17〜意外と頼もしい一面〜
〇side雪田〇
子供の発言で中川くんと一緒にいるのが少し恥ずかしくて迷子センターに行かずに待っている事にした私は、中川くんたちの後姿見ていた。
すると突然男の人達が近寄ってきたかと思うと声を掛けてきた。
「ねぇ君一人?」
「ひょー可愛いね」
「スタイルめっちゃいいじゃん」
大学生くらいなのかそれくらいの男の人達がニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべてきた。
中川くんもキモい笑みを浮かべるが何故か嫌な感じはしない。けどこの人達の笑顔は嫌気がして気持ち悪い。
「すみません、人を待っているので」
無視するのも悪手だと思い答えると男達は目を合わせて私を取り囲むように逃げ場を無くしてきた。
「えー女の子をこんな所に一人で待たせるなんて酷いねぇ」
いや私から待っとくって言ったんだし。
「俺らならそんな寂しい思いさせないよ?」
「いえ、結構です」
もう一度断りの言葉を告げると誰かが舌打ちをしたのが聞こえた。私は怖くなったのか身が縮こまり心臓の音が早くなる。
恐る恐る男達の顔を見ると引きつった笑顔を浮かべていた。
怖い……。
これから自分がどうなるのか想像してしまい、私の膝は震えだす。
「ねぇいいじゃん一緒に遊ぼう?」
「いい事教えてあげるからさ」
「そうそう、楽しいよ?」
ニヤニヤとした気持ちの悪い笑みを向けられ私は声を震わせながらも言葉を発する。
「だから嫌です」
すると言葉では無理と思ったのか男の一人が腕を掴んできて無理やり連れて行こうとしてきた。
「や、やめてください!」
怖い……怖いよ……。嫌だよ……。
私は男達の顔を見るのすら怖くなり目を瞑って必死に腕を振り抵抗するが力の差があり過ぎて意味をなさない。
やだやだやだ、怖い助けて……中川くん……。
「――あの、俺のなんでそういうの止めてもらえます?」
心の中で願った瞬間、聞き馴染みのある声が聞こえてきて、私の腕を掴んで引っ張る。
恐る恐る目を開けて確認するとやはり中川くんだった。
「な、中川くん……」
「行こ」
男達が油断している隙を狙って中川くんは私を引っ張ってその場から逃げる事が出来た。
リードされる中川くんの手や背中はいつもよりたくましく見えた。妙な安心感がある。
人混みの中を通りながら、でも私の手は決して離さない中川くんの後をしっかり追って逃げる事に成功した。
「雪田さん大丈夫?どこか怪我とかしてない?」
「だ、大丈夫だからそんなに身体ベタベタ触らないで……」
いつもなら殴っていたが、声のトーンや表情で本気で心配してくれている事が伝わってきた。
なんなのいつもはそんな心配とかせずにからかってくるのに。
「あ、ごめん」
「大丈夫、助けてくれてありがと」
「何もなくてよかった」
安心し柔らかい笑顔を浮かべる中川くんの顔を見た瞬間ドキッとして顔を背ける。怖かった中助けてくれた中川くんの顔を見るとドキドキする自分がいるのに気が付いた。
え、私中川くんの事好きになり始めてる……?! いやでも怖かったドキドキとかだと思うし、吊り橋効果で一時的なもののはずだよね。そうだよね。
「ごめん、俺のせいで」
「え?中川くんは何も悪くないよ?!」
「いや、女の子を一人にするって普通に考えて馬鹿だから」
「中川くん……いつも以上にキモいからそういうのいいよ」
「えぇ?!」
いつもと違う中川くんはむず痒い。今は余計に照れるからマジでイケメン優男ムーブはやめて欲しい。
「いつもの中川くんでいてよ」
その方が今は安心するし、落ち着く。これ以上は私の気持ちがおかしくなってしまう気がする。
いつもの感じになるようにおちゃらけて中川くんのほっぺたを突くとスイッチが入ったのかいつものアホ面に戻っていた。
「ハグしていい?」
「なんでだよ死ね」
いつものキモい中川くんに一瞬で戻ってびっくりしてしまい反射的に死ねと言ってしまった。
でもこれがいつもの私達だ。これが落ち着く。
ナンパ男達から逃してくれて直ぐならハグしてたかもしれない……。べ、別に落ち着くためにだと思うし。好きとかじゃないだろうし!
その後も私達はウォータースライダーを何回も滑ったりして遊びつくした。
「いやぁ疲れたけど楽しかったね」
「うん、誘ってくれてありがとね」
「こちらこそ誘い受けてくれてありがとう」
帰りのバスに乗り込み揺られていると、中川くんは余程遊び疲れたのか直ぐに口を開け、気持ちよさそうに眠っていた。
隙だらけの寝顔を晒しているので私はなんとなくスマホを取り出して写真を撮った。
それにしても楽しかったなぁ。意外と筋肉あって初めて触った腹筋はカチカチで硬くて凄かった。
流れるプールでの悪戯はびっくりしたし恥ずかしかった。
その後確か私が足をつって中川くんに助けてもらったんだっけ。
……あれ?私あの時抱き着いてたよね……ハグしちゃってたよね?!!!
思い返すと恥ずかしくて顔が熱くなってきた。幸い中川くんは寝ているのでこの顔をみられなくて済んだ。
私よりも身体が大きくて包み込まれる感じで落ち着くことが出来たんだった。
わ、忘れよう。うん、忘れるぞ。
ウォータースライダー凄く楽しかったな。楽しくて何回も何回も滑った。けど階段は毎回キツかった。
でもお昼のご飯も凄く美味しくて……ちょっと待って、私間接キスしたんだった……。
嘘でしょ、今日の私やらかし過ぎじゃない?
ハグして間接キスまでして……これもうやってる事完全にカップルじゃない?!嘘でしょ……。
迷子の子に間違われるのも無理はないなと改めて思った。
迷子の子も助けて、ナンパから私も助けてくれて本当今日は中川くんの新しい一面を見る事が出来た気がする。
「ぇっっ」
今日の事を振り返っているとバスが大きく揺れ、私の肩に中川くんが寄りかかってきた。
顔の距離が必然的に近くなり髪の毛が当たって少しくすぐったい。
「今日は助けてくれてありがとね」
本人は寝ているので届かないがそう言って頭を撫でる。
意外にもサラサラしていて触り心地がいい。
「んぅ」
か、可愛い……。
もう少し撫でていたかったけど唸り声の回数が増えてきたので撫でるのを辞める。
黙ってると普通にかっこいいと思うんだけどなぁ。口を開けば変な事しか言わない所が勿体ないと思う。
けど、そうじゃなかったらきっと私達はこんなに仲良くなってないよね。




