表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

2〜からかい合い〜

 〇side中川〇



「おはよう」


「ん?おはよう」



 何故か朝から雪田さんに挨拶をされた。いつもはされないのに。どうしたんだろう。



 そして数日前から感じる視線。これもしかして俺ずっと雪田さんに監視されてる?



「ストーカーはやめた方がいいよ」


「な、何言ってるの?」


「そういう趣味か」


「勝手に決めつけて納得しないで?!中川くんが誰かに言わないか見張ってるだけだし」



 やっぱりストーカーされてた……。可愛い子にストーカーされるのはオタクとしての一つの夢と言っても過言ではない。いや過言です。実際されたら怖い思いしかない。視線を感じて気になって仕方がないと思う。けど俺はされてる理由が何となくわかっていたから怖くはなかった。


 女の子に追いかけられるの最高です。



「その心配はいらないよ。だって俺、特に親しい人いないしね」


「なんでそんなに誇らしげに言ってるのよ……」



 雪田さんが不安にならないように自信満々に言ってあげたのに何故か逆に心配された。



「友達いないわけじゃないからね?」


「そ、そうなんだ」


「見栄を張ってるわけじゃないからな?」


「わ、わかってるよ。もしよかったら私が友達になってあげてもいいけど?」


「いえ間に合ってます」


「なんでよ?!」



 言い合いをしながら気が付けば教室に着いていた。



「瑠奈おはよー!」


「あ、おはよー!」



 雪田さんは友達に挨拶されるとそれを返しそっちに行ったので俺は静かに、目立たないようにフェードアウトした。


 あんまり話す事はなかったけど意外と面白い人だなと感じ始めていた。可愛いのに面白い、最高か?



 俺は遠くからバレないように雪田さんを眺めながら授業を受けるのだった。


 学校での楽しみが一つ増えて嬉しい。



 それから友達がいるということを信じていないのか気を遣って毎朝挨拶をしてくれた。いつも挨拶の後は言い合いになるがこれが中々に飽きずに面白い。


 段々と俺は自分からも話しかける様になっていた。



「あのさ、話があるんだけど」


「え、なに?」


 急にわざとらしくトーンを真面目なものにする。


「ずっと前から言おうと思ってたんだけど」


 ここで少し間を開けて緊張してる風を装う。雪田さんはその言葉を聞くと「え」と身体が強張るのが分かった。眉毛を一瞬歪めもした。



「俺と……」



 わざと溜めに溜める。雪田さんがゴクリと喉を鳴らしたタイミングでその続きの言葉を発する。



「俺と、友達になってください」



 そう言って頭を下げて手を差し出す。



「……へ?」



 顔を覗くと物凄く間抜けな顔をしていた。


「ふはは」


 俺はその表情に思わず笑いが抑えられなかった。


「は、はぁ?うっざ!」



 頬を少し赤く染めて恥ずかしいのか俺の手をパシッと叩いた。



「告白だと思った?ねぇ思った?」


「うるさいうるさい、キモいんですけど!!!!」



 そう言い残して雪田さんは帰ってしまった。



「……ちょっとからかい過ぎたかな」



 あんなにいい反応するとは思っていなかったからついついもっとイジメたくなってしまった。


 次会った時ちゃんと謝るか。



 そう思っていたのだが、なんか避けられるようになってしまった。まさかそんなに引きずるとは思っていなかった。申し訳ない。これはしっかり謝らないと今後の俺の学校生活も危ういかもしれない。それに折角少し仲良くなったのにこんなままで終わるのは嫌だ。



「雪田さん!」


「雪田さーん」


「雪田さん?」


「雪田瑠奈」


「雪田さーん……」



 休み時間の度にタイミングを伺って声を掛けるが無視されたり何処かに行ってしまって無反応だ。


 おぅまいがぁ……。謝る機会くらいくれてもいいじゃん。



 これには流石に俺も少しいじけた。多少強引でも謝らせてもらうぞ。


 放課後、雪田さんが席を立ち帰り始めた時に俺も直ぐに後を追う。



「雪田さん」



 声を掛けると歩くスピードが早くなったので俺は逃げられないように追いかけて手を掴む。


 それでも振り払ってきたので肩を掴む、すると雪田さんが態勢を崩して倒れそうになる。


 俺は焦り雪田さんを抱き寄せ体勢を整えようとすると俺もバランスを崩して壁に手をつく。



「え、ちょっと……」


「あ、ごめん」



 意図せず壁ドンをしてしまい、気付けば雪田さんの綺麗で白い顔が目の前にあり、俺は急いで離れた。まさかの事態に俺の心臓はバクバクだ。


 雪田さんも恥ずかしそうに手で口を覆っていた。



「その、雪田さん。この前はごめん」


「何が?」


 まだ怒っているらしくツンとした声音で聞き返してきた。


「からかってごめん。本当に友達になりたいとは思ってるんだけど……」



 申し訳なさから俺は床を見つめて声も小さくなる。


「ぷっ、あはははは!」



 突然雪田さんが笑い始めて俺はキョトンとして表情で顔を上げる。



「仕返し大成功~!」


 ピースをしてニヤりと笑う雪田さんに俺はまだ理解が追い付いていなかった。


「つまり?」



「そんなに怒ってないよ」


「んだよくそが」


「あはは、そっちが変な事するからでしょ~」



 ご機嫌な雪田さんも可愛いですはい。



「それに私、中川くんと既に友達だと思ってたよ?」


「え、そうなの?」


「うん」


「それじゃ、これでおあいこってことでこれから改めてよろしく」


「よろしくね」



 仲直り?の握手をして俺達は改めて友達になった。



 こんな可愛い雪田さんとまさか友達になるとは思っていなかった。人生何が起こるかわかったもんじゃないな。


「またメイド喫茶行くわ」


「声がデカい!てかくんな、来たら殺す!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