第五話
その眼は、静かにひらかれ、わたしを見つめた。わたしは、見つめられるままに
「では、中臣の家から、百年毎に娘が消えていたのは、その為、だったのですね。」
「?」
「我が家では、百年毎に16になった娘が神隠しに遭うのだと言われていました。故に、その年周りの娘は特に厳しい警護の対象となりました。
不思議なのは、、、」
わたしは、言葉を切り、大きく息を吸いました。ーその時、
公爵さまは、わたしの言葉をなぞり、わたしの顔を瞬きせず見つめ、次の言葉を待っています。
「何故か、ずっと生まれなかった女の子が、その年周りには生まれてくるのです。わたしも、、、
わたしの父は男ばかり三人の兄弟の長男です。祖父も、曽祖父もです。」
「、、、」
「その前の代には、娘が一人。しかし、16で行方不明になっています。
ずっと、遡る度、同じような繰り返しです。
故に、中臣から嫁を迎えるのは、皇家でも難しいと、揶揄されています。
皆、役目の後は、こちらに嫁いでいるのですか?」
「いいえ、初代瑠璃姫さまだけです。後の13人の姫様方は、王家や、王族、或いは他国の王家に嫁がれています。
しかし、黒髪黒眼が現れるのは、我が家のみなのです。
故に、我が家の隠し名は、[光の道標]です。それは、恐らく、否確実に光の神子さまが、必ず我が家に降り立つ故、でしょう。」
わたしは息を再び深く吸い、
「それでは、今は、この世界は、どの様な災厄に見舞われているのでしょう?
貴方は何故、わたしの世界の言語や風俗習慣を理解なさり、わたしも、然り、なのでしょう?
わたしは、役目を終えました後、帰る事が出来るのでしょうか?
わたしの世界に、香陵には、多くの、わたしと同じ歳周りの娘がいます。それは、今までも同じだろうと思われますが、何故、中臣の娘なのでしょう?」
わたしは、常にはないような、少し興奮した、と、自認する程の勢いで矢継ぎ早に疑問を投げかけました。
公爵さまは身動ぎもなさらず、わたしを見つめたままでした。
「いま、この世界は嘗てない氷河期を迎えつつあります。常であれば、今は盛夏です。
そう、この国は貴女の故郷と同じような四季があります。
しかし、この5年、年を追う毎に気温が下がり続けています。
その結果作物の収穫は激減し、人々は、飢え始めています。
月日、時間の概念も貴女の国と同じです。
次の質問の答えともなり得ますが、瑠璃姫が降臨された折、宇宙が、と言うべきなのでしょうが、貴女の星と、国と、この星と国は光のランデブーと我々は呼んでいますが、超高速の互換機能を光の神子さまをお迎えした瞬間、体内にインプットされる、もしくは、眠っていた遺伝子が目覚める如く、当たり前の様に互いを受け入れられるようです。
これについては、もう1500年前から数あまたの学者が諸説たててはいますが、真実はまだ、解明されてはいませんが、先にお話した二説が有力とされています。」そこまで一気にお話されると一息つかれ、わたしの顔を見つめながら、
「これまで、地球にお帰りになられた方はなく、希望されていたか否かも不明です。故に、なのか、その方法が記された書は、私の識る限りまだ、見つかっていません。
貴女が、希望されるなら、その道を共に探ります。
そして、何故中臣の姫君なのか、それも光のランデブーと同じに、私にも判らない、又解明もされていませんが、我が家に伝わる代々の先祖の書き残した日記に因ると、故に極めて主観的になりますが、
今の貴女の在り様が、全てかと思います。」
その、言葉に、恐らく怪訝な顔をしているであろうわたしに、
「冷静で洞察力に優れ、頭脳明晰。礼儀作法はもとより、完璧な容姿、圧倒的な美貌。そして、何より、おっとりした育ちの良さ。」
一気に言い終えると、
「まるで、仲人の釣書の様だが」と静かに自嘲気味に笑む顔に出会った。
だのに、わたしの頬を涙が伝った。
公爵さまは驚き、言葉なく、わたしを見つめた。
「わたしの、価値は何処でも、同じ。それだけなのですね。」
彼は怪訝な顔をして、
「それ程の評価をされる貴女は、どれ程貴いか、。」と、言葉を、わたしの為に継いで下さった。
にも、拘らず、