プラナと出会う
あれから約2年程が経った。
「ふぁぁ〜もう朝か・・・、早いな〜・・・。」
朝、目が覚めると今自分が暮らしている洞窟の中で欠伸をして、その後湧き水を飲んで乾いた喉を潤す事が日課になっていた。
この2年間、私はどうしたら元の世界に帰れるのか、そればかり考えていた。
人間の身体のように自分の身体の何処かを傷つけて出血多量で死んでやろうと思ったが早々に諦めた。
そもそも自分の身体はドラゴンの硬い鱗で覆われていて、自害しようと思い切り岩に頭をぶつけても擦り傷程度しか付かないし、舌を噛み切って死のうとしてもドラゴンの生命力が強すぎるせいかすぐに舌が再生してしまう。
何も食べず餓死してしまおうとして1年間何も食べないで過ごしていたがこの身体、何も食べなくても生きていけるらしい。
それどころか逆に身体の方がどんどん大きくなって成長していっている。
もしかしてあの[伝承の加護]とかいう光る玉って身体の成長を促す力も含まれてるんじゃないかと最近思い始めた。
ほぼ死なない身体になっていて落ち込んだりもしたが、悪い事ばかりではない。そう、[伝承の加護]の特典だ。
[伝承の加護]はこの世界の一般常識程度の知識を私に与えてくれていて、それによるとこの世界にはドラゴン以外にも他の生物も存在しているらしい。
魔族、精霊、人間、他にもいろんな種族がいるらしく、その中でも私は前世では人間だったこともあるので人間の国にすごく興味を持った。
ドラゴンの姿では受け入れてもらえないかもしれないが、それでも行ってみたい。
その為にはこの渓谷を抜け出さないといけない。
だが、この渓谷は結界という見えない壁に覆われていて渓谷の出口まで近づいても結界のせいでそれ以上先には進めなくなっていた。
「私、本当にこれからどうしたらいいんだろう・・・。」
普通、アニメやラノベに出てくる異世界転生者と言えば転生者に優遇スキルがあったり、『ステータス』って言えば自分の能力が数値化されて表示されたりするものだと思っていたがそんな物は一切ない。
生まれてすぐに『魔力無し』って事で産みの親にすぐに崖から落とされて捨てられるし、試しに『ステータス』って言っても何も表示されない。
身体がドラゴンってだけでいい事なんてありゃしない。
だが、問題はそれだけじゃない。
「今日は新しく拠点になりそうな所を探しに行こう。」
今いる洞窟は、私の身体が大きくなってきているという事もあり段々と狭くなっていた。
それに私は他のドラゴンが怖くて、この近くを通ってもすぐに森の茂みに隠れたり洞窟に引きこもったりしていたのだが、流石にここまではいけないと思い、勇気を出して新しい拠点探しに行く事に決めた。
まずは私が崖から落とされて倒れていた場所まで移動したがやはり拠点になりそうな洞窟も無ければドラゴン一匹すら出会わない。
おかしいな。一日に二〜三匹はドラゴンが空を飛んでるのを見るのに今日に限ってはまだ一匹も見ていない。
少しばかし休憩しようと近くの川まで移動し川岸で水を飲んでいると、向かい側の川岸に一匹のドラゴンが空から降りてきた。
私と同じくらいの大きさだがそのドラゴンの身体は左右で色が分かれていて、右半身が白金色、左半身が黒と変わった特徴をしていた。
川の水を飲みながら様子を伺っているとたまたま目が合ってしまった。
ヤバいと思い恐る恐る後ろに後退りしようしたその瞬間、向かい側のドラゴンが私のすぐ横まで飛んで移動してきた。
「はじめまして、僕の名前はプラナ、君の名前は?」
突然声をかけられて驚いてしまったが私は不本意ではあるが『今の自分の名前』を使って返事を返した。
「・・・ゼロ・・・私の名前・・・」
それが私の生涯の相棒となるプラナとの出会いだった。
次回からプラナ視点に戻ります。