1〜メイド喫茶で働いていたクラスの可愛い雪田さん〜
「このこと絶対誰にも言わないでね?!言ったら許さないから。ある事ない事言いふらすからね」
「例えばどんなの?」
「中川くんに胸触られたとか、実はマザコンとか」
「どうせ言われるなら胸触るけど」
「うわ最低……」
物凄い軽蔑された目で見られるが俺にとってはそれはご褒美でしかない。クラスの陽キャで可愛い雪田瑠奈に言われるのはご褒美以外の何物でもないだろう。
うんうんと一人で勝手に頷いていると「とにかく!」と語気を強めて再度忠告してきた。
「ここで会った事は秘密にして!記憶から抹消して!!」
「分かったから……分かったからそのフォークを置いてください」
「分かればよろしい」
どうしてこんなことになったかと言うと、街を歩いていたらメイドさんから割引のクーポンを貰ったのが始まりだ。
元々アニメは好きでよく出てくるメイド喫茶に行く事に憧れていた。けれど中々勇気を出せずにいたのだが、このクーポンをきっかけに行ってみる事にしたのだ。
するとそこでバイトをしていたのがこの今頬を赤くして「萌え萌えキュン」と嫌そうに言っている雪田瑠奈さんだったってわけだ。
「ごゆっくりどうぞご主人様?」
クラスの子からご主人様呼びの破壊力は凄まじいがその声のトーン、表情は「ゆっくりすんなはよ帰れ」と真逆の事を思っていそうだが俺も折角来たんだ。ゆっくりさせてもらうさ。だって可愛い女の子がいっぱいいるしもっと眺めてたいじゃん? 同じ空間で同じ空気吸ってたいじゃん?
自分でも分かっているが大分キモいな。でも本心はそうだし嘘は体に良くないしね!
フリルのついたミニスカートで太ももがチラチラと覗く。ニーハイのお陰で見えている脚に味が出る。着る人によって可愛くも、清楚にもセクシーにも見える。でも共通してみんな太もも最高です。
それにしてもウマウマ。
「かえれ」とケチャップで書かれたオムライスをメイドさん達を眺めながら食べるのは最高だ。雪田さんがこんなところで働いているのは流石にびっくりしたが、可愛いから納得。いいと思う。可愛いし。うん、可愛いしね。
雪田さんに認知されているとは思っていなかったので少し嬉しさを感じつつ変態という認識をされたかもしれなくて少し残念。間違ってはないけど。
ある事ない事を言いふらされるのは今後の学校生活に関わってくるのでやめて欲しい。俺がこの事言わなければいいんだもんね。可愛いメイド姿を皆に共有したいけど我慢。寧ろこの姿を知ってるのは俺だけという優越感に浸ることが出来る。俺にとっては誰かに言う必要もないね。
オムライスを食べ終わってまだこの空間にいたい俺はまたメニューを見てみる。
チェキ……撮るか。少し意地悪したい気持ちもありチェキを撮る事にした。
「お待たせしましたご主人様、いかがなさいましたか?」
雪田さんは別のお客さんの対応をしていたので他のお姉さんが来てくれた。この人も可愛い。働いてる人全員とチェキ撮りたいと思うくらい全員可愛いし美人だしで何なんだよここ。異世界かよ。
「メロンソーダ一つ。あと、チェキを瑠奈さんと」
「かしこまりました。少々お待ちください!」
どんな反応するか楽しみにしながら待つこと数分。
「準備できましたのであちらに移動お願いします」
チェキを撮る場所があるらしく、そこに移動すると少ししてから雪田さんが「お待たせしました」と笑顔で来た。
のだが俺の姿を見た瞬間「げっ」と声を漏らし嫌そうな顔をする。
隣に立つと「なにしてんのキモいだけど?!」と声を抑え気味に怒ってきた。
「記念にと思って」
「はぁもう分かったからこれで帰ってよね。ポーズは何にする?」
「ハートで」
お互いの片方の手を合わせて二人でハートを作るポーズだ。「キモ」と反射的に罵られた。
「それじゃ行きますよー!3、2、1」
その瞬間俺はハートのポーズを崩してサムズアップする。
