表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

1-7

「あ、あの…」

 アリスの前で、恥ずかしそうに『彼女』が俯いていた。


 アリスの紫の部屋の隣には小さな部屋があって、紫の部屋の中が見れるようになっていた。

 ナイト曰く、紫の部屋からはこっちは見えないらしい。何かトラブルがあったらいけないから、来客の時はよくこの部屋にいるとのこと。

「やっぱりナイトさんのナイトって騎士なんですね」

 そう僕が言ったら、ナイトは少し顔を赤くして、首を横に振り、唇に人差し指を当てた。

 そうだった。来客中。私語は厳禁。僕は気を引き締めて隣の部屋を観察することにした。


『彼女』の前のアリスは、紫の布に包まれていて、僕からその表情は窺い知れない。

「予約が取れて、びっくりしているのですが…」

 恐る恐ると言った感じで、『彼女』が言う。

「本当に1万円で占ってもらえるのですか?」

 あれ?と僕は声を出さないように口を押さえながら首を傾げた。今回、僕はこの件で動いていたはず。バイト代で計20万円は受け取っているし、住まいに食事も…。どういうことだろう。まったく計算が合わないと思うけれど。


「ふふふ…」

 いつもより低めの笑い声がアリスから漏れて、僕は我にかえった。

「『アリスの館』は占いはあたるが、価格が高い、という()があるのは知っていますよ」

 僕もその噂は知っていた。だからこその僕のバイト代だと思っていたんだけど。

「ふふふ…価格は占い内容によって、適正価格でやらせていただいていますよ」

 だから心配しないでください、と言うアリスの言葉に『彼女』はコクコクと頷いていたけれど、僕はなんだか納得できないものを感じていた。

「それでは占っていきましょう」

 アリスは、ブツブツと呟きながら手を掲げ、そして、ポツポツと語り出した。


「きっと上手くいくことでしょう」

 やがて、アリスがそうまとめると、『彼女』はありがとうございました、とテーブルに頭をつけんばかりに下げると、嬉しそうに去っていった。


 翌日、飯田と大学帰りにカフェでコーヒーを飲んでいると、『彼女』が現れた。店は満席。だけど僕らは4人席に2人。

「あの…ご一緒してもいいですか?」

「うん、もちろん。吉野(よしの)さんだよね」

 宇佐も問題ないよな、と言われた、僕は慌てて頷いた。

 『彼女』・吉野は、飯田の言葉に嬉しそうに微笑むと、飯田の向かい側に座る僕の隣に腰掛けた。


 それから1週間後、飯田の隣には、吉野の姿があることが多くなり、僕はなぜか少し寂しさを感じるようになった。

 そして、そうこうしているうちに、8月になり、僕は長い夏休みに突入した。

第1章終了です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