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メイド喫茶で働いていたクラスの可愛い雪田さん  作者: 絶対人生負け組


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33/40

33〜【前編】夏の夜、星空の元、二人きりの公園で〜

 〇side雪田〇




 花火が始まるアナウンスの後、人の移動に飲まれて中川くんとはぐれてしまった。スマホは繋がらないし、集合場所も決めていなかったので取り敢えず最初の待ち合わせした場所に向かう事にした。


 逆の方向に向かう人達をかき分けながら、進んでいく。



「いたっ」



 人混みの中誰かに足を踏まれる事も何回もあった。



 少し人が少なくなってきた所で自分の足を見てみると靴擦れで足の皮がむけていた。気付いてからはずっとヒリヒリして痛い。



 一人になってしまってからずっと不安な気持ちが襲ってくる。もし、このまま合流出来なかったらどうしよう。また告白できない、折角の楽しい思い出が……。



 考えるだけで、はぐれてしまって申し訳ない気持ちが押し寄せてきて呼吸が浅くなる。



 痛む足を動かしながら待ち合わせした場所に何とか着くことが出来た。既に中川くんの姿があるかもと淡い期待は消え去った。



 どうしよう……。



 このままはぐれたまま終わっちゃうのかなと想像すると悲しさと申し訳なさで視界が歪む。



 足も痛むので道路の縁石に腰を掛け呼吸を整えようとする。



 結局私はこのまま告白できないまま終わっちゃうのかな。あの時海でもっと勇気を持って告白していれば違った未来だったのかな……。



 祭りの騒がしい雑音の中一人でいる事に寂しさを感じる。



 俯いてネガティブな思考に陥っていると「雪田さん!」と騒音の中私の名前を呼ぶ声が微かに聞こえた。



 聞き覚えのある落ち着く声。今一番会いたかった人の声。



 顔を上げ、声のした方を見るとそこには肩で息をしている中川くんがいた。



「中川くん……」


「ごめん、見つけれて良かった。大丈夫?なんもなかった?」



 お互い悪いのに自分だけが悪いみたいな表情をして私を心配してくれる中川くんに内心で苦笑しながら言葉を返す。



「うん、大丈夫だよ。てかなんで裸足?」


「あ、走るのに下駄邪魔だったから」



 中川くんの足を見ると裸足だったので疑問に思い投げかけるとそう言いながら下駄を取り出し履き直していた。



 走って探すくらいに私の事を心配してくれたことが分かって凄く嬉しい気持ちと、中川くんは私の事をどう思っているのか気になってしかたがない。


「雪田さんさ、靴擦れしてる?」


「え、なんでバレた」


「座ってるし、あんまり動きたくないのかと思って」


「鋭いね……」



 疲れたのもあるけど、中川くんは私の事を結構見てくれている。そして細かな変化に気付いて気遣ってくれる。


 こんな出来た人そういないと思う。普通に人間として尊敬するレベル。




「バレちゃったか」と笑いかけたタイミングで花火が夜空に打ちあがる。



 中川くんは私の隣に腰掛けると一緒に空を見上げ花火を見る。




 久しぶりに花火を見たけどやっぱり綺麗だ。それに好きな人と一緒に見れるなんて最高だなぁ……。


 はぐれた時はどうなるかと思ったけど、一緒に見れて本当に嬉しい。



 中川くんも楽しんでくれてるかなと思い横を見ると優しい表情を浮かべていた。



 私の視線に気が付いたのか中川くんと目が合う。お互いに笑い合ってまた花火の方に顔を向ける。



 こんな時間がいつまでも続けばいいのにな……。




 そしてふと思い出した。私はこの夏祭りで告白すると決めていたことを。そしてそのタイミングは花火の時とかがいいと思っていた。


 アニメとかでそのシーンがあってそれに憧れていたから。



 けど実際花火が始まって気付いたけど、無理じゃない?!だって周りの人の声もするし花火の音で声がかき消されるし、タイミングよく告白するのって難しくない?!



 出来なくはないけど、タイミング悪く花火の音と被さったらまた言わなきゃいけないのは恥ずかしすぎて絶対無理。


 よ、よし。今日は諦めよう。また別の機会に告白しよう。



 意思が弱い自分を今日はハプニングがあったからという言い訳で納得させる。



 花火を見ているとなんか少し勇気が出てくる気持ちもある。でもタイミングが……。


 でもこのままズルズル行くのは……とモヤモヤした気持ちで見ていると花火が終わってしまった。



 一瞬の静寂の次に人々が「綺麗だったね」「凄かったね」などと談笑に花を咲かせ始めた。




「綺麗だったね」


「うん雪田さんくらい綺麗だった」


「……な、やめい!」



 久しぶりにいきなりぶっこまれて少し反応が遅くなってしまった。


 油断してた……そうだった。中川くんは出会ったときから結構褒めてくるタイプの人間だった。


 こう、なんだろう。恥ずかしいとかいう気持ちはこの人にはないの?!




