田村仁の、男の見せ所③
「信じてくれますか?」
動物と話せるだって?ハハハッツ。面白い。
「はて、寄木さん。意外ですね。冗談がお好きとは」
寄木さんが雀の方を見る。雀も寄木さんを見つめる。
「どうしよっか?」
「ピー」
「え?うん。うん」
「ピー。ピー」
「ほー。ほー」
凄い。まるで、本当に雀と会話をしているように見える。随分と調教されているように見える。
雀がまっすぐに寄木さんの目を見て「ピーピー」鳴いていて、それに頷いて応える寄木さん。
「えーっと…。田村さん」
「はい。何でしょうか?」
「誰もいない教室で、いつも一体誰と会話をしているんですか?動物達が「ヤバいやつがいる」って噂になってるみたいですよ」
「え、え、え、な、何故、そ、れを?」
「動物達に見られてます。この子が教えてくれました」
「チュン!」
なんと恐ろしいことだ。人に見られないよう注意は払っていたが、まさか、動物が見ているとは…。
「チュン!チュン!!」
「え?そんなことを田村さんが?ま、まさか…」
今度は何だ?何を見られていた?
小生が一ヶ月前、道端に落ちている大人の本を拾ってしまったことか?
それとも、缶ジュースを買ったときに、釣り銭返却口にが100円入っていて、それでもう一本ジュースを買ったことか?
いやいや、分かった。テストが嫌で試験日当日に学校に自分で電話して、胃腸炎になったので休みますと嘘をついたことか?
結局、別の日にテストを受けさせられたが…。
「田村さん…この子が教えてくれたのですが」
「わーーー!分かりました!!寄木さん!あなたのことを信じます!」
「協力してくれますか?」
「勿論じゃないですか。やりましょう。男に二言はありません」