幕間のキャンプ
王国から数十キロ離れたとある森、平穏を謳歌してたこの森は自然が溢れかえり、動物たちが繁殖しているいわば自然の楽園とも取れる場所は後数秒もすれば平和ではなくなる。
どぉぉぉぉぉん!!!
森の中腹あたりで大規模な爆発が起きた。その衝撃と爆音で森の動物たちは急いで逃げ出し、植物たちは衝撃とは反対方向に揺られている。
その爆発が起きた原因にある場所ではアリエスが見た目は数十メートルはあるだろうと予想される動物の亡骸の上で立っていた。立っているアリエスを見てみるとホコリなどはついているが傷と呼ばれるものはなく無傷で制圧したのだと考えられる。
「ふぅ、まったく今日の食事になるんですから、あんまり時間を取らせないでください」
理不尽である。と彼女の下に轢かれている動物は天国からそう思った。
そんな呑気な独り言を話していると彼女の近くにルナがやってくる。
「おや、やっと終わったかい?こっちもキャンプの準備はできているよ。」
ルナがやってきた方角を見てみるとキャンプに必要な道具が広げられており、火も起こされている。アリエスは動物の亡骸から飛び降りるとテクテクとルナの元に来て話を始める。
「ルナ様、ありがとうございます!ところでこのキングベアーなんですけど、どうやって調理するんですか?」
「ん、まぁそれは晩御飯までのお楽しみってやつさ。さて、そのキングベアーこちらのキャンプまで運んでくれないかい?」
「わかりました!お任せください!」
そういいアリエスはその華奢な体格に見合わない贅力でキングベアーを運んでいく。
日没ももう少して来そうだと思われる頃、ルナはキングベアーの処理は終了して今晩の調理を行なっていた。この調理時間にアリエスは今回のクエストを発注した依頼人への報告を行いに依頼人が住む場所に出向いていた。あと少しすれば達成報告も終了してこちらに来るだろう。
さて、そろそろ完成する頃だろう。今回調理に使わなかった一部はアリエスに冷凍してもらおう。
「ふわぁ〜いい匂いですねぇ〜。」
匂いに釣られてというべきか、帰ってきたアリエスはクンクンと鼻を鳴らしながら近づいてくる。
「今日はシチューだ、栄養がたっぷりと入っているし、体も温まる。」
「美味しそうですね!早速食べましょう!」
「こら、まずは手を洗って、鎧を脱いでからにしなさい。マナーを守れないようだと、騎士失格だぞ。」
皿をもち、今すぐにでも掬って食べてしまいそうなアリエスを嗜めると明らかに落胆した顔つきでトボトボと近くの川に手を洗いに行った。まったく王国で見せていた凛々しい姿はどこへ行ったのやら。子供みたいにしょぼしょぼしている様は見ていて楽しいが今までのあの子の生活がとても心配になる。
数分が経ち、軽装になったアリエスが近づいてくる。
「ルナ様!準備完了です。」
「ん、OKだ。なら皿を出してくれ。」
「はい!」
そうして二人で食事を開始する。シチューを一口、口に運べば甘みもある濃厚なコクが口いっぱいに広がっていく。キングベアーの肉は筋繊維が硬いことで有名だがじっくりと煮込むことで柔らかくなり、それがとてもシチューにはあっている。食べ応えもあるし、偏食になりやすい旅という環境で野菜の栄養もしっかりと取れる為もってこいの料理だ。
「体があったまりますねぇ〜」
「そうだな、旅をしていると熱いものを食べる機会は多いけど体を温めるものはあまり食べないからな。温かいものを食べるのは体だけではなく心も一息つかせるものなんだよ。」
「いいですよねぇ〜、私はコーンで出来たスープが好きですね。戦いから帰ってきた時はいっつも食べています。一安心するんですよね。戦場では携帯色ばかりで温かいものを飲んでいる余裕はないですから。」
「私も昔はそんなもんだったなぁ、とくにパンとかが硬いのなんのって」
「あぁ、昔はあったみたいですねぇ。あまりにも不評だったみたいで改善されたみたいですが。」
「あれは不評にもなろう、ただの石だったからな」
そうやって話しつつ夜は耽っていく、食事が終了したのはこの会話から1時間も経った頃だった。
食事が終了して二人で皿洗いをしつつ今後について話をしていく。
「それにしても、オーブというのはどこにあるんでしょうね?」
「違うぞ、オーブはあるものなんじゃない。オーブは作られるものだ。」
「作られる?」
