第16話。【超回復】でSランクモンスター【魂喰い】を倒す
ヴァレリアは勘違いして、えらく感心していた。
ゲーム知識だとはさすがに言えないので、そういうことにしておこう。
「貴様らは、絶対に生かしてはおけぬ! 特に小僧、貴様はなッ!」
ソールイーターは大鎌をヴァレリアの頭上に振り降ろした。
俺はヴァレリアを抱えて、飛びのく。
その際、床に散らばった瓦礫に足を取られて、回避が遅れた。両足を斬られて血が飛び散る。
「その小娘が死ねば、【癒しの奇跡】は使えぬ。観念するのだな!」
くそっ。MPが少ない俺の弱点を突いて、ヴァレリアに狙いを絞ってきたか。
さらに室内には壊れた調度品が散乱して、足場が悪くなっていた。これでは、素早い動きができない。
「最初からコレを狙っていたのか……!」
さすがはSランクモンスター、知恵も回るようだ。
俺はヴァレリアを抱えたまま、扉を蹴破って廊下に飛び出した。
「【癒しの奇跡】を使わずとも、傷が再生しただと!?」
ソールイーターは、俺の足を斬って油断していたため、反応が遅れた。
「……思えば昨日の戦いでもそうだった! 貴様のスキルは、【癒しの奇跡】が使えるようになるだけではないのか!?」
奴は俺の【超回復】について、計りかねているようだった。
昨日の俺とガウェインとの決闘を見ていた筈だが、おそらく何かの間違いだとでも思っていたのだろう。
「ゼノン、あと少しだけ耐えてちょうだい!」
ヴァレリアが目を閉じて、魔法を使うべく詠唱を開始した。
「わかった。任せろ!」
俺は彼女を抱えて爆走する。俺の両足は再生、強化されて脚力が倍増していた。
このまま時間を稼ぎ、ヴァレリアの魔法が完成した瞬間が、反撃のチャンスだ。
「逃がすか……!」
背後から、猛然と追い縋ってくるソールイーターの攻撃を勘で避ける。
大鎌の連撃で、床と壁にいくつもの亀裂が走ったが、加速してなんとか引き離すことに成功する。
「バカな、この我が追い付けぬだと!? 小僧、貴様は一体!?」
「ゼノン坊ちゃま、何事ですか!?」
騒ぎを聞きつけたフェリクスが、守備兵を引き連れて現れた。
俺は慌てて、彼らを制止する。
「来るなフェリクス!」
「殺し尽くす【冥火連弾】!」
ソールイーターが、俺たちをまとめて倒そうと、必殺の魔法を放った。
無数の黒い炎弾が、迫ってくる。
ヤバい、フェリクスたちまでは守り切れない。
「来てガウェイン! みんな!」
その時、ヴァレリアのかざした手の先に、赤い光の軌跡を描く魔法陣が出現した。
その魔法陣より、瘴気を撒き散らして【死霊騎士】ガウェインが飛び出してくる。
「なんだと!?」
背後で無数の火花が散った。
ガウェインが超高速で振るった剣が、【冥火連弾】をすべて叩き落としたのだ。
振り返るとソールイーターが、屈辱に震えていた。
「ガウェインは闇属性魔法に完全耐性があるの。その魔法は無意味よ」
見れば、俺が斬り落としたガウェインの首が繋がっていた。どうやら復活を遂げたようだ。
「さあ、みんな。ガウェインに力を!」
ヴァレリアの生み出した魔法陣から、杖を持ったアンデッドの魔法使いデミリッチたちも出現する。
彼らは、対象の能力を上げるバフ魔法を、ガウェインに次々にかけた。【筋力増強】【速度強化】【物理防御力アップ】【状態異常耐性付与】。
きらびやかな魔法のエフェクトが乱舞し、ガウェインの戦闘能力が、ガンガン上昇していく。
「この力……我と同じSランクに届きうるか!?」
「ご明答」
ヴァレリアが、胸を張って宣言する。
「前にお前と戦った時は、マスターの私が冷静じゃなかったわ。これが本来のシュヴァルツ・リッターの戦い方よ。今のガウェインは、世界屈指の剣士だわ」
「すげぇ……!」
俺は思わず感嘆の息を漏らした。
シュヴァルツ・リッターが全滅したと聞いた時は、正直、目の前が真っ暗になったが。
彼らの力は健在だった。むしろアンデッド化したことで、総合的な戦闘能力はアップしたのかも知れない。
「我らは、誇り高き王国の剣アスフォデル公爵家に連なる者。王国に仇なす敵は、何者であろうと滅してみせるわ!」
ガウェインが外套を脱ぐと、その下からアスフォデル公爵家の擁する精鋭騎士団シュヴァルツ・リッターに与えられる黒い鎧が現れた。
「……罪を着せられ、こんな辺境に追いやれても、まだ王国のために戦うと抜かすのか」
「ええっ。どこにあろうとも、黒薔薇は気高く咲くものだわ」
ヴァレリアは優雅に微笑む。
「なにより、今の私には力を貸してくれる人が。私を信じてくれる誰よりも頼もしい婚約者がいる」
「おうっ!」
ヴァレリアの言葉に応えるように、俺は彼女にヒールを浴びせた。
【死霊使い】のスキル魔法の代償として失われたヴァレリアの生命力が、瞬時に回復する。
ヴァレリアが俺に魔力を与え、俺がヒールで回復するという無敵の連携が完成していた。
「ゼノンのおかげで【死霊使い】の弱点が消えた今、お前の主より、私の方が有利。負けることなど有り得ないわ!」
ヴァレリアが指を鳴らすと、ガウェインは疾風のごとき速さで、ソールイーターに斬撃を浴びせた。
「はっ、吠えよって、忘れたか!」
しかし、ガウェインの剣は幽体であるソールイーターの身体をすり抜けてしまう。
デミリッチたちもアンデッドの弱点とされる炎魔法をソールイーターに撃ち込むが、大したダメージを与えられなかった。
「我は不死身の身体を持つ者。貴様らがいくら束になっても滅ぼすことなどできぬわ!」
ソールイーターは、大鎌をガウェインに叩き込んだ。
「ぬっ!?」
だが、ガウェインの鎧を貫いて身体に食い込んだ大鎌は、ガウェインの腕に押さえ込まれた。
そうか。あの大鎌は幽体ではなく、ソールイーターが召喚した実体の武器だった。
「今よゼノン!」
ヴァレリアが好機と叫ぶ。
「うぉおおおおッ!」
俺は彼女と共に、ソールイーターに突っ込んだ。デミリッチたちが、【速度強化】のバブを俺にかけて援護してくれる。
ソールイーターは大鎌から手を放すが、もう遅い。
「消え去れぇえええッ!」
俺はソールイーターに触れて、ヒールを3連発で叩き込んだ。
俺とヴァレリア、二人の力の結晶だ。
「があああああッ!?」
奴は地獄の底から響くような断末魔の叫びを上げる。
「こ、こんなことが! 剣聖から見捨てられた落ちこぼれ風情が、この我を倒すなどぉおお……ッ!」
聖女の手下、ソールイーターは聖なる光によって焼かれ、崩れ去っていった。
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