表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大工×異世界転生_墨壺と異世界~追放された底辺大工、神の指金(さしがね)で王国を建てる~  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/22

第12章 異世界の素材

坑道戦から一週間が過ぎた。


帝国軍は、再び沈黙していた。新たな攻撃の兆候は見られない。


だが、匠は油断しなかった。


「補強工事を続ける」


弟子たちに、そう命じた。


「敵が動かない今のうちに、できるだけ城を強くする」


「分かりました、師匠」


作業が再開された。


城壁の修復、地下の補強、見張り台の増設——やるべきことは山ほどあった。


匠は、一つ一つ、丁寧に取り組んでいった。


ある日、匠は近くの森を探索していた。


建材を探すためだ。城壁の補強には、大量の木材が必要だった。


「この辺りに、使えそうな木はないか……」


匠は、森の中を歩いていた。


「指金」を発動させながら、木々を観察する。


——分析:針葉樹。繊維密度:中。強度:標準。建材適性:良。


普通の木だ。使えるが、特別ではない。


「もっと強い木が欲しいな……」


その時、匠の目が、ある木で止まった。


森の奥に、一本の木がそびえていた。


他の木とは、明らかに違う。


幹は、深い青色をしている。樹皮は滑らかで、まるで金属のような光沢がある。高さは二十メートルを超えている。


「……何だ、あれは」


匠は、近づいた。


「指金」が、情報を伝えてくる。


——種別:蒼鉄樹そうてつじゅ。鉄樹の亜種。繊維密度:極めて高。強度:通常木材の十倍以上。魔力伝導性:あり。加工難易度:極めて困難。


蒼鉄樹。


鉄樹の、さらに上位種。


「こんな木があったのか……」


匠は、木に手を触れた。


冷たい。まるで、本物の金属に触れているようだ。


「これを加工できれば……」


城壁の柱にできる。塔の骨組みにできる。どんな攻撃にも耐えられる、最強の構造物が作れる。


だが——


「加工難易度:極めて困難、か……」


普通の道具では、歯が立たないだろう。鉄樹の加工でさえ、何日もかかった。蒼鉄樹は、その何倍も難しいはずだ。


「でも、やってみる価値はある」


匠は、木を見上げた。


「弟子たちを呼んでくる。この木を、切り出す」


蒼鉄樹の伐採は、予想以上に困難だった。


斧を振るっても、ほとんど傷がつかない。ノミを打ち込んでも、すぐに弾かれる。


「師匠、これは無理ですよ……」


ガルドが、汗だくで言った。


「普通のやり方じゃ、無理だ」


匠は、木を見つめながら言った。


「でも、『指金』を使えば——」


匠は、「指金」を発動させた。


蒼鉄樹の内部構造が、透視される。


——構造分析:繊維配列は螺旋状。通常の木材よりも複雑。しかし、繊維の結合点には、相対的に弱い箇所が存在。その箇所に沿って力を加えれば、分離可能。


「見えた」


匠は、木に近づいた。


「この線に沿って、刃を入れる」


匠は、ノミを当てた。


「指金」が示す、繊維の弱点に沿って。


そして——叩いた。


音がした。


普通の木を切る時とは違う、澄んだ金属音。


「……入った」


ノミが、木に食い込んでいる。


「もう一度」


叩く。また入る。


「三度目」


叩く。


亀裂が、木の表面に走った。


「よし……!」


匠は、作業を続けた。


一打ち、また一打ち。


「指金」が示す弱点を、正確に狙って。


三時間後。


蒼鉄樹は、轟音とともに倒れた。


「……やった」


匠は、倒れた木を見下ろした。


「師匠、すごいです……」


ガルドが、目を輝かせていた。


「普通なら、何日もかかる——いや、普通なら切れない木を、三時間で……」


「『指金』のおかげだ」


匠は、道具を見た。


神から授かった、チート能力。


これがなければ、自分は何もできなかっただろう。


