第17章 地下からの脅威
「複合攻城機」の敗北から、三日が過ぎた。
帝国軍は、再び沈黙していた。
だが、匠は警戒を解かなかった。
「蛭間は、必ず来る」
弟子たちに、そう言い聞かせた。
「今度は、もっと厄介な方法で」
予感は、的中した。
四日目の夜。
匠は、異変を察知した。
「指金」が、警告を発している。
「……地下だ」
匠は、地面に耳を当てた。
かすかな振動。規則的なリズム。
「掘っている……」
坑道だ。
蛭間が、再び地下からの攻撃を仕掛けてきた。
「師匠!」
ガルドが、駆け寄ってきた。
「どうしたんですか」
「敵が、地下を掘っている」
「また坑道戦ですか」
「ああ。だが——」
匠は、「指金」で地下を探った。
「——今度のは、前より規模が大きい」
複数の坑道が、同時に掘られている。
一本、二本、三本——いや、五本以上。
「一気に来る気だ」
匠は、立ち上がった。
「全員、起こせ。対坑道作戦を開始する」
対坑道作戦が、再び始まった。
だが、今回は前回より困難だった。
敵の坑道が、多すぎる。
一本を潰しても、別の二本が迫ってくる。
「こっちの人手が、足りない……」
匠は、歯を食いしばった。
弟子たちは、不眠不休で働いている。だが、限界があった。
「師匠、ここはもう無理です!」
ガルドが、叫んだ。
「敵の坑道が、近すぎます!」
匠は、現場に駆けつけた。
「指金」で、地下を透視する。
敵の坑道が、城壁の真下まで迫っていた。
あと数メートル。あと数時間。
「……崩落させる」
匠は、決断した。
「この坑道を、崩落させる。敵と一緒に」
「でも、こっちの坑道も——」
「構わない。城壁を守るためだ」
匠は、火薬を手に取った。
「全員、撤退しろ。俺が最後にやる」
「師匠——!」
「行け!」
弟子たちが、坑道から退避していく。
匠は、一人で残った。
火薬を、坑道の壁に設置する。
導火線を、伸ばす。
そして——
「……すまんな」
匠は、敵の坑道の方を見た。
向こうにも、人間がいる。命令に従って、掘っているだけの兵士たちだ。
「俺は——殺したくない」
だが——
「それでも——守らなきゃならない」
匠は、導火線に火をつけた。
そして、走った。
坑道から飛び出し、地上に転がり出る。
轟音。
大地が、揺れた。
坑道が——崩落した。
崩落は、五本の坑道のうち、三本を潰した。
残りの二本は——
「まだ来ています!」
見張りが、叫んだ。
「東側と西側から、まだ掘り進んでいます!」
匠は、疲れ果てた身体を引きずって、現場に向かった。
東側の坑道。
「指金」で分析する。
城壁まで、あと十メートル。
「……間に合わない」
もう、対坑道を掘る時間がない。
「別の方法を——」
匠は、頭を巡らせた。
そして——
「上から、叩く」
「上から?」
「ああ。坑道の真上の地面を、重いもので叩き続ける。振動で、天井が崩れる」
「やってみます!」
弟子たちが、石材を運んできた。
坑道の真上——「指金」で正確な位置を特定した場所に、石を落とす。
一回、二回、三回——
地面が、凹み始めた。
四回、五回、六回——
轟音。
地面が、陥没した。
敵の坑道が、崩落した。
「……よし」
匠は、息を吐いた。
残りの一本——西側の坑道。
そちらは、ボルクが率いる部隊が対処していた。
「崩落させました!」
報告が入った。
「西側の坑道も、潰しました!」
「……終わった」
匠は、地面に座り込んだ。
身体中が、痛い。疲労が、限界を超えていた。
「師匠、大丈夫ですか」
ガルドが、駆け寄ってきた。
「ああ……大丈夫だ」
匠は、空を見上げた。
夜明けが近い。東の空が、薄く明るくなり始めている。
「……また、守り切った」
だが——
「蛭間は——まだ、諦めない」
匠には、分かっていた。
戦いは、まだ終わらない。




