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田村仁の独り言③

「ありがとうございます!本当に怖かったので助かりました」


「もうええってー。そんなに謝らんといてよ」


「制服。同じ高校ですよね?私一年生の寄木愛です」


「同じ一年やん!私は来栖一葉。よろしくね」


「しょ、小生は…」


「え⁉同じ一年なんだ。てっきり先輩なんだと思ってた。なんでそんな堂々としてるの?さっきの人、大丈夫?仕返ししてきたりしない?」


「まぁどうやろなー。大丈夫ちゃうかな。万が一仕返ししてきたら、それこそほんまに警察に動画渡すで」


なるほど。来栖さんの中に特に対策があるわけじゃないらしい。心配である。


「寄木さんは何組の人なんです?」


「私は三組です」


なるほど。


寄木さんは喋れば普通なのだが、見た目だけだとかなり大人しそうな人物に見える。


背が小さく、全体の線が細いからだろうか。制服を着ていなかったら年下だと誤解されるぐらい弱々しい。前髪が目にかかっていて、表情が見えないのも、そんな見た目を助長しているように思える。


「私、昔から絡まれることが多くて…」


「うーん。おでこ、出してみたら?前髪で目が隠れてると、大人しく見えるで。それ変えるだけでだいぶ印象変わると思うけど」


「そうかな…。でも、この方が落ち着くし…」


小生は勝手ながら、寄木さんのオーラを視てみた。ふむふむ。


ほっそいオーラだ。


首の根っこのところから、薄い黄色の紐みたいなオーラがゆらゆらと上に上に伸びている。直径五ミリぐらいの、糸状のオーラだ。


こんなに細いオーラは中々見ない。更に目を凝らし、そのほっそいオーラを視てみると、黄色いオーラの中にピアノ線ぐらいの赤いオーラが視える。


オーラは内面の生き写しだ。オーラから寄木さんの人柄を読み解くと、ずばり「極度のビビり」だ。自分に自信がないが、根っこの部分はしっかりと自分の主張がある。


内弁慶なのかもしれない。家だと全く違う寄木さんなのだろう。


ちなみに、来栖さんのオーラは相変わらず大洪水のように勢いよく上に流れていて、寄木さんのオーラが見えにくかった。


「綺麗な顔してるんやから、もったいないで。ほら」


来栖さんが、ゆっくりとした動作で寄木さんの前髪を横に流した。


寄木さんは嫌がることなく、目と口をきゅっと閉じる。


「ほら。この方が見えやすくない?」


寄木さんが目を開く。


「おー」


小生は思わず声を出してしまった。


まず思ったのは、「なんと大きな目」だった。


そして、彼女の左目が青いのに気が付いた。オッドアイだ。真っ青な左目で、吸い込まれそうだ。うん。すごい。寄木さんは誰がどう見ても美人さんは人であった。


「き、気持ち悪いでしょ。アハハ」


「なんで笑うん?めっっちゃ綺麗な目してるやん。と言うより、寄木さんめちゃくちゃ綺麗な顔してるなー。アイドルみたい」


「そ、そんなことないよ。クラスの子たちも気持ち悪いって言ってるよ」


寄木さんが笑いながら前髪を戻してしまった。大人しそうな寄木さんに戻った。


「あんなー。寄木さん。あんためちゃくちゃ可愛いで。気持ち悪いとか言うの、全員女子やろ?」


「…うん」


「あのな。それ、ブスのひがみやで。寄木さんがあまりに可愛いから、ブスが必死に足を引っ張ろうとしてんねん。そんな戯言に付き合ってるほど、高校生活は長くないよ。可愛く生まれたなら、その可愛さを存分に楽しまないと、神様にも両親にも失礼やで。可愛く生まれたことに感謝しないと」


うむ。確かに男子ならば寄木さんと仲良くなりたいと思う人が多いだろう。こんな身近にアイドルみたいな女子がいるとは驚きだった。


「おお…」


思わず声が出てしまった。


寄木さんのオーラが、少しだけ、ほんの少しだけ太くなった。


人のオーラの色が変わることは基本的ないが、オーラーの量が変わることはある。自分に自信が出たり、心が愛で満ち足りしたときだ。だが、そんな変化はあまり多くない。そんな光景を目の当たりにするのは奇跡に近いのだ。


寄木さんの心が少し変化した光景を見て、思わず声が出てしまった。


圧倒的人間力。来栖さんの他者に与える影響力に脱帽してしまう。酔っ払いのおじさんを追い払い、たった数分で寄木さんの心を動かせたその力。そして無限の湯水のように湧き続ける黄金のオーラ。


凄い。


こんな人間を見たことがない。


身体が震える。鳥肌が止まらない。目の前にとてつもない人物がいるのだ。しかも同じクラス。小生はなんと恵まれているのか。


「あ、そう言えばさ」


来栖さんが僕を見た。心臓がぎゅっと掴まれたような気持ちだ。


「さっきから参加してるけど、君、誰?」


二人とも小生を見ている。


な、なるほど。まずは自己紹介から始めなければならないようだ。

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