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田村仁の男の見せ所①
「た、田村君。ちょっと、いいかな?」
昼休み。小生が図書室で本を読んでいると、名前を呼ばれて振りむいた。そこに寄木さんが立っていた。
そう言えば、寄木さんとは先週のあのバスでの一件以来である。相変わらず寄木さんの目は、前髪で綺麗に隠されている。
「急にどうしたんです?」
「あの…ちょっと相談に乗って欲しいことがあって」
「小生にですか?それはお目が高い。小生なら何でも解決できることでしょう。何がお困りなんです?」
滅多に人に頼られることがないので、嬉しい限りである。
「実は…この前バスで絡んできた人いるでしょ?あの人、帰り道にいるんです…」
「な!」
大きい声が出てしまった。
ここは図書室。他の生徒たちの目が小生たちに向く。
「く、詳しい話は外で聞きましょうか」