4〜体操服には制服と違った良さがある〜
「来週は体育祭だから気合入れていくぞー。あ、でも怪我とかは気を付けろよ。体調が少しでも悪くなったら遠慮なく言えなー?」
体育の先生の言葉に皆「はーい」と返事をする。体育祭が近いから最近体育の授業が増えている。
そして今からリレーをするらしい。練習の時から異様にリレーだけ盛り上がるんだよな。
それにしても女子の体操服の姿はまた普段の制服と違った良さがあると俺は思う。短いズボンで太ももは露わになっていて最高だ。そして何と言っても体操着。薄着で胸がある人は強調されてエッチだ。ゼッケンが胸の辺りにあるから名前確認してるふりして胸を見れる。
世の中の女学生諸君、こんな変態も紛れ込んでいるので気を付けたまえ。
うんうん、と胸中でキモい事を考えていると俺の番がやってきた。
後ろに手を向け徐々に走り出す。
「はいっ」
掛け声のタイミングでバトンが手に当たった感触がしたので握りしめて左手に持ち替え思いっきり走り出す。
因みに現在最下位。といっても2クラスで授業しているので2位なのだけど結構差が開いている。
『頑張れー!!』
普段全然関りがない人、話さない人たちからも声援を送られる。この状況、手を抜いたら後から絶対陰口を言われる。
スピードを上げて、コーナーで体重を出来るだけ内側にして最短を攻める。ぐんぐんと速く走り前の人を追い抜いた時周りがどよめく。
そのまま少しだけど差をつけて次の人にバトンパス。
「ふぅはぁはぁはぁ……」
久しぶりに思いっきり走って肩で息をしていると雪田さんが声を掛けてきた。
「凄いね中川くん、こんなに速いと思ってなかったよ」
「はぁはぁ……ありがと。雪田さん体操服姿も可愛いね」
「は、はぁっ!?冗談は良いって」
「冗談じゃないけど?」
「うるさい馬鹿」
褒められて嬉しかったので褒め返したら何故か馬鹿呼ばわりされました。
雪田さんはもうすぐ自分の番だからと言い小走りでこの場を去っていった。照れちゃって可愛いんだから。
実際照れてたのかどうかは分かんないけど。
雪田さんの順番が来て走り出す。
……その、胸をあんまり見ようと思ってなくてもどうしても目が行ってしまう。地面に足が着く度に揺れる胸と太ももに視線が持っていかれる。
必死に走っている姿も美しいです雪田さん。
俺が抜いて一位になってからそれをキープして次の人にバトンを渡し、帰ってくる。
「お疲れ様」
「んぁはぁはぁんっ……」
膝に手を当て呼吸を整える雪田さんに労いの言葉を掛けると上目遣いで息も絶え絶えに「ありがと」と言ってきた。
顔を伝う汗が艶やかで乱れた呼吸が妙にエロい。
なにこの人わざとやってんの?と演技を疑いたくなる程に魅力的だ。
俺は変な気分になりそうなのを我慢して視線を空に向けて言葉を続ける。
「雪田さんも速かったね」
「ま、まぁね。でも中川くんには負けるよ」
「そりゃ一応俺も男だからね。逆に雪田さんに負けてたらちょっと悔しくてお婿に行けないよ」
「よし、負かす」
「え、責任取ってくれるってことでいい?」
「違うわボケ!」
そう言う事じゃなかったっぽい。いつもの言い合いをしているといつの間にかリレーが終わっていた。どうやら無事に勝ったみたい。
「中川くんが追い越したから勝ったみたいなもんだね」
「まぁ皆頑張ってたよ」
「そうだけど、今回のMVPは中川くんだよ」
「ご褒美ありますか?」
「ないです」
「頭なでなでしてください」
「だから無いって言ったでしょ?!」
バシッと頭を撫でるのではなく叩かれた。
「これがご褒美ですか。もしかして雪田さんってSの人だったり?」
「ち、違うわ!」
少し恥ずかしそうに言葉に詰まりながらも否定してきたが、俺は雪田さんがSでもMでも似合うと思うのだが。
『ほらほらもっといい声で鳴きなさいよ』
警察官の様な恰好をしていて鞭を振り下ろす雪田さんを想像する。あかん、凄くいい。この厳しい中でたまに優しく甘えさせてくれる飴もあるって考えると最高。
『ご、ごめんなしゃい。もっとしてぇ!』
目隠しをされて手と足を縛られて滅茶苦茶にされている雪田さんも想像できる。いや、こんな想像するのは今すぐにやめよう。
よし、と頬を自分で叩いて現実に戻ってくる。良くない良くない、こんな想像ばっかりしていたらまともに顔見れなくなる。普通に話せなくなる。それは少し、いや結構嫌だからな。
こんな変態って思われたくないが……もう手遅れかな?
「どうしたの?」
一人で顔を歪めていたのが気になったのか雪田さんが顔を覗き込んできた。
俺はそれにドキッとしつつ「なんでもないよ」と笑顔を作った。
その笑顔が不自然だったのか雪田さんは眉毛を歪めたがそれ以上追及してこなかった。