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ブラック企業を包み込む翼

作者: あま

「本日は急な取材依頼を受けて下さり、ありがとうございます……」

「いえ、それでは始めましょうか」

 『ツバサ・ブラックキギョウ』という名称をご存じだろうか。

 これは、ブラック企業を『餌』として食らう【怪鳥】の俗称である。

 それは、とてつもなく大きな黒い翼を持つ鳥らしい。遠目には四枚の黒い翼しか見えない為、鳥ではなく怪『蝶』ではないか――と言われた時期もあったそうだ。

 ツバサ・ブラックキギョウは、己の餌となるブラック企業に狙いを定めると、四枚の黒い翼で建物を丸ごと包んでしまう。

 そしてツバサ・ブラックキギョウが翼を広げて飛び立った後は、何もない更地になるという話だ。


 ところで、ツバサ・ブラックキギョウはどうやって『ブラック企業』を見分けるのだろうか。

 ある鳥類学者によると、ツバサ・ブラックキギョウは生き物の体温を視覚情報として読み取っているのだと言う。

人は緊張状態に陥ると、体温が下がる。不摂生な生活が続くと、身体が冷える。

 

 よって『ツバサ・ブラックキギョウは体温低下が著しい人間を複数収容している建物を【餌】として選別しているのではないか』とまことしやかに囁かれた時期があった。


「つまり、建物の中を暑くしておけばいいのだな!」


 そう言って、室内の暖房をフル稼働させた結果、あっさりとツバサ・ブラックキギョウに喰われた民間企業の話はさておき。

 至って単純に、この怪鳥を人々がどう受け止めるかについて考えてみよう。


『ツバサ・ブラックキギョウは、どのような存在であるか』


 まず、職場で働き疲れた人にとっては「全員道連れにしてきえたい」という願いを実現してくれる救世主。

 職場に満足している人にとっては、望んでもいないのに職場ごと自分たちを『餌』にする災厄。

 つまり結局の所、ツバサ・ブラックキギョウの捉え方は人それぞれなのだ。


「――さて、随分長々と語ってしまいましたが、自分はそろそろ失礼させて頂きます。

 どうやらツバサ・ブラックキギョウが、卵を産み落として行ったらしいので。

 早速現地へ行って色々調べて来ます。

 ――ええ、そうです。あれがこの国に卵を産み落とすことはとても珍しい。

 ――いえ、雛は生まれません。生まれるのは、元・ブラック企業ですよ。

 さしずめ『新生・ホワイト企業』と言えばいいですかね?」


 《終わり》

生まれ変わり

「さて――あなたがたの職場は、ツバサ・ブラックキギョウの目にどう映るでしょうね?」

「……」

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