11〜制服の上からのエプロンってなんかいいよね〜
「んっぅぅぅう!」
一区切りついたのか雪田さんが背伸びをしながら甘い声を出す。俺はそれに一瞬反応してしまうが、何とか気を取り直す。
「え?なんで答え見ながらやってんの?!」
「え?いつもの事だけど?」
急に大きな声を出すから何事かと思った。
こんな多い宿題一つ一つ真面目にやってたら集中力が持たないし、面倒臭い。だから俺は答えを写しながらやっている。
「なんでそれで点数取れるの……?」
「まぁ天才ですから」
ドヤっとしてみたら雪田さんは「まじかぁ」と若干信じそうになっていたので急いで訂正する。
「ぶっちゃけ、分かる所は時間短縮の為に答え写してるだけだよ。分かんない所は極力写さないようにしてる。そういうところは答えみて、赤で書いてる」
「結局答え見てるじゃん」
「分かんない所を何分も時間かけて考えるの面倒だし、分かんない時はどれだけ時間を使って考えても分かんないし時間の無駄だから答えをみて、どうしてその答えになったのかを考えてってしてる」
俺の考えを説明すると少し納得したのか「なるほど……」と唸っていた。
「雪田さんは真面目にいつもやってたの?」
「うん、めっちゃダルかったけど私もそれしようかな」
「いいんじゃない?真面目過ぎると壊れちゃうよ」
「そうだね、ちょっとやってみる事にする」
それがいいよ。前の俺がそうだったから、雪田さんは壊れて欲しくないし無理してほしくない。
少し休憩してから俺達は再び宿題を進めて行った。
「うえぇぇっ!? もうこんな時間?!」
「んー?」
またしても雪田さんの大声によって手を止めて言われた時間を確認すると、時刻は午後七時を過ぎていた。
「ほんとだ、外暗くなってきてる」
夏と言うこともあり、日が落ちるのが遅いが空はもう暗くなり夕陽が山に隠れ始めていた。
「中川くんが言ってたやり方、いいね!今までの倍のスピードで出来た!」
「それはよかった」
「どのくらい進んだ?」
「一個終わったくらいかな」
「まじかはやいね?!」
自分でも夏休み入る前から宿題を一個終わらせたことなんてなかったから少しびっくりしている。
そして集中が解けたのか今になってドッと疲れが押し寄せてきた。
「夜ご飯どうする?食べに行く?」
「お金ないし、俺帰るよ」
「あ、そっか……あ待って!私作るよ!」
「え?料理出来るの?」
「出来るけど!?私を何だと思ってるの?!」
そう言う人に限ってできなかったりするので疑いの目を向けると「見ててよね!」と腕を捲り、気合十分に下に降りて行った。
俺も荷物をまとめ後を追う。
作ってくれるというので帰るわけにもいかず、ありがたく頂くことにした。出来はどうかちょっぴり心配ではあるが……。
制服の上からエプロンをする姿は学生新妻感があってドキドキする。
気が付けば俺はスマホを取り出し、写真を撮っていた。
パシャリという音がしてバレたかと思ったが料理をしているからか聞こえていないようだった。
あれ……?俺犯罪者になりたくない、保てよ理性とか言ってたけどもうこれ盗撮じゃね?犯罪者じゃね……?
…………バレなきゃいいか。いや、ちゃんと許可貰おう。そうしよう。
「写真撮っていい?」
「え、写真?!なんの?」
「雪田さんの料理してる姿の」
「い、いいけど……恥ずかしいから誰にも見せないでね?」
まさか許可して貰えるとは思ってなかったがこれで心置きなく撮れるぞ!犯罪者じゃないぞ!!!!
