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1-3

 この日のランチはパスタだった。ちゃんと僕の分も準備されていた。ありがたい。

 基本は朝夕はナイトが作ってくれるご飯をいただいているが、こうして昼もいたりしたらなにも言ってなくても自然と僕の分も出てくる。

 これで年下なんだよなぁ、ってことは高校生?なんて思っていたらいつのまにかナイトのことをまじまじと見てしまっていたらしい。不機嫌そうなナイトの視線とぶつかり、僕は慌ててパスタを食することに集中した。

 あぁ、美味しい。


 至福のランチタイムが終わると、僕はナイトが皿などを片付けようとするのを手伝おうとした。すると、「ラビットは、座っとけ」とナイトに言われて、大人しく座る。そう言えば先日片付けようとして盛大に皿とコップを割ったばかりだった。その時は「怪我してない?」とアリスに優しく声をかけられ、いつのまにかナイトによって割れた残骸は消え去っていたが、大いに迷惑をかけてしまったのは間違いない。余計な仕事は増やすまい。


「でね」

 ランチを終えたら早速さっきの続き。アリスはタブレットに映し出される彼の写真を僕に見せながらニッコリと笑った。

「ラビットは彼の行動をしっかりチェックしてね。あ、でも『アリスの館』の関係者ってバレたらダメだからね」

 それからそれから、とアリスが注意事項をまくし立てるから僕は急いで手帳に書き記した。それにしても…。

「なんで?」

 なんで占いのハズなのに、こんなことをするんだろう。気付いたら疑問が口をついて出ていた。

「だって」

 アリスは僕の疑問の意味がわかったようで、口を尖らせた。

「万が一、ってあるでしょ。占いでは上手くいくって出ているけど、失敗したらイヤじゃない。信用第一よ!」

 そこまで占いを信用するものだろうか。占いはあくまでも占いだと思うけど。そんな僕の思いがアリスに伝わってしまったのかもしれない。

「とにかく『アリスの館』は信用を裏切ることはしないんだから、ねっ」

 わかった?と力強く机を叩かれたら、僕としては頷くしかない。

「アリスは次の占いでもしてろよ。こっちはラビットと2人で進めるさ」

 ナイトの言葉に、じゃあよろしくねー、とアリスは手を振って、あの紫の部屋に帰って行った。


「どうしたらいい?」

 アリスが去って行って、僕はナイトに恐る恐る尋ねた。行動をチェックする、と言われても、何をどうしたらいいのか見当もつかない。ずっと付き纏ったりしたら不審者でしかないだろう。下手したら退学?そんなことになったら…父の不機嫌そうな姿を想像して思わず身震いした。

「簡単だろ」

 ナイトが呆れたように腰に手をやった。

「ラビットとこいつは同じ大学の同じ専攻なんだろ。友達になればいいだけだろ」

 難しいことをいとも簡単なことのようにナイトは言い放つ。

「と、友達…」

「まさか、友達のなりかたがわからないとか言わないよな」

 そこまで面倒はみきれないぞ、と言われ、僕はじっと下を見た。

 お、教えてほしい…。


 馬鹿にしたかのようなナイトの視線から逃れた僕は『アリスの館』の3階にある書庫に救いを求めた。ここにはありとあらゆるジャンルの本があるから、自由に読んでいいよ、とアリスが言っていたから、きっと僕が探している本もあるに違いない。

 書庫の中の棚を隅から隅まで探して、そして僕はついに見つけた。

『友達の作り方』

 書庫の奥の棚の隅っこでようやく見つけたその本を手に取ると、僕は必死になって読んだ。

 繰り返し繰り返し読んで暗記できた、と自信がついた頃には、もう朝がやってきていた。


 目を擦りながら2階のダイニングに行くと、既にアリスとナイトが座っていて、テーブルにはご飯や味噌汁から湯気が上がっていた。

 アリスが僕を認めて立ち上がった。

「おはよう、ラビット。はい、これ昨日の分」

 アリスから封筒を渡され、僕は中を確かめた。

 2万円。初めてのバイト代だ。

「今日もよろしくね」

 感慨深くお札を見つめる僕にアリスは笑顔でそう言った。

 うん、頑張ろう。


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