パシャリと音がして撮影係のメイドさんがクスっと笑っていた。
「ちょっと?!普通逆でしょ?!もう……」
「ありがとうございました」
面白い反応も見れたことで満足して俺は席に戻り、メロンソーダを女の子を見ながら味わった。
もうすぐ飲み終わる頃に雪田さんが印刷されたチェキを持ってきてくれた。
「はいこれ、誰にも言わないでよね」
「大丈夫、言わない」
「ならよかった」
受け取ったチェキには可愛らしい文字で「秘密だよ?」と書かれていた。クマのようなイラストの吹き出しから「言うなよ」と釘を刺される。
「ありがと、大切にするね」
「するな!燃やせ!」
「嫌です」
お支払いをして名残惜しいけど帰る事に。割引クーポンを使ったとはいえ中々にいい値段した。
「「「行ってらっしゃいませ、ご主人様」」」
一人だけ二度と来んなって表情のメイドさんいるけどね。
予想よりも楽しかった。クーポンを貰わなければ一生行く事はなかったかもしれない。クーポンくれたメイドさんとの出会いに感謝です。
やばい、メイド喫茶思ったよりもハマりそう。色んな人と話してチェキ撮りたい。でも頻繁に行ってたらお金が無くなるからな。また行くけども。
休みが終わり学校が始まる。教室に入ると既に皆登校しており会話に花を咲かせていた。その中に雪田さんの姿を見つけると思わず目が止まってしまう。メイド服姿を思い出して俺は少しの優越感に浸る。
すると視線に気付いたのか雪田さんはこっちを見ると目を細めて睨んできた。
こっち見るな、バラしたら分かってるよな?と言われている様な気がした。俺は怖い怖いと思いながら視線を外し自分の席につくのだった。
〇side雪田〇
休日にメイド喫茶で働いている事をクラスの中川春樹にバレた。あろうことかチェキまで撮りやがったのだ。
まぁバラそうものなら私にも考えがある。クラスのみんなと仲がいい私と目立たない至って普通の中川くんどっちの言う事を信じるかは言うまでもないだろう。
それにしてもこの前が何気に初めて喋ったけどあんなにも変態だとは思わなかった。むっつりスケベでちょっと引いた。
朝から視線を感じたけどそれ以降は特に何もなかった。バラさないか不安で休み時間席を立つ度に尾行しちゃっていた。
学校が終わり、さっさと帰ろうとする中川くんの後を私も急いで追いかける。
廊下の角を曲がったところで中川くんのポケットから何かが落ちたのが見えた。
なんだろう、あのサイズ。ちらっとみえたのは人の顔の様なもの。……もしかして?!
近くにいた人が落ちたものに気付いて拾おうと近付こうとする。私は急いでその人よりも先に落としたものを拾うと中川くんの後を追う。
確認するとやっぱりチェキだった。
「なんで持ってきてんのよ」
私がハートマーク作ってんのに中川くんはサムズアップしている俗にいう片想いポーズみたいになっているチェキを見てイラっとする。
なんでだよ、普通逆だろ!ほんとにもう!腹立つぅぅぅ!!!!
「おい中川くん!」
中川くんに追いつき声を掛けると「んぁ?」と気の抜けた返事と共に振り返る。
「どうしたの雪田さん」
「どうしたのじゃないわ。こ、れ!落としたよ!」
語気を強めながらチェキを渡すと「あ、ありがとう」と思ったより素直にお礼を述べてきた。
「まじで危なかったんだからね、気を付けてよ本当に」
「ごめん」
「てかそんなの学校に持ってくんな!」
「いやだって大切な物だからずっと持ってたくて」
真面目な顔で言われ私は思わず動揺する。
「あ、あっそ」
大切と言われ少し嬉しいと思ってしまった自分に気付き、素っ気ない返答をしてしまった。
「それじゃ私はこれで」
「うんバイバイ」
そう言って手を振り私が帰るのを中川くんは見送ってくれた。
ちょっと待ってなにバイバイってちょっと可愛い……?
そんなこと思ったのは絶対に内緒。