第九話
ビーは、
「とっても、美味しいわ」と、屹度瞳がハートになると言う表現の近い顔をして、絶賛してくれた。
「お口に合って、良かったわ」と笑み返すと、公爵様が、
「凄いよ。感動二度目だ。」と、興奮気味に仰って下さった。そのお二方の様子を微笑んでご覧になっていた奥方様は、
「本当に、お茶もお菓子も素晴らしいわ!この世界のものとは、繊細さが違いますわね。」と、褒めて下さった。
「有難うございます。喜んで頂けて頑張った甲斐がありました。お茶工房のマグナムさんと厨房のコナンさんに早速報告致します。」にこやかにお伝えすると、
「君は、良く出来た令嬢であり、雇い主だが、私たちには、甘えていいんだよ。いいね?」と、静かに仰った。わたしは、はい、と答えると、
公爵様は、にっこりと肯き、
「さあ、いよいよ私の番かな?先生。」と、おどけた様子で、立ち上がった。
皆さんが、お点前を済ませ、片付けを終えると、
「これからの事を相談したいのだが、疲れていなければ、少し良いだろうか?」公爵様が気遣わしげに仰ると、奥方様はビーを促して、わたしににっこりと笑み、図書室を後にされた。
わたしは、公爵様に向き直った。
「君が、此処に召喚された次の日から、我が国の王、ハルトヒッヒ13世陛下には、お伝えしていたが、本日お召しがあり、君の体調が良ければ王宮で晩餐を饗したいとの仰せだった。どうだろうか?」
「はい、承知致しました。けれども、わたしは、王様と晩餐をご一緒させて頂けるような、この国のマナーを存じません。」
「心配には、及ばない。常の君のマナーで、大丈夫、と言うより、皆に、見せてくれると助かる。」わたしが、首を傾げていたのだろう、公爵様が言葉を繋いだ。
「この国のマナーは、全て瑠璃姫が、基盤となっているのだ。
我が祖であるユリウスの母は、王の姉にあたり、瑠璃姫の礼儀作法に感銘を受け、その所作を手本として、いるのだ。以来、我が国は、王家を始めとして、代々の中臣の姫君を手本としてきたのだから。」
わたしが、頷くのを認めて、
「早速だが、明後日、私達夫婦と三人で、午後3時に王宮に上がろう。」と事務的に仰せになった。
「はい。」
「それから、、、」
「?」
「王は、3ヶ月前、ナルル王女を出産された際、出血多量で、正妃を亡くされている。ララ王妃は、25才を迎えたばかりだった。王には、側室も側女もなく、後宮は、実質存在しない。故に、ナルル王女は、王宮で養育されている。耳に入れておくのが良いと思うのは、この位だろうか。」