3-2
なんだか変な感じだ。
たった1ヶ月ちょっとでしかなかったのに、アリスやナイトと顔を合わせないことに違和感を感じる。
今頃彼らは何をしているだろうか。
そんなことを思っても仕方がないけれども。
それにしても…母が勝手にアリスに誕生日プレゼントを贈っていたなんて…。なんだか釈然としない。いや、何か送りたいものを思いつくどころか、パーティに行くまで誕生日すら知らなかったけれど。
なんかいいものないかなぁ。
気がつけば、部屋のソファーに寝転び、千代に「夕食のお時間です」と呼びにこられるまでゴロゴロしていた。
ダイニングに行くと、父も帰ってきていた。
「帰ってきたのか」
チラリと僕の方を見ると、特に興味なさそうにすぐに視線は他へ向かった。
まぁ、そうだよね。想像通りだ。特に期待などしていなかったよ。
「いただきます」
とりあえず、ちゃんと夕食はいただく。
美味しい。
僕が好きな物が多いし、以前より品数が多い気がするけど、気のせいかな。
チラリと千代に目をやると、意味ありげな笑顔が返ってきた。ありがとう、千代。
だけど。間違いなく美味しいはずの夕食なのに、何か物足りない。
「それにしてもよかったわ」
母が食後のコーヒーを一口飲んで、そう言って微笑んだ。
「ちゃんと上手くいっているみたいだし、こうしてまた自分で帰ってきたし」
何が上手くいっているというのだろう。母の微笑みに何故か僕は嫌悪感を感じた。
「あとは…どうだったかしら…?」
母は僕の様子に気を配るでもなく、そう楽しそうに呟いた。
父はそんな母にチラリと視線をやったが、コーヒーも飲み終わったらしく、かつてと同じようにそっと席を立ってリビングの方に消えて行った。
「そうだわ、アレを持ってきて」
父が席を立ってもいつも通り母は気にする様子もない。このタイミングで僕も席を立ってしまえばよかった、が、タイミングを逸した。
千代が母に小さな箱を渡した。
「これは、あなたの分よ」
母に渡された箱の中には、いかにもアリスのネックレスとペアです、と主張せんばかりペリドットとダイヤモンドが埋め込まれたネクタイピンが入っていた。
「ふふっ、二人並んでつけているところを見たいわぁ」
もう、大学生にもなって親から押し付けられたペアのプレゼントを喜んでつけると思っているんだろうか。うーん、思っているんだろうなぁ。
抵抗するのも面倒なので、僕は黙ってネクタイピンを受け取った。
あれ?こんな母だけど、たしか飯田には憧れの存在なんだよなぁ。
そう思うと、なんだか笑えてきそうだ。
思わず顔が緩みそうになり、僕は慌てて気を引き締めた。
そんな僕を母が怪訝そうに見てくる。
母が座る向こう側に、ダイニングに似つかわしくない大きな水晶玉がその存在をやたらと主張していて僕は思わず顔を背けた。




