~第二の錦織圭たちに贈る言葉(33)~ 『戦略で相手の長所を抑え、戦術で相手の弱点を攻めろ』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(33)〜
『戦略で相手の長所を抑え、戦術で相手の弱点を攻めろ』
1. まえがき;
2019年11月10日に東京体育館であった卓球W杯団体戦の女子決勝(日本VS中国)を見た。シングル戦での伊藤美誠選手、平野美宇選手と中国選手の力量差はなかったが敗れた。二人の敗因は中国の戦略を見破れなかったことに尽きる。
監督・コーチは相手選手の戦術から戦略を見破り、タイムアウトを取って、それに対抗する戦術を選手に伝えなければならない。
監督・コーチは孫子兵法の謂うところの知・信・仁・勇・厳を磨き、強化しなければならない。特に、知を磨く事を怠ると相手の戦略が見えてこない。
知とは、様々なことに対する豊富な知識であり、物事に対処する知恵であり、インテリジェンスである。
知の中で、インテリジェンスとは部分的(断片的)な情報から相手の全体像を推理できる能力である。
平野美宇選手VS劉詩文選手の戦い(セット0−3で平野選手の負け)を例にとって、戦略・戦術を分析してみる。テニスにおいても技術は異なるが考え方は同じである。
2. 贈る言葉;
平野選手は卓球台近くから強打する速攻でポイントを取り勢いを着けるのを得意としいる。しかし、この試合ではこの前陣速攻が見られなかった。
中国選手は戦略として、平野選手を卓球台から遠ざける戦術を使った。
ショートサーブを見せ球にしてロングサーブを有効に使っていた。
わざとネットインのサーブを2回連続で打ち、平野選手が卓球台近くに立つと、ボディーショットのロングサーブで平野選手をのけぞらせ、イージー返球を強打していた。
また、通常のラリーでも深く返すことを繰り返し、平野選手を卓球台から遠ざけるのに成功していた。後方での打合では劉詩文選手がポイントを取ることが多かったが、それは平野選手が相手の深い球を意識し過ぎて自分のリズムを見失ったことによる。
相手の攻撃の受けに回ってしまっては勝てない。劉詩文選手は深い球での打合に平野選手を引きずり込むことに成功したのであった。
平野選手は相手を前後に揺さぶる技術を用いて劉詩文選手に対抗しなければならないのに打合に応じてしまい相手の勢いを助長してしまった。
監督・コーチは選手にタイムアウトで的確な指示が出せないといけない。そのためには知を磨き、相手の意図を見破り、対抗手段を教える必要がある事をしっかり認識しなければいけない。コーチは自分自身に厳しくし知を磨く必要がある。
また、選手に厳しい戦術(技術体得)を強いて勇気を持たせるには、選手からの信頼と選手への仁愛がなければいけない。また、選手と共に困難な練習に耐え、勇気を持って戦略・戦術を的確に考え決断し、それを選手に妥協を許さず遣らせる能力を持たねばならない。
孫子いわく『将とは、智・信・仁・勇・厳である。』
第一番に重要なのが智であり、六番目が厳である。
コーチ・監督が第一に持っていなければならないことが知識・知恵なのである。
あとがき;
戦略とは、勝つために戦う地域を選択すること。
戦術とは、戦略を成功させる為に投入するべき兵力(体力・パワー)、兵器(技術)である。
スポーツ選手が勝つためには、優秀な監督・コーチが必要な時代になっているのである。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2019年11月16日
参考文献;
孫子の兵法 安藤 亮 著 日本文芸社 昭和55年8月発行