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我流捜査

作者: 朝日奈流星
掲載日:2025/11/07

ここに記すのは全て現実に起きたノンフィクション案件です。

勿論名前は変えていますが、脚色もないし何も書き加えたり差し引いたりしていません。


 ※ 事件事故・発生 ※

 秋の彼岸を一週間後に控えた早朝、わたしは墓掃除に出かけた。

 日中はまだまだ暑い日が続いているので秋の彼岸やお盆前などは薄暗い時間に行くのが習慣となっている。我が家の墓は山の上にあるのだ。といっても山の高さは60mくらいなのだが急な坂や階段があるので登るだけでも一苦労である。最近では墓の数も年々減ってきている。どこかへ移設したり墓じまいをする家も多いのだそうだ。

 その墓地には二方面から登ることができるようになっていて、わたしはいつも国道から近いほうを利用していた。しかしそちら側は駐車スペースが狭く数台しか停められない。しかも急な上り坂の途中にあるので目の前まで行かなければ空きスペースが見えないのだ。しかし早朝ならその心配はまずないのだった。

 この季節は雑草も生えてくるスピードが早く、お盆前に掃除したのにすっかり雑草だらけになっている。時折身体に水分を補給しながらやぶ蚊と闘いながら掃除をしていると

『おはようございます』

と声がした。知り合いかと思い振り返るとどうやら同じ墓地の人らしい。軽く挨拶をしながら作業を進めていく。

 一時間も経っただろうか、墓石も洗いすっかりきれいになった墓地を眺めながら軽く息を吐く。彼岸の入りにはまた(しきみ)を持って墓参りをする。とりあえず今日は掃除だけだ。持参した掃除用の水も使い終わり、登るときよりも下るのはかなりラクである。


 車を停めた場所近くまで戻るとさっき挨拶を交わした人の車はもうなかった。自転車かな?と思い周囲を見ても何もない。きっと先に帰ったか、それとも歩いてきたのだろう。

 車まで10mくらいに近づくと・・・違和感を感じた。


 停めた位置よりも少し後ろに下がっている??後ろは藪でその先は崖なのでそんなに後ろに下げて停めた記憶はないのである。よくよく近づいてみて愕然とした!

 前部グリルが大きく凹んでいる。しかも「シューッ」と煙かガスを吐いていたのだ!

『やられた!当て逃げだ』

 車が数十センチも移動するくらい激しくぶつかったのだろう。煙に見えたのはエアコンか何かのガスが漏れているらしかった。

 さっき掃除中に来た人がいたな。まだ線香が燻っているかもしれない。すぐに墓地へ引き返した。

 うちの墓より少し上のお墓らしいことが判明した。しきみは真新しく線香もたった今燃え尽きました、感がある。墓の銘を記憶した。

「定平家の墓」とあった。


 こんなに激しくぶつかったなら衝撃音も相当だったはず。目の前にある家の人に、朝も早い時間から申し訳なかったが一応聞いてみた。

『朝早くから申し訳ありません。墓掃除でそこに車を停めていたのですが当て逃げされたみたいで。何か音がしたとか出入りした車などありませんでしたか?』

『いいえ、何も見ていませんが』

 想像通りの答えだった。例え見たとしても当人にとっては面倒なだけだろう。見たと仮定してもあとはその人自身の良心が少しだけ痛むのを我慢してりゃ良いんだろうし。(その人が見た、とは断定できないので責めることは当然しない)



 ※ 通報 ※

 しばらく考えた挙句、警察に連絡することにした。この場合緊急ではないので所轄の署に電話したのだ。時間にして15分くらい経っただろうか、ワンボックスの警察車両が到着した。

 制服の警察官が二人来た。ここに駐車してからのいきさつを説明し、警察官がタイヤ痕など調べだした。この駐車スペースは舗装されていなくて土なのだ。なのでタイヤ痕などが残る。しかも上り坂の途中なのでアクセル操作を誤るとふかし過ぎでスリップなどするだろう。メジャーを取り出しタイヤや車軸の幅など計測を行っている。警察官の乗ってきたワンボックスはそれなりに大きな車両で乗用車なら3ナンバークラスだったが、それよりも車軸の広い車だったのだ。相手の車体の色は白らしい。これは塗膜痕から素人でも分かる。

その時気付いたのだが、ウィンカーレンズかヘッドライトかの破片が散らばっているのだった。明らかにわたしの車の部品ではないことは明白だった。なぜならわたしの車のライト類の破損はないからだ。

 警察官二人はひと通り計測を終えて

『一応捜査はしますが早朝で目撃者もいないし、、、日中の担当警察官に引き継ぎしますが何か分かれば連絡します』

というなんともやる気の感じられない返答だった。そりゃそうだ。当て逃げとはいえ、たかが物損事故の延長である。人身事故ならともかく自転車の盗難と同じレベルなのだろう。そのまま帰ろうとした警察官にわたしは言った。

『このレンズカバーの破片はわたしの車の物ではありません。証拠品として持ち帰って欲しい』

という旨を伝えた。警察官はそれを断ることはないのだが

「こんなもの持ち帰っても無駄だろうよ」

的な気持ちで渋々応じてくれた様子が伺えたのである。


 自宅に帰る途中、まだ暑い時期なので車のエアコンのスイッチを入れてみたが冷たい風が出ることはなかった。漏れていたのはやはりエアコンのガスであった。帰宅するまでは冷却水温の上昇でオーバーヒートするのでは?と気になって仕方なかった。幸いにもラジエーターからの水漏れは無いようだった。


 自動車販売店の開店時間に合わせて修理の見積もりに行ってみたが何やかんやで30万円くらいかかるみたいだ。なんという腹立たしさだ。30万円もの修理代を発生させておきながら逃げるとは・・・



 ※ 我流捜査 ※

 昼食を食べながら今朝の一件を考えてみた。墓掃除中に誰かが墓地に訪れたのは挨拶をしてるから覚えてる。もしかしたら犯人はそいつか?

