15〜いっぱい食べる姿が可愛い〜
「あ、ウォータースライダー行こうよ!」
「お、いいね」
先行する雪田さんの後ろを階段を登りながら見上げるとぷりぷりとしたお尻が目の前にあった。
俺は反射的に視線を下に向け見ないようにした。本当ならじっくり見たいけど、見てるのがバレて蹴られでもしたら俺死ぬ。
ウォータースライダーは四種類あり、高さがそんなに高くないものもあり小さい子も大人も楽しめる仕様になっていた。高さが違うのが三個。そして二人乗りのボートで滑るものが一つあった。
「あれ、もしかして怖いの?」
一番低い所で階段を登るのをやめ、順番待ちをし始めたので俺も後ろに並びからかう。
「そうじゃない、まずは一番低いの。次に中くらい、そして最後に高いのを滑るの」
「全部滑るんだ」
「当たり前でしょ!少しずつコースの曲がり具合とかも違うんだからね!」
「なるほど」
かなり遊ぶことにも拘る事を知り俺は良いなと思った。何事も全力で楽しそうにする雪田さんを見るとこっちまで楽しくなる。
「お先~」
先に滑った雪田さんを追いかけるように係員さんの指示が出てから俺も滑る。小学生の頃はこのくらいでも楽しめたのだろうが高校生の今は少し物足りなさを感じた。でも楽しいのは変わりない。
あれ?雪田さんどこ行った?
近くに雪田さんの姿は見当たらない。階段の方に目をやるともう次滑ろうと登り始めていた。
「おい、置いてくなよ」
「あ、ごめんごめん」
えへへとはにかむ雪田さんの笑顔には悪気はなさそうに見えたのでそれ以上何も言わなかった。
楽しんでくれてるならそれでいい。
中くらいのコースを滑り、一番高いコースも滑ると雪田さんの興奮は絶頂に達していた。
「ねぇねぇ!もう一回行ってきていい?!」
「待って、俺も行きたい」
「早く早く!!」
目がキラキラしていて年齢よりも幼く見える雪田さんも魅力的で可愛かった。そして俺も結構はしゃいで楽しんでいる。
「ねぇ次これ滑ろ!」
そう言って指を指したのは二人乗りのボートで滑るウォータースライダー。並んでいるのは親子やカップルばかりで乗っている体勢をみるとかなり密着していた。
それらが目に入っていないかのように雪田さんは早く早くと腕を掴み引っ張ってくる。すっごい胸を押し当てられるのでしょうがなく滑る事に。
「ほらほら早く!」
「はいはい」
さっさと前に座る雪田さんに急かされ後ろから股を広げて雪田さんの身体の横に伸ばすよう係員に指示される。
意図せず雪田さんの身体を足で挟むようになり、頭が俺の股間の所にある。
……これ、衝撃で俺の大事なところ頭突きされないかな。
心配する時間も少なく、係員の声と共にボートが押し出され滑り始める。
「きゃっほー!!」
一人で滑る時よりもスリルがあり中々に楽しい。回転し、前が見えなくていつ曲がるかとかもわからなくて面白い。
滑り終わると雪田さんは「もっかい行こ!」と言い始め今度は前後ろ交代してみようとのことだった。
俺が寝そべるように座ると横から白くてスラっとした脚が伸びてきた。
「よいしょ」という掛け声と共に雪田さんが乗り込み、俺の頭の上には雪田さんのあそこが……と想像すると緊張する。
「痛い、やめてそれ」
思考を読まれたかのようなタイミングで雪田さんの太ももが俺の顔を押しつぶしてきた。
もちもちしていて柔らかい中にも筋肉はしっかりついているわけで、かなりの力を入れているのか痛かった。
「こっち見ないでね変態」
「それフリ?」
「違うから!」
顔を後ろに向けようとした瞬間、また太ももで押さえつけられた。
なにこの夢の様な時間。一生続けばいいのにと思ったのだが、無常にもその時間は終わりを告げた。
「はぁ楽しいね!」
「そうだね、いい時間だしそろそろ昼ごはん食べよ」
「やたー!お腹ペコペコだよー」
一度身体を軽く拭いて、出店が並んでいるエリアに移動するとソースなどの香りが漂ってきて余計にお腹が空く。
開いている席に座りどんな出店があるのか見渡す。
「何食べる?」
「私は焼きそばとー、たこ焼きとー、ホットドッグとポテトにしようかなー」
「……食べ過ぎでは?太るぞ」
「いーの!今日はいっぱい動いたし、この後も動くし!!」
