第八話
あれから奥方様もビーもすっかり茶道が気に入られたようで、1日に少なくとも一度は、茶室でお茶を差し上げるようになった。のみならず、お二方の並々ならぬ好奇心は、お点前への意欲へと発展し、畳の歩き方から学び始めた。
そんな日常を送って4、5日が過ぎた日、
「お姉様、ご用意が出来ました!」と、元気にビーが呼びに来てくれた。わたしは、驚きながら、嬉しそうにわたしの手を引っ張り小走りの彼女に引かれながら、図書室への道を急いだ。
図書室のドアを開けて、尚更驚いた。和室には奥方様の隣には緊張した面持ちの公爵様が座っていらしたから!わたしを認めると
「先日、大変感動して、是非私も親しんでみたいと思ったのだ。だから、妻と娘が、羨ましくてね。今日が、待ち遠しかったのだ。宜しくお願いします、先生。」と、生真面目に仰った。わたしは、瞠目しながら、
「こちらこそ、宜しくお願いいたします。」と、最敬礼した((^^))
抹茶の味は、地球で言うと、粉っぽくお値段の安い、例えば学校などでのお稽古で使われるレベルのものだったが、抹茶が存在しているので、茶葉は存在している。そこで、わたしは加工工程を見学させてもらい、あれこれ口出しして、公爵家専用抹茶!を完成させた。それから、いくら抹茶を飲むと言っても、これはないよと言うような砂糖の塊のような菓子をなんとかしたくて、奥方様にお願いして、公爵家の菓子職人さんと日夜美味しいお菓子造りに励んでいる。ちなみに今日のお菓子は日本の小豆より大粒だが、小豆には違いなかろうと言う感じの豆を砂糖で煮込み潰して作った餡を葛を薄くのばして皮を作り、巻いた物に、苺ジャム?を載せてみた。本当は、桜の葉が欲しい所だが。
わたしは、だいぶ浮上して元気になったのでは、ない。
変えることの不可能な現実であるなら、今あるものを大切にし、目の前のことに最善を尽すべきだと、こんな異常な、非常事態でも冷静に優等生なわたしが顔を覗かせ、常のように振る舞ってしまう。
わたしは、そんな自分がとても嫌い。何時も思っていた。わたしだって、あんなふうに、泣き喚き我が儘が、否主張が通らないことを誰かの所為にして、自己を正当化し、悲劇のヒロインぶったら、どんなにか、すっきりするかと思う。ずっと、ずっともの心がついた時から、思ってきたのだ。
あんなふうに、とは、頑是ない幼児のように、が、普通だが、まあ、それも含めて、わたしが、出会って来た令嬢たちのように、だろうか。
少し、泣き喚くのを止めて、一応付いてる頭の、決してシワっぽくはないであろう脳味噌で、考えてみやがれ、否、恥をしれ、恥を。ー 的な。あれは、スーパースキルだとわたしは、モノ心ついた時から、ずっと思っている。今も。そう、信じている。そのワザを、だ。
他者に知性の足りない情緒の成熟しない愚かモノと罵られようと、その
スキルを活用しまくる種族にとって、そんな評価は、関係ないのだ。彼女達の世界は、泣いたモノ勝ち。騒いだモノ勝ち。そして、意地悪、いじめ何であれやったモノ勝ちなのだから。
そうだな、冷静沈着で、彼女たちと価値観の隔絶しているわたしには、はなしらむことだが、異世界に来てまでこの、年寄り臭い、イヤモトイ、オヤジじみた性格が変わらないのは、残念だが。
地球では、最近はオヤジたちも泣き喚くから、なんとも言えないか、、、
「美味しい!」わたしは、ビーの感嘆符の付いた感想に、精神世界から、漸くこちらの世界に引き戻された。いけない、又、屁理屈を捏ねまくり、自己否定しまくっていた。