2話
4月1日、とある高校の入学式。
満開の桜が若人を歓迎する一日。
ひらり一枚の桜の花が病室に舞う
「今頃、秋斗も入学式かな」
私の手元には、入学の通知とクラスメイトの一覧の紙。
学校になんて行けるはずないのに両親と秋斗が無理を通して入学させてくれた。
嬉しさと絶望で視界が曇る
「ごめんなさい。ずっとみんなに迷惑をかけて」
一滴の涙が紙に零れ、字が黒くにじむ
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「秋斗!また同じクラスだな、よろしくだぜ!」
「朝から元気だな、正真は」
クラス発表に従いそれぞれ自分の席に着いたり、同じ中学の友達と話したりする1年A 組。
「秋斗は相変わらずしけた顔してんな!せっかくの良い顔立ちが台無しだぜ!」
「余計なお世話だ」
正真の言う通り、結城秋斗は顔がかなり整っている。
おまけに180と高身長に勉学共にスポーツもできる一切の隙のない男だ。
しかし、ただ一人を除いては笑顔を見せておらず、一部の生徒から【黄昏の王子】とも呼ばれてる。
「席に着けー。入学のオリエンテーションを始めるぞ」
新しい担任の一言で、朝のホームルームが始まる。
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「秋斗今日暇か?クラスメイトで進行を深めるためのカラオケ大会が放課後開催されるけど、行こうぜ!!」
「結城君も絶対参加した方がいいと思う!」
放課後、正真とクラス一の美少女、一ノ瀬桃が誘う
「悪いな、この後用事があるんだ。俺のことは良いからみんなで楽しんできな」
「秋斗はいつもそうやって誘いを断るよな!用事ってなんだ、女か!?」
「え、そうなの!?桃ショックだよ」
正真は鬱陶しく、一ノ瀬はあざとく反応する。
「別にお前らに言う必要あるか?俺一人欠席したところで差し当たった問題はないだろ」
「結城君!そんな言い方無いじゃない!!」
「確かに秋斗はつれなさすぎだぜ」
正真と一ノ瀬はわざとらしく、秋斗を批判しクラスを巻き込もうとしている。
2人はどうしても秋斗と一緒に遊びたいようだ。
「悪かったな、少し言い過ぎた。だが、お前らの遊びに付き合う義理はない。時間は有限だからな」
秋斗はそう言い残し、スタスタと教室を去る
「時間は有限なんだ。一分一秒でも無駄にできない」
教室では無表情な秋斗が、泣きそうな顔をしていたことは誰も知らない