「俺それ全部奢らされるの?」
脇腹をくすぐって怒らせた時に許してもらう代わりに奢ると言ったのだが、流石にこの量は厳しい。
自分の昼ごはんも買えるかすら怪しいくらいだ。
「いや、いいよ寧ろ私が奢ったげるよ」
「え?なんで?」
「いや、その……」
まさかの言葉に目を丸くしていると雪田さんはモジモジして気恥ずかしそうに視線を逸らしゴニョゴニョと言葉を紡ぐ。
「足つったて溺れそうになった時……助けてもらったし?そ、それに中川くんお金そんなに持ってないでしょ?感謝しなさい!」
後半に行くにつれ声が大きくなり最後には何故かドヤっている。ころころと変わる表情や態度は見ていて飽きない。
「それじゃ、カレーをお願いします雪田様」
神様の様に崇めると直ぐに調子に乗った雪田さんはご機嫌になり「直ぐ買ってきてあげるから待ってなさい!」とスキップをしながら出店に向かっていった。
席に一人ポツンと残された俺は暇だったので遊んでいる人達や、昼食を食べている人たちを観察していた。
その間に雪田さんは次々と自分のご飯をテーブルに運んでいる。手伝おうかと申し出たのだが断られてしまった。
というか本当にさっき言ったもの全部注文していた。冗談ではなかったらしい。
俺のカレーも持ってきてくれたのだが、流石にまだ雪田さんが来ていないのに先に食べるのは俺とは言えども憚られたので待つことに。
「あれ、先に食べててよかったのに。いただきまーす」
「一緒に食べたかったから」
「そ」と一言、一文字だけ返した雪田さんは美味しそうに焼きそばを口に頬張る。目を細めて若干口角が上がっていて幸せそうな表情を見せる。たこ焼きはまだ熱かったのか「はふはふ」と口に空気を必死に入れながら食べていた。
こんなに食べるのによく太らずこの体系を維持できるよなと雪田さんのお腹を見ながら思う。
栄養が全部他の所に行ってると思ったがそれもない。デカすぎず、小さすぎず程よい大きさで健康的な体をしている。
いや違うな。俺の感覚が狂ってるだけで多分雪田さんは痩せている。華奢でモデルとして今からでもやっていけそうな体系をしているのだから。
それを考えるといっぱい食べるのは良い事かと一人でどうでもいい事を考えながらカレーを口に運ぶ。
それにしても若い人が多くて女の子の水着が沢山みれて眼福だなぁ。
水着姿を眺めながらの食事って贅沢過ぎるのでは?!
「いだっ!?なんで脛蹴るの?!」
突然蹴られ痛みから少し飛び跳ねる。ジンジンとした痛みが持続する中雪田さんの顔を見るとジトッとした目を向けられていた。
首を傾げると雪田さんはふいっと顔を背け口を尖らせてご飯を口に放り込んだ。
「もしかして、嫉妬した?」
「してない、うるさい」
「ふーん?」
どう考えても俺が他の女の子をみていたのに嫉妬して蹴ったに違いない。優越感があって笑みがこぼれているとムキになったのか雪田さんがたこ焼きを俺の口元に持ってきた。
「ほら、あーん」
「え、いやいいよ……」
「遠慮しないで、ほーらあーーーん」
「あ、あーん」
唇にたこ焼きを押し付けられ仕方なく食べる事に。丁度いい熱さでソースもいい濃さでコリコリしたタコが美味しい。
少し恥ずかしかったので俺もお礼を兼ねてカレーでし返す。
「カレーも美味しいよ。ほら、あーんして」
「あーん」
すると雪田さんは何でもないかのように凛とした表情で、髪を耳にかけ前かがみになり目を閉じスプーンの上のカレーを食べた。
「どう、美味しい?」
「うん、美味しい」
もっと面白い反応をするかなとちょっと期待していたが、思ったよりも普通だった。流石陽キャ。これくらいじゃ動じないってか。
俺は動じたのに……。
変なところで張り合って悔しくなっていると近くの学生のグループの話し声が耳に入ってきた。
「うわ、いいなぁあーんし合ってるよ」
「めっちゃ間接キスやん!」
「あんな仲いいカップル憧れるねー」
さっきの様子をたまたま見ていたのか羨ましそうに話していたが声が大きい。バリバリ聞こえてきて思い返すと恥ずかしくなってきた。
「…………」
雪田さんも学生の話し声が聞こえていたようで、ほんのり顔を赤くして俯いていた。




