表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大工×異世界転生_墨壺と異世界~追放された底辺大工、神の指金(さしがね)で王国を建てる~  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/22

第13章 敵襲、その前に

攻城槌の接近を受け、要塞は緊急態勢に入った。


「全員、配置につけ!」


守備隊長の声が、要塞中に響く。


兵士たちが、城壁に駆け上がっていく。弓兵が矢を番え、歩兵が剣を構える。


匠は、城門の前に立っていた。


「指金」で、接近する攻城槌を分析する。


——構造分析:木造フレーム。先端に鉄製の衝角しょうかく。車輪付きで移動可能。上部に屋根があり、弓矢からの攻撃を防ぐ。推定重量:各台約二トン。衝撃力:甚大。


五台の攻城槌が、城門に向かって進んでいる。


このまま到達されたら、城門は持たない。


「師匠、どうします」


ガルドが、傍に来た。


「城門を強化する」


匠は、即座に答えた。


「今から?」


「ああ。時間はない。でも、やれることはある」


匠は、弟子たちを集めた。


「全員、城門の裏側へ。補強用の木材を持ってこい」


「分かりました!」


弟子たちが、走っていく。


匠は、城門に近づいた。


古い木製の門。厚さは二十センチほど。通常なら十分な強度だが、攻城槌の連続打撃には耐えられない。


「支え柱を立てる」


匠は、城門の裏側に、斜めに柱を立てた。


門が受ける衝撃を、地面に逃がすための構造だ。


「もう一本。そこに」


弟子たちが、次々と柱を運んでくる。


匠は、それを指示通りの位置に配置させていった。


くさびを打て。隙間を埋めろ」


「はい!」


作業は、猛スピードで進んだ。


だが、敵も迫っている。


「攻城槌、五百メートル!」


見張りの声が響く。


「四百メートル!」


「三百メートル!」


「……間に合うか」


匠は、歯を食いしばった。


「あと二本だ! 急げ!」


弟子たちが、最後の柱を運んでくる。


匠は、それを受け取り、所定の位置に立てた。


「楔を——」


その時——


轟音。


城門に、最初の一撃が打ち込まれた。


衝撃が、匠の身体を揺らした。


「くっ——!」


城門が、軋んだ。だが——


「……持った」


門は、まだ立っている。


補強が、間に合ったのだ。


「第二撃、来ます!」


また、轟音。


また、衝撃。


城門が、さらに軋む。だが、崩れない。


「持ちこたえろ……!」


匠は、城門を支える柱に手を当てた。


まるで、自分の身体で門を支えているかのように。


第三撃。第四撃。第五撃。


攻城槌の連続打撃が、城門を叩く。


だが、門は——持ちこたえた。


「……よし」


匠は、安堵の息を漏らした。


その時、城壁の上から声が響いた。


「火矢、放て!」


弓兵たちが、火のついた矢を放った。


矢が、攻城槌の木造フレームに突き刺さる。


炎が、広がっていく。


「燃えている……!」


攻城槌が、火に包まれていく。


帝国兵たちが、慌てて後退を始めた。


五台の攻城槌のうち、三台が炎上。残りの二台も、撤退していく。


「追撃するか?」


守備隊長が、訊いた。


「いや」


匠は、首を振った。


「深追いはするな。今は、守りを固める方が先だ」


「……分かった」


帝国軍は、撤退していった。


要塞には、再び静寂が戻った。


攻城槌の襲撃を退けた後、匠は城門の状態を確認した。


「指金」を発動させる。


——損傷分析:表層に亀裂多数。内部構造にも微細なダメージあり。現状では、次の攻撃に耐えられない可能性が高い。


「……予想通りだな」


補強はしたが、完璧ではなかった。次の攻撃が来たら、城門は持たないかもしれない。


「門を作り直す必要がある」


匠は、守備隊長に報告した。


「作り直す? 今から?」


「ああ。蒼鉄樹を使って、新しい門を作る」


「蒼鉄樹?」


「この前、森で見つけた特殊な木だ。通常の木材の十倍以上の強度がある」


