3〜席替えあるある〜
「「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」」
席に着き、注文をすると今日も雪田さんの姿があった。いつ見てもメイド服が似合っていて可愛い。またチェキ撮ろうかな。
「やほ、来ちゃった」
雪田さんが近くを通りかかった時に声を掛けると「来ちゃったじゃないわ!帰れ!」と小声で怒ってきた。
「ご主人様にそんなこと言っていいの~?」
「死ね!」
言っていいらしい。死ねまで言われたがいつも通りなので気にしない。
今日は違うお姉さんとも撮ってみようと思いチェキを頼もうとしたら雪田さんが近くに来た。
「ご主人様浮気ですか?」
「なんでやねん、他のメイドさんとも撮ってみようかなって思っただけじゃん」
「私というものがありながら……酷い」
「わかったから雪田さん撮ろう」
付き合ってもいないのに浮気ってなんやねん。まぁいっか。撮って欲しそうだから撮ってあげようではないか!
それにしてもやっぱり同クラスの可愛い子からご主人様と呼ばれたり浮気ですかって彼女ムーブされるのって最高過ぎる。
自慢したいけど絶対他の人に教えたくないという矛盾が生まれる。我ながら結構独占欲が強いかもしれない。
その後チェキを撮ると「学校には持ってきてもいいけど絶対見られたり落としたりしないでよね!」とツンデレ風に言われ心臓が萌え萌えキュンした。
次の日学校で雪田さんと会うとニッコリと笑みを浮かべて近付き耳元で囁いてみることに。
「昨日も可愛かったよ瑠奈」
「~~ぁっ!!」
普段雪田さん呼びだけど下の名前を呼んでみた。
「くすぐったいから止めて!」
「耳弱いんだ?」
耳元に近付こうとするとササッと離れられた。
「やめて普通にキモいから」
「すんませんした」
「分かればよろしい」
「うす」
「雪田さんの弱い所は耳っと」
「メモすんな」
メモに書いているふりをすると頭を叩かれた。
「書いてないでーす」
おちゃらけて白紙のメモを見せると今度は腹を殴られた。愛のこもったパンチだ。
実際メモには書いていないけど頭のメモリーには保存されているがな、がはは。
「よーしお前ら今日は放課後時間があったら席替えするぞー」
先生のその一言により一気に教室が騒がしくなる。皆朝から元気だなと思いながら誰と隣になるんだろうと少しワクワクしている自分もいた。
その後の授業は皆少しふわふわした気持ちだったのか先生に怒られる人が多かった。皆やっぱり楽しみなんだな。
今の席で友達と離れてしまうのが悲しいからなのか近くの人と喋っている人も多い印象。俺は特にそんな相手はいない。
友達はいるけどね。いますし、友達じゃなくてもある程度話せるし。
遂に放課後が来て教室の空気は席替えムード。騒がしいったらありゃしない。けどこの空気感、嫌いじゃない。
「お前ら少し静かにしろー。それじゃ名簿順にくじ引きにこーい」
先生が注意してもまだ教室は騒がしい。別れの挨拶をする人、手を合わせて祈る人など様々だ。
俺の番が来たので適当に引いて席を見る。
よっしゃ席後ろだ。ラッキー。
「全員引いたな。よし、席移動しろー。目が悪くて見えないとかあるなら言ってくれよー」
先生のその合図で皆席を移動し始める。仲いい人と近くになれて喜ぶ人、遠くて悲しむ人、一番前の席で絶望している陽キャもいた。
俺はルンルンで自分の席に行く隣にはもう人がいたので挨拶をする。
「よろしく」
「よろし……って中川くんかい!」
「え、なにそんなに俺と隣になれて嬉しい?」
「ぶっ殺すぞ」
今日も言葉が鋭すぎる。日に日に俺の扱い雑になっていっている気がするのは気のせいか?
「雪田さんが隣で嬉しいよ」
「何急にキモいんだけど」
「えぇ……」
「嘘だよ、ばーか」
「キモ……」
「はぁ?!可愛いでしょ!」
「メイド姿が?」
「今その話してないし学校でやめろ!」
「うっす」
隣に席だから直ぐに手が伸びてきて俺の横腹に直撃する。それと同時に雪田さんのいい匂いがふわっと鼻によぎる。
「うわめっちゃいい匂いする」
大げさにクンクンと嗅いでいると「それはガチでキモい……」とガチトーンで引かれ、机も少し離された。
明日からもっと学校が楽しくなる気がして俺はスキップしながら帰路についた。
周りの視線が痛くて直ぐに辞めたけど。
〇side雪田〇
中川くんと関わるようになってから結構経つが分かったことはやっぱり変態と言う事だ。でも話すと結構楽しい。言い合いばっかりだけど不思議と嫌な気持ちにはならない。最近言葉が強くなっちゃうときがあるけど中川くんが傷ついてないか少し不安。
ま、まぁ中川くんなら大丈夫だろうけど。
席替えをして席が隣になれて少し嬉しいとか別に思ってないし。でも少し明日から楽しみでもある。
匂いを至近距離で嗅がれそうになった時はちょっとドキッとしてしまい反射的に罵ってしまった。そんなの態度に出したら絶対中川くんは調子に乗るから出さないけど。
何気にメイド喫茶でバイトしていることは誰にも言ってないみたいだし、結構いい人なのかもしれない。私は中川くんといる時間が結構好きになってきているのにまだ気が付いていなかった。
〇side中川〇
登校し、自分の席に着くと普段話しかけられない人から話しかけられた。
「あ、あの……そこ僕の席です」
「……あっごめん席替えしたの忘れてた」
謝って本当の自分の席にさっさと向かって誰とも目を合わせず窓の外を見る。
待ってまじで恥ずかしい。忘れてた。
恥ずかしさで熱くなった顔をパタパタと手で扇いで冷やしていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おはよー瑠奈」
「おはよー!」
「瑠奈?席そこじゃなくない?」
「あっ、そうだった」
「瑠奈ってアホだよね」
「アホ言うなボケ」
その会話を聞いた瞬間俺は顔を伏せて笑いを堪える。
どうやら友達との会話でも結構いじられキャラらしい。
「ちょっとなに笑ってんの」
「笑ってません」
雪田さんに声を掛けられ顔を上げて笑っていない事を告げる。
「めっちゃ笑顔なんですけど?」
「おっとこれは失礼しました」
口角が上がり切っていた。
「席間違えただけでそんな笑う?」
「いや俺も今さっき間違えたばっかりだったから余計に面白くて」
「間違えたんかい!」
あははとお互いアホだねと笑い合う。雪田さんの恥じらいが混じった笑顔が可愛かった。
「人間だもの、間違えるよ」
「何ちょっといい事言ってるの」
「でへへ」
「キモ」
「酷い」




