信じてほしい
「どうして⁉︎」
「正直突然そんな事言われても困るわよ、それと友達はちゃんと選んだ方が良いよ・・・私といるとあなたに迷惑が掛かるかも知れないし・・・」
「・・・そんなの迷惑かどうかなんてわからないじゃないか!」
「わかるよ・・・私は魔力無しで生まれて・・・何も持たない出来損ないだからって理由でゼロって名付けられたんだよ」
魔力無し・・・つまりこの世界で6つある属性を得られなかった龍がいたって事なのか・・・?
そんな事がありえるのだろうか・・・?そうだ、もしかしたら母さんに相談したら[何故ゼロが魔力を持たずに生まれたか]原因がわかるかも知れない。
「・・・そういう事だからもう行くわね・・・さよなら」
「あっ、ちょ、ちょっと待って、お節介かも知れないけど僕の母さんだったらもしかしたらゼロが何故魔力無しなのか原因がわかるかも知れないんだ」
「・・・今更原因がどうとか知りたくないわよ、それに、仮に原因がわかったからといってあなたが何とかしてくれるの?」
「・・・もちろん原因がわかったら僕は喜んで協力する、仮に原因がわからなったとしても僕は絶対に魔力無しだからといってゼロを傷付けないと誓うよ!」
そう言うと、ゼロは先程までの淡々としていた態度から少し感情的になり今まで溜めてた不満をぶつけるかのように僕に叱責した。
「もうほっといてよ!なんで今日出会ってばかりの私にそんなに構ってくるのよ!
あなたは生まれてすぐ崖から落とされたことがある?死のうと思って舌を噛み切っても死ねないし、餓死しようとしても逆に身体は大きくなるし、あなたはそんな辛い事経験したことないでしょ?
それ以外にも辛い思いは山ほどあるけど、私がどれだけ辛い思いをしてきたか、知らないくせに無責任な事言わないで!」
確かに、自分で無責任な事を言っている自覚はある。
生まれてすぐに崖から落とされた事もなければ、自害しようとも思った事もない。
きっと自分には想像できない様な辛い経験をしてきたのだと思う。
だけど、今まで話しかけても返事すら返さない他の龍とは違って、ゼロは僕が挨拶をして名前を聞いてもちゃんと返事を返してくれた。
突然の事で驚いてしまったという事もあるだろうけど、それでもそれが僕にとっては本当に嬉しかったんだ。だから、
「・・・今すぐに僕の事を全て信じろとは言わない。だけど僕は本気でゼロと友達になりたいと思っているんだ!今はそれだけでも信じてくれないかな?」
そう言うとゼロは僕から目線を逸らし後ろに振り向き、自分の翼で顔を覆った。
泣いているのか怒っているのかわからないが、ゼロの身体は少し小刻みに震えていた。