剣鬼フェリクスとて、恐れるに足りないぞ!」


 まさか、たった一人で、またしても戦場の空気を一変させてしまうとは。さすがは英雄と言われるだけある。


 このままグズグズしていたら敵の本隊がやって来る。一刻も早く決着を付けねばならない。


「どうした!? 貴様の姉、アルフィンはこの俺と、正々堂々と戦ったぞ!」

「なんだと……?」


 ボルド将軍の怒号に、俺は一瞬、言葉を失った。


「……まさか姉上を討ち取ったのは、ボルド将軍だったのか?」

「左様。貴様の姉は、若輩ながら見事な剣士だった。故に、この俺が戦場にて一騎討ちを挑み、打ち倒したのだ。【剣豪】にふさわしき見事な最期だった!」


 今、目の前に姉の仇がいるというのは衝撃だった。

 思わず怒りが湧き上がるが……

 ボルド将軍は、姉に敬意を払ってくれていた。


 姉の死が、最後の戦いが、武人として尊厳に満ちたものだったと知って、俺は少しだけ救われた。

 それは戦場では、得がたいことだった。

 

「お、おのれ。よくもアルフィンお嬢様を……!」


 姉の師匠であったフェリクスが、怒りを漲らせてボルド将軍の前に出ようとした。


「このフェリクスが、お嬢様の仇を討つ!」

「いや、待て」


 俺はフェリクスを呼び止めた。


「フェリクス、ヴァレリアの護衛を頼むぞ!」

「ゼノン坊ちゃま!?」


 俺はフェリクスの側に寄って、片手に抱いていたヴァレリアの身柄を預けた。


「ゼノン、私と離れて、どうするつもりなの!?」


 ヴァレリアは俺と離れるのをためらう素振りを見せた。


「蹴りをつける。ボルド将軍、その勝負、受けて立つ!」


 姉の仇をこの手で討ちたいという気持ちもさることながら、ボルド将軍ほどの男に、ここまで熱い指名を受けては、剣士としての俺の心に沸き立つものがあった。


 やはり俺にも、戦闘好きのグレイヴァン辺境伯家の血が流れているらしい。それになにより……


「父上と武将たちに俺が総大将となることを認めさせるには、将としてだけでなく、武人としての大手柄も必要だ! そうだろ、フェリクス!?」

「坊っちゃま……! ま、まさか本気で、剣聖のお館様を超えようと!?」


 フェリクスが、感極まった声を出した。

 ボルド将軍と父上は、これまで戦場で何度も剣を交わし、決着がつかなかったライバル同士だ。


 そのボルド将軍を一騎討ちで倒せば、俺が父上以上の武人であるとの証明となる。


「それが叶えば、辺境伯家において、坊っちゃまを最強の武人と認めぬ者は、誰もおりませぬ! 承知いたしました! 坊っちゃまはガウェイン殿にも勝った男。フェリクスは坊っちゃまの勝利を信じます!」


 フェリクスは、頭を下げて退いた。


「ゼノンよ、感謝する! 皆の者、手を出すな。道を開け!」


 ボルド将軍の命令によって、敵兵が道を開けた。

 敵味方の注目が一身に浴びせられる中、俺はボルド将軍の前まで歩み寄った。


「はっ、将軍は剣も魔法も極めておられるのだ! 魔法系スキルを得て数日の小僧がかなうものか!」

「いかに剣聖の息子といえど、【剛魔剣】ボルド将軍の前には型無しよ!」

「そうだ! ボルド将軍は、剣聖も敵わなかった帝国最強の武人だぞ! 調子に乗るな小僧!」


 帝国兵たちが、俺に嘲笑を浴びせた。

 劣勢に追い込まれながらも、ボルド将軍さえいれば勝てると、彼に絶大な信頼を寄せているようだった。


「ゼノン・グレイヴァン。貴様は強い……いずれ剣聖である父親よりも、はるかに帝国にとって脅威となるだろう。故に今ここで全力で潰す!」


 ボルド将軍の熊のような巨体が、さらに一回り大きくなった。鎧の継ぎ目がミシミシと悲鳴を上げ、筋肉がはち切れんばかりに隆起する。


 【剛魔剣】とは、剣の攻撃力と筋力を超強化する戦闘系スキルだ。そのリミッターを解除して、力を全開にしたのだ。


 原作ゲームでも、ボルド将軍は追い詰められると、これをやってきた。今から5分間、彼は肉体に大ダメージを負う代わりに、超人的な攻撃力を発揮する。


 恐るべきスキル能力だが、【剛魔剣】の対処法はわかっていた。


 狙うは、【超回復】(オーバーヒール)の回復力を活かした長期戦だ。5分間、猛攻に耐えれば、俺の勝ちだ。


「こ、これは、ゼノン坊ちゃま……! お気をつけください!」

「おそらく、剣の衝撃波に触れただけで、致命傷を受けるわ!」


 フェリクスとヴァレリアが、心配そうに警告してきた。


「……戦場で、この力を解放して戦う相手は、貴様の父と姉に次いで3人目だ」


 ボルド将軍の筋肉がさらに盛り上がり、上半身の鎧を内側から破壊した。

 俺は静かに腰を落とし、剣を正眼に構えた。


 父上たちでも倒しきれなかった強敵……

 純粋にこの男に勝ちたいと思った。


「勝負だ、ボルド将軍!」

「ゼノン、お願い勝って……!」

 

 俺の勝利と無事を願うヴァレリアの声援が聞こえる。

 それが、俺に力をくれた。


 フェリクスから受け継いだ剣技と、ヴァレリアとの特訓で培った魔法の力、そのすべてを持って挑む。


「参る!」


 ボルド将軍が間合いの外から、裂帛の気合いと共に剣を撃ち降ろした。

 風魔法を【付与】(エンチャント)させた太刀筋を見ることさえできない神速の一撃。


 その剣圧によって飛来した衝撃波を、俺は紙一重で避けた。


 背後のアンデッド軍団が、まとめて吹き飛ばされる。


「将軍の奥義を躱しただと!?」


 帝国兵から驚きの声が上がった。

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