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第14話。【超回復】でSランクモンスターの必殺魔法を撃ち破る

 一瞬、こんな怪物に勝てるのか? と思ったが、俺ならこいつを倒せる。

 いや、絶対に倒さねばならない。なぜなら……


「ヴァレリアが瀕死だったのは、お前の仕業か!?」

「きゃあ!?」


 ヴァレリアを抱いて、俺はベッドから飛び降りる。

 俺たちのいた場所に、ソールイーターの大鎌が振り降ろされて、ベッドが真っ二つになった。


 ようやく合点がいった。

 ソールイーターが、ヴァレリアに悟られないように彼女に取り憑き、密かに生命力を奪っていたのだ。


 おそらく、聖女アリシアの指示で、ヴァレリアを苦しめ、いつでも殺せるようにしていたんだろう。


 俺は怒りと共に、剣を抜いて構えた。


「我をこうまで傷つけるとは……今の魔法は何だ!? いや何でも構わん!」


 ソールイーターは、驚愕にわななきながら大鎌を振りかぶる。


「その小娘、ともども死ねい!」

「ゼノン!?」


 ヴァレリアを右手に抱いて、俺はソールイーターの攻撃を躱した。

 奴の大鎌は、本棚を壁ごと斜めに斬り裂いた。


 すさまじい威力の攻撃。だけど、不思議とあまり恐怖を感じなかった。


 ……それよりも、身体中から、絶大な力が湧き上がって来るのを感じるぞ。

 そうか、だから俺はこんなにも冷静に対処できるのか?


 途切れることなく大鎌の連続攻撃が浴びせられ、その度に、部屋の壁や調度品がズタズタにされる。

 だが、俺はそのことごとくを躱した。


 コイツの攻撃は、どれも大振りで見切りやすかった。

 剣鬼フェリクスに稽古をつけてもらっていた俺にとって、見切れない攻撃じゃない。


 だけど、ヴァレリアを右手に抱えて、ここまでの動きは、以前の俺には絶対に不可能だった筈だ。


「そうか。そういうことか……!」


 俺の【超回復】(オーバーヒール)は、傷付いた身体を回復し、より強靭な肉体に作り替えるスキルだ。


 昨日、ガウェインに斬られた右肩の力が明らかに上がっている。だから、ヴァレリアを抱えていても、負担に感じないのか。

 

 吐血を繰り返した心肺も、より強力になり、体力と運動能力が向上している。


 おそらく、昨日までは、魔力欠乏症で絶不調だったから、俺はここまでの力は出せなかったんだ。


「ヴァレリアのおかげだ!」


 ヴァレリアが一晩中、俺に魔力を注いでくれたおかげで不調が治った。そのおかけで、肉体のパワーが遺憾無く発揮されているんだ。


「なぜ、当たらぬ!?」


 ソールイーターが、色めき立つ。


「す、すごいわ。さすがは剣聖候補!」


 ヴァレリアが歓声を上げた。

 彼女は振り落とされまいと、ギュッとしがみついてくる。


 今更ながらに、その身体の柔らかさにドギマギしてしまうが、煩悩を振り払って集中する。


「貴様は戦闘系スキルを得てはおらぬ筈! なのに、その動きは……!」 


 ソールイーターは疑問に思っているようだが、わざわざ【超回復】(オーバーヒール)の真の力を教えてやるほど、俺は親切じゃない。


 こいつを操っている【死霊使い】(ネクロマンサー)や聖女アリシアに情報が漏れないよう、俺の能力については秘匿するべきだ。


 幸いヴァレリアには、【超回復】(オーバーヒール)が、実は怪我をした身体を強化することまでは教えていなかった。


「ちょこまかと、【冥火連弾】(ヘルファイア)!」


 ソールイーターの周囲に、黒い火球がいくつも浮かんだ。それは形あるモノを蝕む呪いの炎だ。

 黒い火球にわずかに触れた柱が、その部分から粉々になって崩れ落ちた。

 

 まずい……!


「これは避けられんだろう!?」


 【冥火連弾】(ヘルファイア)は追尾性能を持つ魔法だ。回避は意味を成さない。


 ソールイーターが勝利を確信して嘲笑った。

 奴が片手を振るうと、野球ボール程の大きさの黒火球が殺到してくる。


「くっ、魔法障壁を……!」


 ヴァレリアがとっさに防御魔法を展開した。俺たちの周囲を、発光する半透明の壁が覆う。

 だけど、おそらくSランクモンスターの攻撃魔法を防御しきるのは不可能だ。なら……


「ヴァレリア、また魔力を貸してもらうぞ!」

「えっ!?」


 俺はヴァレリアを抱きしめて覆い隠し、彼女を守る盾となった。


「……わかったわ!」


 ヴァレリアはとっさに俺の意図を理解して、繋いだ手から魔力を一気に注いでくれた。


 途端に、ヴァレリアの展開した魔法障壁を突き破って、呪いの炎がいくつも俺に突き刺さる。


「ヒール! ヒール! ヒール!」


 血肉が蒸発し、身体中に大穴が空く。

 くそ、やばい、視界が赤黒く染まって、訳がわからないほど痛い。


 俺の身体を蝕み、崩壊させようとする【冥火連弾】(ヘルファイア)と、回復させようとするヒールがせめぎ合った。

 ヴァレリアからの魔力供給によって、俺はヒールを連続して発動することができた。


 意識が途切れかけるが、ヒールの力が勝り、俺の怪我が完全に癒える。


「や、やはり、それは【癒しの奇跡】! 与太話だと思っていたが、お前ごときが!?」


 ソールイーターが愕然とする。


「しかも、聖女様の……あのお方の力よりも強力だと!?」

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