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メイド喫茶で働いていたクラスの可愛い雪田さん  作者: 絶対人生負け組


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28/40

28〜まだ友達〜

 〇side中川〇





 インターホンが家に鳴り響く音で目を覚ます。俺はのっそりとベッドから起き上がり玄関に向かい扉を開けるとそこには雪田さんの姿があった。



「ちょっと遅いんですけど!」



「あれ、雪田さん何でいるの……?」


「昨日行くって連絡したじゃん!」


「あ~……そうだった」



 寝起きだから頭があまり回っていない。確か昨日チェキを貰うのを忘れてそれで雪田さんが連絡してきたんだった。



「てか、今起きたの?」


「まぁうん。朝から元気だね」


「もう昼だよ。夏休みだからってだらけ過ぎたらダメだよ?」


「はい、母さん」


「誰がお前の母さんじゃい!」



 玄関を開けていると熱風が吹き込んでくる。太陽が燦々と照り付けてアスファルトの上が歪んで見える。


 流石にずっと外にいるのは暑いだろうと思い声を掛ける。



「まだ少しバイトまで時間ある?上がってく?」



 雪田さんはスマホで時間を確認して少し考えると「じゃぁちょっとだけ」と微笑む。



「お、お邪魔しまーす。涼し~!」


「適当にそのソファ座っといていいよ」




 俺は二人分のお茶を注ぎながらそう言うと雪田さんは遠慮がちに座ってキョロキョロと辺りを物珍しそうに見渡していた。



「はい、暑かったよねごめん」


「あ、ありがと」



 玄関を開けただけでもあの暑さ。そんな中歩いてきたんだから汗をかかない方がおかしい。


 雪田さんは一気にお茶を飲み干すとコップを置いてタオルを取り出し髪をかき上げ首を拭く。


 その姿が妙に艶やかで思わず見惚れてしまった。



「いやぁそれにしても暑いねぇ」そう呟きながら服をパタパタさせる。その度にいい匂いが鼻孔をくすぐる。



 なんでこんな汗かいてるのにいい匂いするのか不思議でたまらない。



「ん?」



 雪田さんと目が合いキョトンと小首を傾げられハッとした俺は雪田さんのコップを手に取りお茶を注ぎに立ち上がる。



「あ、そうそうチェキ持ってきたよ」



 雪田さんは思い出したかの様に言うと、鞄から二枚のチェキを取り出して机に置く。



 ん……?二枚?



 お茶を注ぎ終わったのでそれを机に置きながらチェキを見るとメッセージもちゃんと書かれていた。



 雪田さんが腕に抱き着いたチェキには『守ってくれてありがと』と丸くて可愛らしい文字が書かれていた。



 もう一枚はお互いに頬をつまみ合っている写真。書かれている文字は喧嘩しているような写真とは真逆の事が書いてあった。



『君といると凄く楽しい』



 それが面白くて思わず笑みがこぼれる。



「喧嘩する程仲がいいみたいな状況だな」


「そう!でも実際私達そんな感じじゃない?」


「まぁ確かに?」



 改まって自分たちの関係をそう言葉にするのは少し恥ずかしさもあったが仲がいいと思われてる事は素直に嬉しかった。



 チェキが二枚な理由は助けてくれたお礼とサービスでらしい。凄く得した気分だ。



 見返りが欲しかったから助けたとかじゃなくて自分の為でもあったのにこんなにサービスして貰ってなんか少し申し訳ない気もするけど、お金が浮くからありがたい。



「そろそろ時間だから行くね、お茶ありがと」


「おっけ、こちらこそチェキ届けてくれてありがとね」





「あっ!」



 立ち上がり見送りに行こうとした瞬間、雪田さんがソファの角に躓いたのか倒れかかってきた。



 俺はそれを急いで受け止めようとしたのだが、急な事で力が入らずバランスを崩しそのままお尻から床に倒れ込んだ。



 小さいうめき声と共にドンという鈍い音が室内に響き渡りシンとする。外から聞こえるセミの鳴き声と俺達二人の吐息しか聞こえない。空間が切り取られたような不思議な感覚に陥る。



「だ、大丈夫?」



「大丈夫、ありがと中川く……」



 顔を上げ少し身体を起こした雪田さんとバチっと目が合う。思ったよりも近くてお互いびっくりして少しの間固まってしまった。



 髪の毛が頬を撫でくすぐったさを感じる。



 雪田さんの目に吸い込まれるような感覚。綺麗で大きい目。長くて整ったまつげ、肌は白くすべすべしていて、ぷるんとした唇。



 それらが少しずつ近付いてきているのを感じ、俺はそれを止める。



「雪田さん、バイト遅れちゃうよ?」



「あっ!ご、ごめんね。怪我してない?」



 俺の言葉でハッとしたのか雪田さんは慌てて起き上がり手を差し伸べる。俺はその手を取り、立ち上がると「大丈夫」とサムズアップして元気をアピールする。




 すると雪田さんは「あ、ありがとね」と頬を赤くして目を逸らし、慌ただしく玄関に向かったので俺も見送る為に後を追う。



「行ってらっしゃい、気を付けてね」


「行ってきます!」



 元気に敬礼する雪田さんに苦笑いしながら、玄関が閉まるまで手を振り続けた。



 そして再び静寂に包まれ、俺のため息が嫌に響く。



「……はぁぁぁぁっ」



 俺はその場に力が抜ける様にしゃがみ込んで頭を抱えた。



 危なかった。さっき雪田さんを止めなったら一体どうなっていたのだろうか。恐らくあのまま……。



 まんざらでもない自分がいた。



 俺達はそういう関係じゃない。友達だ。そう、まだ友達なんだ。


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