表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

三話

遅れて上背のある、軍服を着た端正なお顔だちの男性が入って来た。

「お父様!」ビーと呼ばれた少女が駆け寄る。そのひとは、かがみ込み、軽々と彼女を抱き上げ、

「今日は何をしていたのだ?」と、低いが、澄んだ穏やかな調子で尋ねた。

その2人の様子をにこやかに見守っていた美しい女性は、

「お帰りなさいませ。今しがたお気づきになったようですわ」と、静かに伝えた。

「そう、良かった。

何処か、痛む処はある?」

首を振るわたしに、お二人は顔を見合わせ、少し安堵したようだった。

「良かったわね!」小さな、あどけない、そうして元気な声に、皆で笑顔になった。

「あのう」わたしが、声を掛けると、男性はこちらを見て、かがみ込み、

「私も着替えてこよう。君も大丈夫なようなら、一緒に食事にしょう、話はそれから」と言って、にっこりと笑んで退出した。

「後ほどね」と、女性はわたしの手に触れ、部屋を後にした。

そうして、入れ替わる様に、三人の侍女が入って来て、

「お召し替え致しましょう」

と、テキパキとわたしの身支度を整え始めた。

わたしは、上質なシルクの、柔らかなクリーム色のドレスを着せられ、髪を緩く、けれども品よく結い上げられた。そうして、侍女のひとりに食堂に案内された。

ノックをして、ドアが開いた。

中に入り、一礼すると

「堅苦しい挨拶はいいよ。こちらへ」

と柔らかな笑顔と穏やかな主人の声に招かれた席に着いた。

給餌の男性が水をグラスに注いだ。

「まあ、良かったわ。ドレスが丁度良くて。」女主人は、にこやかに褒めてくれた。

「可愛いいわ。」ビーがあどけなく言うと、

「まあ、おなまさんね」

主人は勿論の事、給餌や侍女も笑顔になった。

とても温かな家族だと思った。そう、わたしの家とは違う。


「食事は、どうだったかな?」異国の者と思しき少女を気遣って主人が尋ねた。

「はい、美味しく頂戴致しました。」

「私は、クラビス・ローデンマイヤー。公爵位にあり、近衛大隊の大将職にある。こちらは、妻の、」

「マリアンヌですわ。」にこやかに仰った。

「わたしは、ビーよ、5歳なの。」

「エルビアンヌよね?」お母さまの問いかけににっこりした。

きっと、わたしの気持ちを和らげる為年長者であり、公爵の位にある方が敢えてご自分から自己紹介して下さったのだ。しかし、わたしは、、、

「わたしは、」何をどう話して良いか、自分でも状況が解らず言い澱んでいると、

「図書室へ、行こうか。」唐突に侯爵様が仰った。わたしが、少し驚いていると、

「恐らく、理解が、現状把握が速やかになされると思う。」軍人らしい判断にコクリと頷くに留めた。

公爵様に続いて長い廊下を歩き、通された図書室は、大学の図書館並みの蔵書量で驚いていると、

「こちらへ来てご覧」と促され側に歩み寄り、示されたものを見て驚いた。

わたしが絶句していると、

「君は、ここから来たのかな?」

「確かに、わたしが生まれた国だと。けれども、意図して来たのでは。」

「そうだろうね。」その、言葉の意味が解らずに答えに困っていると、

「今から話す事は、少しばかり長くなり、何よりも君を驚かせ、悲しい思いをさせるだろう。しかし、覚えていて欲しい。君には、私達がついているという事を。」わたしは、不安に、唯頷く事しかできなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