表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/70

第27話。ダラム城炎上。ゼノンの作戦が決まる

「そ、そんな、バカな……!?」


 目の前で起きたことを、帝国兵たちはすぐに受け入れられないようだった。


「今すぐ武器を捨てて、降伏しろ! でなければ王国の誇る精鋭騎士団シュヴァルツ・リッターが、お前らを殺し尽くすぞ!」

  

 俺が叫ぶと同時に、ヴァレリアのシュヴァルツ・リッターが、敵の親衛隊に襲いかかった。


 偵察によると、この城には5000人近くの兵が駐留していたが、ゴーレム兵という強力な兵器に防衛を頼り切っていたため、親衛隊以外の質は低かった。

 親衛隊を倒せば、脅威となる敵はいない。


「人間がボロ雑巾みたいに……!?」


 デスナイトたちが剣を振るうたびに、鎧を着込んだ親衛隊員が吹っ飛ぶ。

 残りの親衛隊は約15名。シュヴァルツ・リッターは80名。局所的な戦力はこちらの方が上だ。一気に畳み掛ければ、押し切れる。


 他の兵が介入して来れないように、アンデッド魔術師デミリッチたちが周囲に火炎魔法を放ち、帝国兵を焼き払った。


「あ、あづいッ、身体に火がぁあああッ!?」


 身体に炎が引火した兵士たちが、めちゃくちゃに暴れて転げ回る。

 火炎魔法の標的とするのは帝国兵ばかりではない。混乱に拍車をかけるため、庭に山と積まれた兵糧にも火をかけた。


「いかん! しょ、消火だ! 急いで火を消せ!」

「駄目です! 火の勢いが強過ぎて……!」


 さらには、厩舎にも火の手が回り、軍馬がいななきを上げる。


「貴様ぁッ……! 皇子殿下の仇だ!」


 親衛隊が、怒りを漲らせて俺に襲いかかってきた。


 彼らは、自らにバフ魔法をかけて筋力や敏捷性を大幅にアップさせ、神速の斬撃を繰り出してきた。


 帝国親衛隊が誇るバフ魔法戦術だ。


 おそらく、『戦闘系スキル所持者でない俺は、身体能力に劣っており、魔法で超強化した身体能力で圧倒すれば勝てる』と考えたのだろう。

 

 それは全くの間違いだ。

 さっき殴られて理解できなかったのか?


 俺は親衛隊を、彼らの主から奪った剣で、次々に返り討ちにする。


「がはッ!?」

「バカな、こ、この小僧……我らの力を上回っているだと!?」

「剣の腕も、凄まじいぞ!」


 皇子を守れなかった親衛隊は、責任を取らされて処刑される運命だ。そんな彼らは冷静さを欠いており、連携を取れていなかった。


 なにより、何度も【超回復】(オーバーヒール)による身体能力アップを繰り返したおかげで、俺は急激に強くなっていた。故に、まったく負ける気がしない。


「当然よ、ゼノンは剣聖の息子。ガウェインにすら勝った男よ! ガウェイン、蹴散らしなさい!」


 ヴァレリアの命令に、ガウェインたちデスナイトが疾風となって、親衛隊を次々に叩き斬る。


「親衛隊が!? も、もう駄目だぁ!?」


 帝国兵たちが、浮足立った。


「うろたえるなァアアッ!!」


 だが、帝国兵が完全なパニックに陥る前に、将官と思わしき男が大声を発した。


「敵を見ろ! あれほど数のアンデッドを戦わせれば術者の命が保たない! すぐに動きを止める筈だ!」


 さすがは魔法研究の盛んなバルザーク帝国だ。将官級の者は【死霊使い】(ネクロマンサー)の弱点を知っているらしい。

 それで帝国兵たちの顔に希望が灯る。


「おおっ! 誠ですか、ボルド将軍!」


 な、何? ボルド将軍だって……?


