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僕から見て、兄は、近年、どこか焦っていた。
あくまで、僕から見てだ。
兄は、僕が思うに、
『ネガティブ』という英語より、『ポジティブ』という英語が好きな人だ。
「暗い」より「明るい」を好み、常日頃「朗らか」でありたいというかんじ。
だが、「天真爛漫」を、どこか、いつも遠ざけるようにしていた。
兄いわく、まず、そのイメージが、兄にとって何かドウキをワルイ意味で高ぶらせる四文字熟語だと言う。
そんな兄は、本日、とても、にこやかに帰ってきた。
「何か嬉しいことがあったの?」と僕が聞くと、
「漫画を買う女性を見て、なんだか、それが嬉しかった♪」と言う。
僕には、意味が分からなかった。だから、聞いた。
「なぜ、それが兄さんは、嬉しいの?」
「うーん、そう言われると説明するのが少し難しいが、その漫画の世界に入って、あのヒトは楽しむと思うんだよな……
そして、その漫画を描いた人も、そういうことを込めながら描いているのでは……と。」
「だから、なぜ、兄さんは、それが嬉しいんだよ!?」と、一瞬、更に聞こうとしたが僕は聞かなかった。
聞かなかったんだ。
僕は、兄のことが、未だに、どこか分からないのだ。