「さあ、加工を始める。この木で、城壁の柱を作る」


蒼鉄樹の加工は、伐採以上に難航した。


木を削り、形を整え、仕口を作る——全ての工程で、通常の何倍もの時間がかかった。


だが、匠は諦めなかった。


「一本一本、丁寧に」


それが、匠の信条だった。


三日後。


蒼鉄樹から、一本の柱が完成した。


長さ三メートル、太さ三十センチ。表面は滑らかで、青い光沢を放っている。


「これを、城壁の補強に使う」


匠は、弟子たちに言った。


「この柱一本で、通常の柱十本分の強度がある」


「すごい……」


弟子たちが、柱を見つめていた。


「師匠、この柱があれば、どんな攻撃にも耐えられますね」


「そうだな。でも、一本じゃ足りない」


匠は、森の方を見た。


「もっと、蒼鉄樹を探す。この要塞を、絶対に崩れない城にする」


蒼鉄樹の探索と加工が続く中、別の発見があった。


「師匠、これを見てください」


石工のヴァルゴが、匠を呼んだ。


「何だ」


「城壁の修復中に、見つけたんです」


ヴァルゴが指し示した先には、奇妙な石があった。


灰色の石材の中に、青白く光る石が埋まっている。


「これは……」


匠は、「指金」を発動させた。


——分析:魔導石まどうせき。魔力を蓄積・放出する性質を持つ鉱石。建材として使用した場合、構造物に魔法的な強度を付与する可能性あり。


魔導石。


この世界特有の鉱石だ。


「これを使えば……」


匠の頭の中で、新しいアイデアが形成されていく。


蒼鉄樹と、魔導石。


この二つを組み合わせれば——


「……最強の城壁が作れる」


匠は、呟いた。


「師匠?」


「この石を、全部集めろ。城壁の修復に使う」


「分かりました」


弟子たちが、作業に取りかかった。


匠は、新しい設計図を頭の中で描いていた。


蒼鉄樹の柱を骨格に、魔導石を要所に配置した城壁。


物理的な強度と、魔法的な強度を兼ね備えた、究極の防御構造。


「……できる。俺には、できる」


匠の目に、光が宿った。


新しい城壁の設計が始まった。


匠は、羊皮紙に図面を描いていった。


「まず、基礎部分。ここに蒼鉄樹の柱を打ち込む」


「次に、壁面。通常の石材を積み、要所に魔導石を配置する」


「最後に、表層。モルタルで固め、さらに魔導石の粉を混ぜた塗料で覆う」


「これで——」


匠は、完成した図面を見た。


「——どんな攻撃にも耐えられる城壁ができる」


「本当ですか、師匠」


ガルドが、目を丸くした。


「ああ。ただし、工期は長くなる。材料の調達にも、時間がかかる」


「どれくらい?」


「完成までに——」


匠は、計算した。


「——一ヶ月半。いや、二ヶ月か」


「二ヶ月……」


「帝国軍が、それまで待ってくれるとは思えない。だから——」


匠は、図面を指差した。


「——優先順位をつける。最も攻撃を受けやすい北側から、先に完成させる」


「分かりました」


「さあ、作業開始だ」


弟子たちが、散っていく。


匠は、一人で図面を見つめていた。


この城壁が完成すれば、帝国軍の攻撃を跳ね返せる。


だが、それまで——


「……何としてでも、守り抜く」


匠は、拳を握りしめた。


城壁の建設が進む中、匠は「指金」を使って、常に周囲を警戒していた。


帝国軍の動きを、見逃さないように。


そして——


ある夜。


匠は、異変を察知した。


「……何かが、来る」


北の方角。遠く離れた帝国軍の陣地から、何かが動いている。


「指金」の視界を最大限に広げる。


見えた。


巨大な——何か。


攻城塔ではない。もっと低く、もっと長い。


「……攻城槌こうじょうついか」


城門を破壊するための、巨大な破城槌。


それが、複数——五台ほど、こちらに向かっている。


「また、蛭間の仕業か……」


匠は、守備隊長のもとに走った。


「敵襲だ! 攻城槌が来る!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