プロローグ
月明かりのない暗闇を男は走っている。自分を追ってきている奴は姿は見えなくなっているが、そんなことよりもこの街を抜け出すことが最優先だと思い、今にもはち切れそうな足を無理やり動かす。
ゼエゼエ、と息が切れるような音と自分の足音だけがこの暗い街に響いている。道はもうとっくにわからない、自分がこの街のどこにいるのか出口はどこなのかさっぱり検討がつかない。
何にも考えなしに建物の角を曲がる。暗闇を一身に走っていると、袋小路に着いてしまった。
「し、しまった!」
なんて不運なのだろう。こんなことならこの道を通らなければよかった。時間のロスだと感じ急いで引き返そうとした時、ふと後ろに気配を感じる。振り向いてみるとそこには奴がいてこちらに歩き始めている。
「ヒッ、た、助けてくれ!」
そう言って助けを乞っても奴は歩くのをやめない。その手にはナイフが2本両手に握られている。
「くっそ、なんなんだよ!この街はイカれている!こんな街入らなければよかった!」
そんな言葉を最後に男の意識はこの街と同じ暗闇に沈んでいった。
燦々と太陽が光を照らして、世界に色がつき活気に満ち溢れているこのお昼ごろにルナたちは目的地であるロストタウンに来ていた。くたびれた門を潜り抜け馬を置いて二人はこの町での今後について話し始める。
「んーなんか、聞いていた話と全然違いますねぇ。人もいっぱいいますし、普通の街って感じです」
「魔力が張っているような感じもしないしもしかしてガセネタでもつかまされたかね?」
「とりあえずこれから宿屋でも探して荷物を預けましょうか」
「わかった」
そうして大通りを歩いていく。聞いていた話と違い町民が生活しており、活気にあふれた町というのが第一印象だな。すこし違和感を感じるような気もするけどまぁ、気にすることじゃない。
そうして二人で宿屋を探してあちこちを眺めながら歩いていると、隣からドンッ、と音が聞こえる。視線を向けて見ればアリエスが子供とぶつかったようだ。
「あ、ごめんなさい!ちょっとよそ見しちゃってた。僕怪我はない?」
「うん!大丈夫だよ、ごめんね僕もよそ見しちゃった。じゃあね〜」
「え、ええそれじゃね〜」
「大丈夫か?あの子に怪我はなかったかい?」
「ええ、大丈夫でした。それじゃあ行きましょう!」
そうした少しのトラブルがありつつも二人は夕暮れ前には宿屋を探すことが出来た。
「少しボロいけど、ここにしようか。」
「はい、先日は先生が支払いまいしたので今回は私にお任せください!ええーっと財布は確かここに・・・あれ?」
「どうしたんだい?」
「あれ?あれあれあれ?」
「もしかして・・・・!」
「財布無くしちゃったかもしれません」
隣で絶望して物言わぬアリエスをわき目にこちらの方で支払いは済ませてしまう。こちらの様子を見ていた宿屋の店主がこちらに話しかけてくる。
「もしかしてあんたたちムーンシーフに擦られたんじゃないか?」
「ムーンシーフ?有名なのかい?」
「あぁ、この町では有名な盗人だよ。大人から子供まで色々なやつからスリを働くってんで困っちまってんだ。」
「そんな奴がいるんだねぇ」
私たちの声が聞こえていたのか絶望していたアリエスが天啓を得たかのように立ち上げった。
「絶対、そいつですよ!この私から財布を盗むなんて良い度胸してます。絶対見つけてボコボコにしてやりますとも!」
「まぁ、それは荷解きが終わってからね」
「はい!・・・・・ぜっっったい見つけてやります!首を洗っておきなさいムーンシーフ!」
そうして私たちは用意された各自の部屋で荷解きを行う。
にしてもムーンシーフは今回の噂の元凶なんだろうか、はたまた只の盗人なんだろうかそれは調査を始めてから悪ることだな。
セリフの置き方を少し変更してみました。読みずらいなどのことがありましたら連絡ください。
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