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第11話。ヴァレリアと同じベッドで寝たら、彼女から手を握ってきたんだが?

「こ、これが、あなたのスキル? まさか【癒しの奇跡】をその身に宿しているとでもいうの!?」


 ヴァレリアの声が、やけに遠くに聞こえる。

 ガウェインに勝った俺だが、捨て身の代償は大きかった。血を流し過ぎて、意識がもうろうとしていた。


「さあ、約束通り、明日まで休んでもらうぞヴァレリア」


 俺は力を振り絞って、声を吐き出す。


「そしたら、この力でお前を癒してやる!」

「……く、詳しい話を聞きたいのだけど、良いかしら?」


 ヴァレリアが俺に歩み寄って、戸惑いと期待に満ちた目で見つめてきた。


「あなたの【超回復】(オーバーヒール)は、他人を癒やすこともできるの?」

「もちろん、できる。それだけじゃなくて……」

「だ、だとしたらあなたは、聖女に代わる救世主になれるわ!」


 俺が詳しく説明をしようとすると、ヴァレリアは前のめりになって叫んだ。えらく興奮した様子だった。


「……救世主?」


 俺は驚愕して、続く言葉を飲み込んでしまう。


「そうよ。私利私欲のために他人を殺めるアリシアのような人間が救世主と崇められ、王妃となって権勢を振るうようになったら暗黒の時代が訪れるわ! それを阻止するためにも、あなたの力が必要なのよ!」

「はぁっ?」


 モブ貴族の俺が、聖女アリシアに代わる救世主になるなんて、あまりに途方もない話で、面食らってしまった。


 しかし、ヴァレリアは本気のようで、頬をものすごく赤く上気させていた。


 俺にとっては、そんなことより目の前に迫った破滅を何とかすることが重要だ。

 ヴァレリアが俺の力を認めてくれたのは、大きな前進だった。


 とりあえず、救世主うんぬんは置いといて、話を進めることにする。


「……じゃあ、俺と一緒に帝国軍と戦ってくれるか?」

「ええっ、もちろんよ」


 ヴァレリアは深く頷いた。


「私たちは運命共同体(夫婦)だものね。あ、あなたの強い気持ちは、よく伝わったわ。うれしかった」


 俺は歓喜して口を開こうとして……

 ヴァレリアにもたれかかるように倒れた。

 あ、あれ。身体に力が入らないぞ。


「きゃっ!? ……だ、大丈夫!?」


 意外なことに、ヴァレリアは尻餅を付きながらも、俺を支えてくれた。さっき、抱き締めた時は「無礼者!」と激怒されたのに。


「ゼノン坊ちゃま、もうお休みください! ヴァレリア様より、坊ちゃまの方がはるかに危険です!」


 フェリクスが俺の身体を抱き起こして、怒鳴った。


「どういうこと? 彼の傷はすでに癒えて……」

「ゼノン坊ちゃまは、二日前から魔法の修行で吐血され続けておられるのです。そのために、もう何度もお倒れになって……!」

「それって、まさか【魔力欠乏症】!? そんな状態でガウェインに戦いを挑んだというの?」


 ヴァレリアまでもが、俺に怖い顔を向けてきた。


「……仕方ないだろ。そうしなければ、俺は魔力が少なすぎて回復魔法を──【癒しの奇跡】使えるようにならなかったんだから」

「呆れた。もしかして内傷を今みたいにスキル能力で癒せるから、無茶をしたというの?」


 俺は首を縦に振った。


「俺は帝国軍に勝つと誓った。そのために、必要なことは全部やるつもりだ」

「ぼ、坊ちゃま……! 領民を守るために、くぅ、誠にご立派でございます!」


 フェリクスが、こらえきれないといった様子で、ハンカチで目元を拭った。

 いや、俺が生き延びるためにやっていることなんだが……


「あ、あなたという人は……!」


 ヴァレリアはなにやら、心を打たれた様子だった。


「その高潔さには敬意を払うけど……無茶苦茶だわ!」

「無茶苦茶……?」

「そうよ。魔力欠乏症はね、心身に重篤なダメージを与えるの。毎年、優秀な魔法使いがこれで命を落としているのよ。助かっても後遺症で苦むこともあるんだから!」


 これには、やや驚いた。

 魔力欠乏症の後遺症というのは、ゲームには出てこなかった要素で、初めて知った。


「……魔法の発動に失敗すると、生命力の半分が削られるものだって思っていたが。後遺症なんてものまで、あったんだな」

「まさか、知らずに我流で修業をしていたの?」

「まぁ、そうだな……」


 ……もしかして【超回復】(オーバーヒール)のおかげで、貧血程度の不調で済んでいたのか?