 花火の余韻に浸る余裕もなく鼓動が早くなる。



 やっぱり好きじゃないから簡単に綺麗とか可愛いとか言えるのかな……。言われるのは嬉しいけど、私の事を何とも思ってなくてただの友達程度にしか思われてないのかな。



「どうしたの?」



 少し落ち込んだのが表情に出ていたのか、心配して顔を覗き込んでくる。



「うんん、何でもないよ!」



 言える訳もなく取り繕うように笑顔を向けると不思議そうな顔で「そっか」と呟く。やっぱり優しいんだよなぁ……。



 花火が終わったからかどんどんと帰路につく人が多くなってきて、人が少なくなっていく。



「私たちもそろそろ帰る?」


「うーんそうだね、ちょっと近くの公園でも行って休もっか」


「ん、わかった」





 痛む足を気遣ってか中川くんは私の歩くスピードに合わせてくれた。



「ちょっと足洗ってくるわ」


「あ、じゃあ私も」



 公園に着くと裸足で走って汚れた足を洗うためか水道に向かったので私も怪我したところを洗うことに。



「わわっ」


「うわ、大丈夫?」



 足を地面に着かないように洗っていたらバランスを崩して倒れそうになったところを中川くんが支えてくれた。



「あ、ありがと」



 顔を上げてお礼を言うと思ったよりも顔の距離が近くて直ぐに逸らす。



「き、気を付けて」


「うん」



 その後洗う時もすぐそばで中川くんがいつでも支えられるように近くにいてくれた。




 ベンチに座り、一応の為に持ってきていた絆創膏を貼る。


 これで幾分かマシになるといいな。



「飲み物買ってくるけど何がいい?ホットココアでいい?」


「なんでだよ!こんな暑い日になんでホットだよ!」


「あはは、お茶でいい?」


「うん、ありがと」




 ……え、エスコート完璧じゃない?丁度喉が渇いていたから買いに行こうと思ったのにそれよりも先に買ってくるって言うとかたまたま……?


 今日は一段と優しい気がするのは気のせいだろうか。


 少しは私に好意を持っているって期待してもいいのかな。



 そんなことを思いながら空を見上げていると首元にひんやりとする冷たさを感じて思わず声を発する。



「ひぇぁっ!」


「ははは、ひぇぁっだっておもろ。いでっ」



 ケラケラと笑う中川くんにムッとして軽く叩くと「ごめんごめん」と謝りながら隣に座ってきた。



「いいよ、ありがとね」


「どうしたしまして」



 お互いペットボトルの蓋を開け、数口飲む。さっきまでの喧騒は何処へやら、少し寂しい感じもする。


 たまに遠くに帰路につく人達の会話が聞こえてくるくらい。



「今日誘ってくれてありがとね」


「いや、こちらこそありがとう。でもごめん。はぐれちゃって」


「いやまぁあれはしょうがないし、結局合流出来たんだしあんまり気にしない気にしない!」


「うん」



 さっきまでのおちゃらけ具合は消え去り、考え事をしているのか視点は遠くを見ていた。



「花火、綺麗だったね……」


「うん……」




 そして二人の間に暫く沈黙が流れる。二人以外誰もいない公園、静かな夜。



 ……え、これって告白のチャンスでは……?



 今逃したら、次の機会なんてそうそうない気がする。ここで決めよう。沈黙を破るのは勇気がいるけど、告白一歩手前まで行った事あるんだから大丈夫。



 少なくとも中川くんは私の事嫌いではないはず。じゃないと今日祭りに誘ってくれていないと思うし。



 私は覚悟を決めて中川くんの方に向き直り「あの……さ」と声を掛ける。すると中川くんは「ん?」と不思議そうな顔をして見つめ返してくる。



「あのね……私、言いたいことがあるんだけどいいかな?」



 緊張して何故かわざわざ確認を取ってしまったがもう後戻りはできない。鼓動が早まり、体温が上がっていく。




 生温い風が吹き、汗が顎を伝い首筋を通る。ゴクリと生唾を飲み込み喉が鳴る。



 手に力が入り、持っているペットボトルが少し音を立てる。



 次に言う言葉はもう決まっている。喉まで出かかるこの気持ち。



「いいよ」と言われたら直ぐに言える準備はもうできた。もう逃げない。逃げたりしない。






「んーダメ」



「す……んぇ?…………え?ダメっ?!今ダメって言った?!」



 まさかの返事に、覚悟を決めていた私は激しく動揺してベンチから滑り落ちそうになるのを何とか堪える。



「俺――雪田さんの事が好きです」



「……え?」




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