守備隊長は、しばらく考え込んでいた。


「……どれくらい時間がかかる」


「一週間。いや、五日でやる」


「五日……」


「それまでは、今の門を応急処置で持たせる。敵が攻めてこないことを祈るしかない」


守備隊長は、ため息をついた。


「分かった。お前に任せる」


匠は、頷いた。


そして、弟子たちを集めた。


「これから、新しい城門を作る。全員、俺についてこい」


蒼鉄樹の城門製作が始まった。


匠は、以前切り出した蒼鉄樹の材木を使い、門の部材を加工していった。


「まず、枠組みだ。この木を、この形に削る」


「次に、板材。これを、ここに嵌め込む」


「蝶番の位置は、ここだ。金具を取り付けろ」


弟子たちが、匠の指示に従って作業を進める。


「師匠、この木、本当に硬いですね……」


ガルドが、汗を拭いながら言った。


「ああ。だから、丁寧にやれ。急ぐと、刃が欠ける」


「分かりました」


作業は、順調に進んだ。


だが、匠の身体は、限界に近づいていた。


坑道戦からの疲労が、まだ抜けていない。その上に、攻城槌の襲撃、そして今度は城門の製作。


休む暇がなかった。


「師匠、顔色が悪いですよ」


リーネが、心配そうに言った。


「大丈夫だ」


「大丈夫じゃないです。少し休んでください」


「休んでいる暇はない。敵は、いつ攻めてくるか分からない」


「だからこそ、今のうちに休まないと——」


「リーネ」


匠は、彼女の目を見た。


「俺は、大丈夫だ。心配するな」


リーネは、何か言いたそうにしていたが、結局、黙った。


匠は、作業に戻った。


一本一本、丁寧に。


それが、自分にできる、唯一のことだった。


四日目の夜。


城門の組み立てが、ほぼ完了した。


「あとは、蝶番を取り付けて、塗装をすれば……」


匠は、完成間近の城門を見上げた。


蒼鉄樹の青い光沢が、月明かりに照らされて美しく輝いている。


「きれいだ……」


ガルドが、呟いた。


「ただの門じゃない。芸術品みたいだ」


「……芸術じゃない」


匠は、静かに言った。


「これは、人を守るためのものだ。美しいかどうかは、関係ない」


「でも——」


「大切なのは、強度だ。この門が、敵の攻撃を何度も跳ね返す。それが、全てだ」


匠は、門に手を触れた。


冷たい。滑らか。確かな硬さ。


「……頼むぞ」


まるで、生き物に語りかけるように、匠は呟いた。


「この城を、守ってくれ」


翌日——五日目。


新しい城門が、完成した。


古い門を取り外し、新しい門を取り付ける。


「よし……入った」


蝶番が噛み合い、門がぴたりと閉じた。


「動作確認だ」


匠は、門を押した。


滑らかに開く。


引く。


滑らかに閉じる。


「完璧だ」


守備隊長が、感嘆の声を上げた。


「これが、蒼鉄樹の門か……まるで、鉄の塊のようだ」


「鉄より強い」


匠は、言った。


「攻城槌の連続打撃にも、耐えられる」


「本当か?」


「ああ。この門がある限り、敵は正面から城に入れない」


守備隊長は、門を見上げた。


「……お前に頼んで、正解だった」


「まだ終わりじゃない」


匠は、城壁を見た。


「城壁の補強も、まだ半分しか終わっていない。続きをやらないと」


「……お前は、本当に——」


「変わった奴だろ。分かってる」


匠は、少しだけ笑った。


「でも、これが俺の仕事だ。だから——やる」


城門の完成を見届けた後、匠は次の作業に取りかかろうとした。


だが——


「師匠!」


ガルドの叫び声が響いた。


「どうした——」


匠が振り返った瞬間、視界が揺れた。


足元が、ふらついた。


「師匠!」


ガルドが、匠を支えた。


「大丈夫ですか!」


「ああ……ちょっと、目眩が……」


匠は、頭を振った。


だが、目眩は収まらなかった。


むしろ、ひどくなっている。


視界が、暗くなっていく。


「師匠! 師匠!」


ガルドの声が、遠くなっていく。


そして——


匠の意識は、暗闇に沈んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