26〜オムライス『好き』作戦〜
〇side雪田〇
今日久しぶりに中川くんが来た。あの日、告白しようとして出来なかった日から会っていなかったので少し気まずい。
「ひ、久しぶりだね。もう来ないかと思ってたんだけど」
「なに?寂しかったの?」
でも気まずいのは私だけ、いつも通り振る舞わなきゃ。
「うわ、きっも」
本当はキモいとか思ってないです!寂しかったです!!
「えぇ酷い?!」
そう言いながら大袈裟に肩を落とす姿を見るとやっぱり笑顔になる。前みたいに話せた事が嬉しい。
注文を取ると私はその場から逃げる様に立ち去った。やっぱり好きと言う事を自覚してから顔を直視するのが出来なくなってきた。顔が赤くなってないか不安になる。
「瑠奈ちゃん瑠奈ちゃん、あの子と何か進展あった?」
「美佳さん?! な、何もないですよ」
バイトでいつも色々とお世話になっている美佳さんから話しかけられ勘が鋭くて思わずたじろぐ。
「ふーん?告白した?」
多分隠してもからかわれるだけだから、アドバイスでも貰えればいいなと思い正直に言ってみる事に。
「し、しようとしたけど勇気が出なくてできませんでした……」
ニヤニヤしてるんだろうなと思い恐る恐る美佳さんの表情を伺うと、口に手を当て天井を見て真剣な顔をしていた。
やっぱりいざという時に頼りになるお姉さんだ……かっこいい。
心の中で尊敬していると何かを閃いたのかニコッとして人差し指を立てる。真剣な表情からの満面の笑顔のギャップが凄い。
「お姉さんが良い事を思いついたんだけど聞きたい?」
「え、なんですか?」
「オムライスにケチャップで文字書くじゃん?」
「は、はい」
「そこに好きって書いちゃおう!!」
「えぇ……冗談って思われるだけなんじゃ……?」
「それでもいいの、相手に少しでも意識してもらう事が出来ればそれで十分なの。一歩前進なの。焦っちゃだめだよ?」
美佳さんがそういうならそうなのかもしれない。確かに私は焦り過ぎてたのかもしれない。そうだよね、一歩ずつでいいんだよね。
「やってみます!」
「うん!お姉さん応援してるよ」
「ありがとうございます」
私は早速美佳さんが提案した事を実践することに。
『好き』という二文字だけじゃ味気ない?ちょっとハートもつけてみよっと。
文字に書くだけでもドキドキする。これが普通のお客さん相手なら何とも思わない作業なんだろうけど。
これを中川くんに渡すって想像すると緊張してきた。
でも言葉で好きというよりもうんとハードルが低い。告白一歩寸前までいった私には余裕だった。
余裕ではないけど……。
緊張した足取りで中川くんの席に向かう。どんな風に思われるのか怖い。
「お、お待たせしました」
「ありがと」
中川くんはお礼を言った後にオムライスの方に視線を向け「ん?」と一瞬固まる。
そして胸を抑え、目を瞑り噛み締める様に天を仰ぎ「尊い……」と呟いていた。
なんか完全に反応が推しからのファンサ貰って喜んでるオタクじゃない……?
「お、美味しくなーれ萌え萌えキュン。はい、召し上がれ!」
もっと面白い反応をしてくれると少し期待していたのに微妙だったので少しイラついた。私の気持ちに少しは気付いてくれてもいいじゃん!