意味のわからない言葉を聞いたようにアリエスは私に聞き返してくる。そうかオーブの詳細については知らされていなかったのか、思い返してみると本の中にはオーブの詳細については描写されていないことがあった。まぁ、オーブの作り方なんて知らない方が為か。そういえばアリエスが街につくなり色々な場所を歩き回っている思ったがそうゆうことだったのか。てっきりアクセサリーなどを見ているのかと思っていたが。
「そうだ。オーブは高い魔力が結晶化したものだ。高い魔力がある場所だと作られやすい。」
あまりないがな、と話をしている傍でアリエスは皿洗いを辞めメモを取っている。世に出ていなかった情報をしっかりと記録しておくのだろう。
するとメモをとっていたアリエスがふと、手を止め疑問をぶつけてくる。
「そうしたら、人はどうなるんでしょう?我々人も、果ては魔物も魔力を宿しているものがいます。そうゆうもの達はオーブができるのですか?」
「まぁ〜、前例がないわけじゃないんだが。魔力を扱う者は魔法などを使用すると体にある魔力が可変するだろう?その為オーブは出来ずらいと言われていたね。」
そう言って説明しているルナの顔は、どこか悲壮感が込められた顔をしている。これ以上はこの話題については話す気はないと、口を噤んでいる。
その表情を悟ったアリエスは、話題を変えルナに話しかける。
「では、我々がこれから一体どこに向かえば良いのですか?高い魔力が長い間ある場所なんて予想できませんが。」
「あぁ、それなら大丈夫。昨日街に寄った時に話を聞いてみてね。何やら面白い話が聞けたよ。」
「どのような内容ですか?」
「ここから西に約20キロ先に進んだ場所にとある街があるそうだ。曰くその街は約10年もの間、月が見えないらしい。その為、街の人々は疎か、周囲の街の人々もその場所には近づかないらしい。」
アリエスはその奇怪なことを聞いて顎に手を当て考えている。
「月が見えないですか・・・、それは間違いなく魔法による仕業でしょうね。・・・なるほど、10年ものあいだ街を覆うほどの魔法をかけているとなると、きっとオーブ生成に必要な高い魔力がある可能性はありますね。」
「そうだろう?だから明日にはその街に行ってみようと思う。いいかな?」
「えぇ、ルナ様がそうおっしゃるなら行ってみましょう!」
・・・
「前から気になっていたんだけど、そのルナ様ってちょっと辞めないか?なんだか他人行儀みたいであんまり好きじゃないな。気軽にルナで良いよ。」
「そそそそ、そんな恐れ多いです。ルナ様は私の憧れなんです、そんな呼び方をしてしまったら私きっと解釈違いで、極東式謝罪奥義”裏” 腹掻っ捌きを行わなければなりません!」
「えぇ・・・、じゃあルナ様以外でなにか適当に呼んでくれ。」
流石に自分より遥かに年下の腹掻っ捌きショーを見たいとは思えない為、適当な代案を出す。その代案を聞きアリエスはうん、うん、と頭を捻りながら考えている。
しばらく考えていたアリエスだが、突然思いついたのか私に伝えてきた。
「ならば、先生なんてどうでしょう?・・・安直すぎますかね?」
「先生?私は君に何かを教えたつもりはないが?」
「あの、実はあの時の戦いで見せてくれた5連撃の技あるじゃないですか、あの日の光景が忘れられず、私も使えるようになりたいのでルナ様に弟子入りしたいと思っていたんですよ」
「あぁ、私の技を盗みたくてしょうがないのか。なら全然大丈夫だ。旅の合間でいいのなら私が指南しよう。」
「本当ですかっ!?良かったです!なら、これからルナ様のことを先生と呼ばせていただきますね!」
キラキラと屈託のない笑顔でそう話す彼女はまるで子供のようにみえる、旅をし始めてから早数日が経つが最初の頃のような高苦しさはなくなり、お互い砕けた話し方もできるようになった。これからはもっと良い信頼関係性を深めていければいいと思っている。
「さて、行き先も決まった。もう寝るぞ」
「はい!先生!明日から合間合間でいいので剣の指南よろしくお願いしますね!」
「わかったから、もう寝るぞ!」
「はーい!おやすみなさい。先生!」
「おやすみ」
そう言ってお互いのテントに入っていく。テントの中は暗闇が広がっており、暗闇に目が慣れる前に瞼を閉じてしまう。そしてそのまま深い無意識の領域に吸い込まれるように私は眠りについてしまう。
・・・そういえば寝る時の挨拶なんて久々にしたなぁ・・・
遅くなって申し訳ありません。
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