 そういえば檀家の墓地の名簿があったはずだ。最新版ではないが檀家の頻繁な出入りそうそうないはず。お墓の名前は記憶している。

 「定平」という家だった。ご丁寧に住所まで書いてあるので行ってみた。もちろん内偵の域を出ないのは当然である。家周辺を調べても車軸幅を想定させるような大型車はない。もちろんその家の誰かではなく近親者の墓参りだった可能性は否定できないが、今時点ではどうしようもない。

『このまま警察に任せて良いものか?あの態度じゃ容疑者の特定までとてもできないんじゃないか?』

という思いは膨れるばかりであった。

 悶々としながら二日目を迎えている。

 二日目になり偶然目にしたことがある。これは本当に偶然だった。

 近所に住む「宮本」という人がいる。この家の墓も同じ墓地なのだ。老人夫婦二人暮らしだが、わたしの家の二軒隣である。その宮本さん自宅の駐車場で車の応急塗装処置をしていた。白い車なので白いスプレー片手に「シューシュー」とスプレー塗装しているのである。通勤でもいつも通るのでイヤでも目に入るのだが、数日前まではその人の車は凹んでいなかった。今ではヘッドライトカバーは割れているようだった。何となく違和感を感じて名簿で調べたのだ。それまでは同じ墓地だったことさえ知らなかった。

何故この車をよく覚えているかというと、この車種の古い型を過去に乗り回していたのだ。勿論今では相当型落ちになるが。

 よく観察するために「散歩」している感じで周辺をブラブラしてみる。もちろん感づかれないように顔は横に向けながら時折鋭く車の状態を見極める。明らかに持ち主である宮本さんは何かを隠そうとしてる。もしかしたら土日が絡む連休で修理工場も休みだったか?!普段は洗車すらしないのに。。。


 一度家に帰り気持ちを落ち着かせてみることにした。

 確かにあの車は車幅も広い。当然車軸幅も広いだろう。しかもヘッドライトが割れたりボディが凹んだタイミングである。まさに事故当日ではないのか?! 本人は早急に市販のスプレーで隠そうとしている。

 考えれば考えるほど怪しくなるのは被害者の妄想かとも思った。しかし30万円の修理費は・・・許せない!


 そこで思い出したことがある。あの日警察官に割れたライトを持ち帰ってもらったのだった。その欠片と宮本さんの車両の割れた部分を当てがってみれば・・・

あの部品を持ち帰ってもらって良かったと思った。

 すぐに所轄の担当部署に電話をしてみた。当日の警察官ではなかったが調査してみるとの返事だった。次の日所轄の警察官が自宅にやって来た。勤務は休みだったのでグッドタイミングである。


『例の当て逃げ案件で宮本さん宅の駐車場に来てほしい』と。

正直言うと、制服警官が自宅に来るのは極力控えて欲しいものである。例え被害者の立場であっても見かけた人は「加害者」や「犯罪者?」みたいに感じるのではないだろうか。

 来られた以上は仕方ない。警察官に従い宮本宅の駐車場に向かう。歩いて数分であるが近所の人とすれ違わないことを祈る。

 幸いにも近所の誰とも出会わなかったが窓から見られてたかも、という思いもあったがもうどうでも良い。白黒ハッキリさせたい。


 宮本宅の駐車場に着くと警官が一人と宮本夫婦がいる。わたしの顔を見るなり

 【夫】 『ぁ、あんただったのか?』

【その妻】『普段散歩なんてしないのに、だから歩いてたんだね』

当て逃げしたのを分かっていながら逃げたのは明白ではないか。自分がぶつけたのは一体どこの誰だと思ってたんだ。まさかバレることはないだろうとでも思ってたのか?!

 割れた部品を目の前で照合して見せる警察官。間違いありませんね?と全員に同意を求める様子。「そんなことはあんたたちでやるべきことだろ?」軽い苛立ちもおぼえながら」話を進める。事故証明みたいなものは発行するのであとは保険会社との何たら・・・



 ※ その後 ※

 宮本の保険証書を見ると・・・

期限切れである。呆れた老人だ。

近所だからまだ解決は早かった。ご近所さんの目もあるからだろう。全て自腹で払うと言う。

 当たり前だといえばそれまでだ。わたしは修理を済ませこれ以上関わりたくないので修理工場から宮本に直接請求に行ってくれと頼んだ。修理工場は直接宮本宅に行ったらしいが

『どこの誰かも分からないのに直接払いたくない』

と言ったそうだ。仕方なく修理工場の担当者とわたしが一緒に請求に行き、やっと支払いに応じてくれた。

 今回は何とか容疑者(犯人)を特定できたのは非常に幸運だったのは言うまでもない。

 あのまま警察に全て任せていたら・・・泣き寝入りだったろう。


 そもそも何で証拠品(割れたレンズ等)を警察は持ち帰らないのか。

 面倒な案件増やしたくないからだろうか。そんな姿勢で良いのか。


 警察というのは

【警察が法律を守る、市民に法律を守らせる】

のが仕事だろう。それが結果として市民の安全安心に繋がるはずである。


 何事も人任せにできない世の中ではある


この案件を警察だけに任せていたら

多分泣き寝入りになっていたでしょう。警察を悪く言うつもりはさらさらありませんが、結局他人はアテにできず自分で切り拓けるとこは自分でやらなきゃ先に進めないってこと。

今回は偶然にもきっかけを見つけることができましたが、何とも腹立たしく、しかもご近所さんでもあるので複雑な気持ちではありました。


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