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ただ眺めているだけの聖女

あぁ、神様


わたくしは、ただ眺めているだけでした。


黒に紛う程の濃紫の髪と瞳を持ちながら、ただ眺めているだけでした。


紫が濃い程魔力を秘めると言われるこの国で、生まれたときから、聖女と一族から崇められ、「全てを見ること。何が起きて、どうなったのかを見ること」ただ、それだけを求められた、何もしない名ばかりの聖女でした。


わたくし、クリスティーヌ・フォン・ジュネルブは、ジュネルブ辺境伯の第三子にして、長女として生を受けました。


ジュネルブ家の祖は、伝説の聖女と名高いマリアンナ様の次男のファブルと伝えられています。


ジュネルブ家は魔力を持つ紫の色素を輩出する家系でしたが、マリアンナ様の様な黒に紛う程の濃紫を持つものは、何代かに一人現れるかどうかというものでした。


ジュネルブ家は男系家系で、男ばかりが産まれる一族でしたが、稀に女の子が産まれることがあり、大体は濃紫の色を持っていたと聞きます。


そして、必ず一族を救う聖女になったと。


それなのに、わたくしは、ただ眺めているだけでした。


父と兄が戦いで亡くなった時も


もう一人の兄が毒殺された時も


母が流行り病で亡くなった時も


一族が無実の罪をなすりつけられた時も


弟が目の前で処刑された時も


王太子の婚約者でありながら、全てを失い続けたわたくしは、何もしないで、ただ眺めて一族の滅びを見ているだけでした。


聖女を騙った、王太子を、誑かした罪で、流刑地へと、粗末な馬車で運ばれるこの時も。


山の頂上で、馬車ごと転落する、この時でさえも。


ただ、最期の時まで目を見開いて眺めているだけでした。


あぁ、神様

一つだけ願いが叶うならば、最期に一目だけ・・・

一目だけ・・・

あの方に会いたい



















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