 俺は仰天して、その男に注目した。

 30代後半くらいの厳つい大男だった。

 やはり、間違い無い。


 ここにいるのはゲームに登場していた強敵、ボルド将軍だ。帝国でも五本の指に入ると謳われる名将にして、最強格の魔法剣士だった。


 彼は敵総大将であるレティシア皇女の懐刀。彼女に古くから守役として仕えている武人であり、本来はゲーム終盤で戦うボスキャラだ。


 レティシア皇女の側にいるものとばかり思っていたが、ボルド将軍も重要拠点であるこの城に来ていたのか……

 不測の事態が起きることは織り込み済みだが、コイツは厄介だな。


「通信魔法で本隊に危機を知らせた! 間もなくレティシア皇女殿下の本隊が、ここにやってくるぞ!」


 ボルド将軍が声を張り上げる。

 帝国軍の本隊は、辺境伯領の深くに侵入し、父上の軍と睨み合っていた。


 しかし、補給拠点であるダラム城が陥落の危機という急報が入れば、慌てて取って返してくるだろう。


 それまでに決着をつけなければ、俺たちの負けだ。


「聞け、勇壮なる兵士たちよ! 我らこそ帝国軍の命綱! 帝国の勝利と栄光は、我らの双肩にかかっておるのだ! 全軍奮起せよ!」

「うっ、うぉおおおおッ! ボルド将軍!」

「て、帝国、バンザイ!」


 ボルド将軍の檄によって、瓦解寸前だった帝国兵たちは、秩序を取り戻した。

 さすがだな。


 なら、こちらも切り札を切るしかない。


「ヴァレリア、やれるか!?」

「もちろん。あなたが側にいてくれる限り、私は大丈夫よ!」


 ヴァレリアは力強く頷いた。

 俺は最後の親衛隊を斬り捨てながら、叫ぶ。


「ヴァレリアは無制限に【死霊使い】(ネクロマンサー)のスキル魔法が使える! なぜなら、俺が【癒しの奇跡】で、生命力を回復させるからだ!」

「……【癒しの奇跡】だと!?」


 ボルド将軍が息を呑んだ。


「そうだ! 聖女の奇跡の力だ! どんな大軍であろうとも、俺とヴァレリアを殺すことはできない! 俺たちには神の加護が付いている!」

「まさか……!」


 世迷い言と一笑に付することは、ボルド将軍にはできなかった。


 先程、ゴーレム兵の太矢に貫かれた俺の怪我が、一瞬で癒えるところを目の当たりにしたからだ。

 それは他の兵士たちも同じであり、狙い通り敵軍に動揺が走った。


「その通り! 私とゼノンが揃っている限り、アルビオン王国に敗北は無いわ!」


 ヴァレリアが両手を掲げると、地面に巨大な魔法陣が展開される。


 魔法陣から這い出してきたのは、アンデッド化させた辺境伯軍の戦死者たちだ。その数、ゆうに二千体以上。


「こ、こいつらは……!?」

「辺境伯軍が、化けて出たぁッ!」


 帝国兵たちは恐怖し、竦み上がった。

 アンデッド軍団は恨みを晴らすべく、不気味な雄叫びを上げて、突っ込んで行く。


「うろたえるな! 射手、魔法使いは【死霊使い】(ネクロマンサー)を狙え! アンデッドどもはそれで動きを止める!」


 ボルド将軍の怒号が飛んだ。

 

「……ッ!」

「ヴァレリア!」


 ヴァレリアが苦しそうに胸を押さえてうずくまった。俺は彼女に肩を貸しながら、ヒールで回復させる。


 ヴァレリアは、生まれつき心臓が弱いと聞いた。それが多くの死霊たちに生命力を喰われては、たまったものではないだろう。

 しかし、彼女の瞳には、運命に屈するものかという火のような闘志が宿っている。


「ありがとう、ゼノン。絶対に勝ちましょう……!」

「おう!」


 大量の矢と魔法が飛んでくるが、俺はヴァレリアを片手で抱えて、躱した。


「なんだ、奴の動きは!?」

「バフ魔法も使っていないのに、目で追えぬほどのスピードだと!?」


 ここが正念場だ。

 俺は包囲攻撃を受けないように、縦横無尽に動き回りながら剣を振るう。


「これが剣聖バルドの息子……!」

「なにが、外れスキル持ちだ! 話とまったく違うじゃないかぁああッ!?」


 俺の渾身の一撃に物見櫓が倒れて、多くの帝国兵たちが下敷きになった。

 尋常ではない俺の力に、敵にさらなる動揺が広がる。


「こ、この力……まるで人間とは思えんぞ!」

「その上、【癒しの奇跡】まで使えるというのか!?」

お読みいただき、ありがとうございました!

少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』登録と、下にあるポイント評価欄【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読み頂きありがとうございます!!
少しでも面白いと思って下さった方は

ぜひ「ブックマークに追加」をしていただけると嬉しいです!!


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