 そう思うと、ちょっと背筋が寒くなるな。


「だから、一撃に賭けるような戦い方をしたのね? 何度も剣を振るう余力が無かったから」


 その理由もあった。

 朝飯で回復したとはいえ、まだ体調は万全とは言えなかった。


 ヴァレリアは観察眼もあるようだな。これは頼りになりそうだ。


「バカ! 死んだら元も子もないでしょう!? 今すぐ、ベッドで安静にしなさい!」

「い、いや、ソレ、ヴァレリアが言うか?」


 俺は呆気に取られてしまった。


「なんですって?」

「ありがたい忠告だけど、時間が無いんだ。なにしろ、まだ一日一回のヒールが限界だからな」


 これじゃ、実戦では通用しない。

 最低でも、1日10回くらいはヒールを使えるようにならなければ、まるで話にならない。


「しばらく休んだら、また魔法の修業再開だな。明日までにもう数回、ヒールを繰り返せば……」

「坊ちゃま、なりません! そのようなこと、このフェリクスが、今度こそ絶対に許しませんぞ!」


 ものすごい剣幕で、フェリクスが俺を叱りつけた。

 ヴァレリアが深い溜め息を吐く。


「はぁ、わかったわ。ゼノンの言う通り、私は大人しく休むことにするわ」

「本当か……?」

「その代わり、ゼノンも一緒に休むのよ。でなければ、あなたが倒れている間、私は勝手に戦場に行くわ」

「……って、それじゃ、約束が違うだろ?」


 俺は剣を鞘に納めて、ヴァレリアを睨みつけた。

 怪我が癒えて、ようやくフェリクスに肩を貸してもらわなくても立てるくらいに回復してきた。


「いい? 魔法の修行はね。ただ闇雲に魔法を使えば良いという訳じゃないのよ。体調を万全に整えてからの方が、効率的にМPを増やせるわ。私が指導してあげるから、黙って私の言う通りになさい。まずは一日、なにもせず、ゆっくり眠ること。いいわね?」

「……魔法の指導はありがたいんだが」


 俺が眠っている間に、この死にたがりのお姫様が戦場に突撃してしまわないか、ちょっと心配だった。


「大丈夫よ。同じ部屋で休んで、お互いを監視するの。これならどう?」

「なるほど、それならOKだ」


 ちょっと意外だった。

 ヴァレリアは俺の体調を、本気で気遣ってくれているのか。


 時間は惜しいが、ここで一流の魔法使いである彼女の指導を受けられるなら、結果的に近道になるはずだ。


「ふむ。同じお部屋……それでは、お二人は婚約者でございますし、同じベッドでお休みになられてはいかがでしょうか? それが一番の監視になりましょう」


 フェリクスが片目を瞑りながら、とんでもない爆弾を投下してきた。

 父上の意向を汲んだ、彼なりの後押しのつもりなのだろうが……


「お、おい!? いくらなんでも段階を飛ばし過ぎだろ!?」


 俺は仰天してフェリクスに詰め寄る。

 俺たちは確かに婚約者だが、まだ出会ったばかりだ。デートをしたことも無いのに、それはないだろう。


 せっかくヴァレリアが運命共同体(戦友)になってくれると言ったのに、下手をすれば何もかもブチ壊しになるじゃないか!


「いえ、ゼノン坊ちゃまは、ヴァレリアお嬢様のことをいたく気に入られたご様子でしたので」

「はぁッ!?」


 そりゃまぁ、命を賭けてこの国を守ろうする、ヴァレリアの気概には胸を打たれたが……

 見れば、ヴァレリアは顔を真っ赤にしている。

 

 ヤバい、また激怒されるんじゃないかと、俺は身構えた。


「ふっ、ふん! 私は別に構わないわよ。そんな立つのもやっとな身体で、私を襲うなんてできないやしないでしょう?」


 えっ……?

 なぜか、彼女は照れたようにそっぽを向いて鼻を鳴らした。

 

「……それはそうだけど、構わないのか?」


 俺は唖然として尋ねた。


「か、勘違いしないで頂戴! あなたは放っておいたら暴走して死んでしまいそうだからよ。いい? この私の命令よ、少しは自分を大事になさい」


 ヴァレリアは傲然と俺に指を突き付けた。


「はぁ!? いや、それは、お前のことだろう。婚約した途端、相手に死なれるなんて俺はごめんだぞ」

「婚約ぅ……!?」


 ヴァレリアは身体を強張らせたが、やがて、ふっと表情を緩めて苦笑いした。


「……ま、まぁ、どうらやら私たちは似た者同士のようね」

 

 その笑顔に、思わずドキッとしてしまう。

 ヴァレリアは性格はキツイけど、見た目はすごい美少女なんだよな。


「では、ヴァレリアお嬢様。お部屋にご案内いたします」


 フェリクスが、うやうやしく腰を折った。


「ゼノン坊ちゃまも、女性が苦手だからと、逃げてはなりませんぞ。これはお館様のご意向でもあります」


 さらに、フェリクスは俺の首を掴んで逃さないようにした。

 力を使い果たした俺は、されるがままになるしかなかった。


「いや、逃げないって」

「それは結構でございます」

「でも、ちょっと心の準備がなぁ……」

「ハハハハッ、これも戦の一つ。戦場で、そんなことを言っていられると思いですか?」


 それから、俺はフェリクスによって強引に、なし崩し的に、ヴァレリアと同じベッドに横たわることにされてしまった。


 ……な、なんなんだ、この状況は!?


 前世を含めて、恋人などできたことのない俺にとって、美少女と一緒に寝るなんて妄想でしか体験したことのないシチュエーションだぞ。


 身体は休息を欲しているのに、隣にいるヴァレリアが気になって、まんじりともできない。

 確かにお互いを監視するには良いだろうけど、休息にとっては逆効果じゃないのか?


 すると、ヴァレリアが不意に俺の手を握ってきた。

 心臓が飛び出る程、驚く。


 彼女は軽い食事と、湯浴みを済ませていた。


 湯上りの熱でほんのりと桜色に染まった肌が何とも艶っぽく、石鹸の良い香りもしている。

 その上、身体のラインがくっきり出た薄手のネグリジェを着ていた。


 しかも、うわっ!? ヴァレリアの手、すげぇ柔らかくて温かい……って、こ、この娘、どういうつもりなんだ!? 

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