8〜隣に可愛い子がいると元気を貰える〜
〇side中川〇
「はいこれ、貸してくれてありがとう」
そう言って洗濯したジャージの入った紙袋を雪田さんにお菓子と一緒に渡す。
「いえいえ」
「雪田さんに包まれてる感じで最高でした」
「果たして今その感想を本人に伝える意味あったかな?」
「最高でした」
「だめだこいつ……」
「もうすぐテストだからいつもよりもしっかりと授業聞けよーテストに出るところも言うからなー」
先生のその一言で教室に一気にどんよりとした空気が流れる。
「いやだぁ」「めんどくせぇ」「だるーい」等と愚痴を言う生徒ばかり。
「雪田さんって頭いいの?」
先生の言葉を聞いてもそんなに反応していなかった隣の雪田さんに声を掛ける。
「んー?別に普通だけどなんで?……あ、もしかして中川くんって勉強苦手なの?お姉さんが教えてあげようか?」
何も言っていないのに急に一人で決めつけてドヤってお姉さんぶり始めた。ない眼鏡をクイクイと押し上げるジェスチャーまでしている。
「おい、無視するな!!」
あ……教科書忘れた最悪だ。
いつもなら別に忘れても構わなかったがテストが近いから多少は真面目に授業を聞こうと思った矢先にこれだ。
「あの~、雪田様教科書忘れたので見せてもらえないでしょうか?」
「ふーん、よかろう。ほれ」
下手に出ると雪田さんって案外チョロいよなと思いながらも机をくっつけて一緒に見せてもらうことに。
「ありがと」
「ん、うん」
「~だからつまり、こうなるってことだ。分かったか~?教科書の35ページをみてみろ」
そう言われて皆一斉に教科書に目を移す。
「あでっ」
「いてっ」
教科書を覗き込もうとすると同じタイミングで同じ事をした雪田さんと頭がぶつかってしまった。
「ごめん」
「私こそごめん」
あまりの顔の近さと、小声で囁くように謝る状況に少し恥ずかしさを覚え俺は少し引き目に教科書をみることにした。
改めて雪田さんをみると本当にスタイルがいいなと思う。肩くらいまで伸びる綺麗で光に照らされ手入れが行き届いた艶やかな黒髪。
小さくて綺麗な顔、白い肌。横から見ると鼻が高いのが分かる。
胸は小さくもなく大きくもなくそれがまたスタイルが良く見える要因だと思われた。白く細くて直ぐ折れそうな腕。
けれどスカートから伸びる太ももはしっかり肉付きがあり健康的だ。
メイド姿の雪田さんを思い出すとその健康的な太ももの上で寝たいという願望が湧いてきた。
柔らかそうだなぁ。
「ねぇ、さっきから視線がやらしい」
「え?」
バレてーら!
「教科書見せないよ?」
「すみませんでした。ごめんなさい」
「うん」
普段言い合う中、結構容赦なく言われる事多いけど根は優しいんだよな。
授業が終わり休み時間になったタイミングでふと気になったことを聞いてみることに。
「そういえばテスト前とかバイト入るの?」
「いや勉強するって理由で休みにしてもらってる」
「あ、一々聞くの面倒だから雪田さんのシフト表送ってよ」
「え、なんで?」
「雪田さんがいる時に行きたいから」
「きっっっっしょ」
そこまで溜めて言わなくてもいいじゃん……。
「そんなに私のあの姿みたいわけ?!」
「え、みたいですけど」
「どうせ見て嘲笑うだけでしょ。冷やかしなら絶対来ないで」
珍しくツンツンとした言葉に俺は多少たじろぎながらも本心を告げる事にした。
「雪田さんが可愛いから見たいんだけど?」
「…………は?な、何言ってんの?死ね!」
褒められて恥ずかしかったのか目が揺らいで顔を背け、暴言を吐いてどこかに走り去っていった。
……照れてるの可愛すぎない? 照れ隠しで思わず暴言吐くところもツンデレ属性あっていいな。
そうか、テスト終わるまではメイド服でご奉仕してくれる雪田さんはお預けか。
俺はチェキを取り出しメイド服の雪田さんの姿を見ながら暫く見れないことにため息を吐いた。
テストも面倒くさいな。
時は無情にも過ぎていき、各々テストに向けてしっかり勉強した者、余裕をかまして全然勉強しなかった者、一夜漬けの者など様々で中々に面白かった。
因みに俺は少し勉強して昨日もいつもより早めに寝た。勉強は得意じゃないし出来るほうでもないけど、記憶力は普通の人よりはあるのでいつも何とか乗り越えていた。
一日、二日と過ぎていくにつれ皆どんどんと目に見えて疲れてきているように見えた。連日テストは精神的にも疲れるよね。
「中川くんってなんでそんなに元気そうなの?」
「正確には元気じゃないけど、雪田さんがいるから頑張ってる」
「なにそれウケる」
全然笑ってないのにウケるって……雪田さんも皆と同じく疲れが溜まっているようだった。
皆頑張り過ぎには気を付けないといつか身体を壊してしまう。もっとのんびりゆったり生きていいと俺は思う。
ようやく全教科のテストが終わり解放された皆が安堵のため息を吐く。教室の皆はもうお祝いムードの様な感じだ。
「あぁー……やっと終わったぁ……」
腕を伸ばして机に突っ伏す雪田さんに俺は労いの言葉を投げかける。
「お疲れ様」
「中川くんほんとなんでそんなに元気あるの」
「ないよ、ないけど雪田さんから吸収してる」
「私が余計に疲れてたの中川くんのせいか」
「そゆこと」
「返せ私の元気を」
「ハグしようか?」
「やだきもいしね」
「罵倒の嵐……」
まだ机に突っ伏している雪田さんの横腹目掛けて指を突き刺す。
「ひぃぇぁっ?!」
突いた瞬間情けない声を上げて勢いよく顔を上げたかと思うと、俺の方を凄い形相で睨んできた。
「可愛い」
「やめろよ変態」
今回は照れなかった。雪田さんが照れる時と照れない時の差は一体何なんだろう。本気で怒っている時とか……?
「すんませんした」
結構ガチトーンで言われたので申し訳なく思って謝るが雪田さんはまた机に突っ伏してしまってそれから何も言わなくなってしまった。
「え、そのほんとごめん」
本当に怒らせてしまったかもしれない。それ程までに脇腹をつつかれたのが嫌だったのだろう。
俺はまた謝ると雪田さんはゆっくりと顔を上げるとニコッと笑みを浮かべる。
「怒ったと思った?」
「だる」
「焦ってたの面白かったよ」
ケラケラとしてやったりと笑う雪田さんは子供の様で全然イラっとこなかった。寧ろ微笑ましかった。
「はい、これシフト表」
「え、いいの?」
「うん、渡さずに機嫌損ねてバラされる方が嫌だからね」
「分かってるじゃないか」
うんうんとわざとらしく大きく腕を組んで頷いていると「調子乗んな」と叩かれた。
実際の所、雪田さんの可愛いメイド姿を独占したいから誰にも言わないんだけどね。
「なるべく会いに行くよ」
「いいよ別にお金足りなくなるよ?それに会いに来ないで気持ち悪い」
「そんな……こんなにも愛しているというのに」
「はいはい、どーもどーも」
どんどん俺の扱いが上手くなってきていてちょっと悲しいです。