パシャパシャパシャパシャパシャパシャ。
「と、撮り過ぎじゃない?」
「ごめんつい、料理してる姿がかっこいいしエプロン姿は可愛いくて」
「うぅぅるさい!危ないからあっち行って待ってて!」
本音を言ったら恥ずかしさからかキレられてしまった。料理に毒なんか入れられなければいいんだけど……。
料理が出来るまで暇つぶしでSNSを見ていると、近くはないがバスで行ける距離のウォーターパークが今年はイベントが多いとか何とかという記事を見つけた。結構大きいウォータースライダーや流れるプールなどがある所だ。
小学生の頃に行った事があるがそれ以来行っていないから久しぶりに行きたいかも。誰か一緒に行く人……雪田さんが視界に入り誘おうか迷うがバイトもあるんだよな。
他にも友達はいるにはいるんだけど面倒くさがって来るか分からないしなぁ。来るにしても奢れって言われるのは目に見えて分かる。
うーんと唸っていると段々といい匂いが漂ってきた。
「カレー?」
「うん!」
上手く出来たのか上機嫌だ。幼い子供のような純粋な「うん」でよくできたねぇって褒めて頭をわしゃわしゃしたい欲を必死に抑える。
「はい、出来たから食器とか出すの手伝って!」
「なんか新婚みたい」
「なっ!?いつも急に恥ずかしい事言わないで?!」
「思った事を述べるのがダメだなんて……俺に言論の自由はないのか!」
「うるさい!いいから早く手伝って!」
「はい、すんませんした」
言われた通りにテーブルを拭いたり、食器を出したりする。
「初めての共同作業……」
「だからさぁ!!はぁもう、いいや」
ボソッと呟いたが距離が近過ぎて聞こえていたらしい。何を言っても無駄だと肩を竦めて呆れられた。
言ってみたかったんだもん……。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
カレーを口に入れてモグモグと食べていると雪田さんがずっとこっちを見ていることに気が付いた。
「食べないの?」
「感想は?」
「うまいよ」
「ならよかった」
その言葉を待っていたのか、聞いて満足そうに雪田さんもカレーを食べ始めた。毒とか変な色とかはしてなくて、普通に料理が上手かった。
食材も大きすぎず、かと言って小さくもなく、固くも柔らかすぎることもなく凄く食べやすかった。
速攻食べ終わり、おかわりをすると雪田さんはちょっぴり口角を上げてご機嫌な様子だった。
「ごちそうさまでした」
「はーい」
「毎日ご飯作って欲しいくらい美味しかった」
「大袈裟、たかがカレーだよ?」
「じゃあ今度違うの作って」
「しょうがないなー、瑠奈お姉さんに任せなさい!」
今日は機嫌がいいのかやけにあっさりと承諾してくれた。今までの雪田さんなら「嫌だわ帰れ!」とか言ってきそうなのに。
自分をお姉さん呼びしているが、背はそんなに高くないのでどちらかと言えば妹だろってツッコミは今はやめておくことにした。
「あ、そういえばさここ行った事ある?」
俺は先程見ていたウォーターパークの記事の画像を見せると雪田さんは机を挟んでいるので前のめりになってみてきた。
服装が服装なら胸が見えたのに、クソッ!!
「あー、ここ何回か行った事あるよ。楽しいよね」
「そうなんだ、雪田さん良かったら予定合う日一緒に行かない?」
「え、私?!ま、まぁバイト無い日は暇だからいいけど」
「やった!ありがと。また後で連絡する」
雪田さんとプールに行く約束が出来て素直に嬉しい俺はガッツポーズをしてしまい、恥ずかしさから目を逸らして何もなかった風を装った。
しかし、しっかりとそれを見られていたので何か言われるかなって思ったがお姉さんムーブの雪田さんは微笑むだけで何も言ってこなかった。
いつもと違って何を考えているかが分からなくて少し怖かった。
食器を洗うのを手伝おうと申し出たのだが断られ名残惜しくも時間も時間なので帰る事に。
それにしても夏休み0日目から宿題を一個終わらせれて、雪田さんの手料理を食べれて、プールに行く約束も出来るなんて思ってもいなかった。
これは良い夏休みになる予感がして俺は胸を躍らせながら帰路についた。




