3話
「真白、体調はどうだ?」
軽くノックをし、病室に入る秋斗。
「大丈夫だよ。それより入学式どうだった?」
秋斗に向けて、朗らかな笑顔を向ける少女
彼女の名前は月白真白。
名前の通り、病的な白さと儚さをもつ神秘的な少女だ。
テレビで見る女優とは比べ物にならない美しさをもつ少女が、月白真白だ。
「真白がいない入学式なんてつまらない以外何でもないよ」
「もうっ!それ中学の頃からいってるじゃん!」
「真白は俺の命より大切だからな」
「.......そんな恥ずかしいこと平気で言わないで」
頬が染まり、秋斗に聞こえないくらいの声でつぶやく真白。
「きっといつの日かは、一緒に同じ道を歩いて学校に行けるさ」
秋斗はそう言い、真白の手を握る。
生気を感じない冷たい手を
「うん。いつの日きっと」
2人は優しい笑顔で見つめ合い、しかしそれと同時に隠しようのない悲しさが顔に出る
「この前話した猫カフェの写真撮ってきたよ」
どうしようもない悲しさを紛らわせるため、新しい話題を放す秋斗。
「わあぁ、可愛い!」
秋斗のスマホ覗き込み、瞳をキラキラさせる真白
「この写真は、ご飯をあげてる最中に寝落ちしてしまった猫だな」
「ふあぁ、可愛すぎるっ!」
とても嬉しそうにはしゃぐ少女
「(真白のために一人で猫カフェ行った甲斐があったな)」
周りがカップルや友達と来ている中、自分だけ独りとはなかなかにこたえたがな。
だが、真白が少しでも喜ぶことなら、何が何でも叶えてやる
それぐらいしか、俺にできることは無いのだから
優しい時間が2人を包む
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「そろそろ帰る時間だね」
「.......」
外はきっと綺麗な茜色に染まっているだろう
「私に会いに来る頻度もっと減らしてほしいな。秋斗には今しかない大切な時間があるんだから、私ばかりに時間を浪費しちゃメっだよ」
「っっっ!」
溜まらず秋斗は優しく真白を抱きしめる
「(やっぱり秋斗の腕の中は安心するな)」
そうして数刻の時が流れ...
「明日も必ず来る」
真白を優しく見つめ、病室を去る秋斗
「もうあまり時間がないの」
その真白の声を聞いた者は誰もいない