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side.L 第25話:改めて勉強会をするわ

 日は変わって迎えた土曜日の朝。

 私は姫子と一緒に神楽の家へとやってきたわ。

 神楽に出迎えられて、今は見るからに高級そうなふわふわのソファとピカピカのテーブルが設えられた部屋に居るわ。

空調も完璧に整えられていて、神楽は言葉の通り快適な空間を用意してくれたのね。日本のこの季節は気温が高くて、地味に私の体力を奪っていくのよね。これでも最も気温が高い時期はもう過ぎてるっていうのが信じられないわ。来年はその時期も経験することになるし、その前に冬っていう極寒の季節が待っているのだから恐ろしいわ・・・。こんな目まぐるしい気温の変化に平然と耐えられる日本の人たちはどうかしているわ。


「ルティアの歓迎会は午後からってことで、午前中は勉強会ってことで良いわね。私はどの教科も大体できるから、二人に分からないところがあったら教えられるわ」

 勉強会が始まるみたいね。お言葉に甘えて早速神楽に聞いてみようかしら。


「知ってると思うけど、私は数学が苦手なんだ。だから教えて欲しいんだけど」

「苦手って、具体的にどういったことが苦手なのかしら?計算が苦手とか?」

「いや、計算は割と得意な方なんだけど、この数学って分野自体が受験にしか使い道がないものばかりなのが苦手なんだ。私はその、ネストールの国力増強に繋がる知識を最優先に勉強したいからさ」

「それがあなたが地球に来た目的だものね。でも、それなら簡単に解決できる問題かもしれないわ」

「え、どういうこと!?」


 驚く私に対して、神楽は淡々と話を続ける。


「それは、数学の使い道が受験にしかないって考え方が間違ってるってことよ。確かに数学は一見何のために計算しているのか分からないものが多いけれど、本当は私たちの生活の為に色々と役に立っているのよ。三角関数は建築やプログラミング等で必要不可欠なの。それに、ルティアが必要としているのは何も科学技術だけではないのよね?指数対数関数や微分積分等は経済の計算で役立てられているのよ。そう考えると数学を勉強する意味が見えてこない?」

 衝撃の事実。私には何の意味もない数字と記号の羅列にしか見えなくても、この世界の人は当然のようにそれを利用しているということなのね。


「ほ、本当にこの計算が役に立つの?それなら確かに勉強しないというのは勿体ないな・・・。悪いんだけど、もう少し詳しく教えてもらえる?」

「ええ、もちろんいいわよ。それじゃあ説明していくわね」


小一時間ほど神楽に数学について教えてもらって、私も考え方をかなり変えられたわ。


「今の話を一発で理解するなんて、流石は異世界の王立孤児院とやらでトップの成績だっただけはあるわね」

「ははは・・・。私も今の話を聞いてたけど、何も理解できなかったよ・・・。二人ともすごいね」

 私を賞賛する神楽と、燃え尽きたように虚ろな目をしている姫子。

「姫子・・・。あなたはそんなに無理して理解しようとしなくても良かったんじゃないの?私は事情が事情だから理解しなくちゃいけなかっただけだし」


「そうかもしれないけど、私もあわよくば数学の勉強になればと思ったんだ。私、数学苦手だし、というかどの教科も成績が良くなくて不安なんだ」

 なるほど、姫子は勉強が苦手なのね。


「人には向き不向きがあるものだから仕方ないわよ。姫子はいっそ学問の勉強はやめて、人徳を生かして専業主婦を目指したら?海入が異世界から帰ってくる前に既成事実を作ってしまえば多分上手くいくわよ」

「な、何を言っているの神楽!?海入君の意思を無視して、き、既成事実なんて滅茶苦茶すぎるよ!」

「既成事実って何?」

 姫子が顔を真っ赤にして言い募っているけれど、既成事実って何なのかしら。海入に関係することなのよね。

「そういえばルティアはまだ12歳だからこういう話には疎いのね。藤山君の知識には多分入っているから、気になったなら自分で調べたらいいと思うわ」


 何やら神楽が意味深に言ってるわね。気にはなるけれど、別に知らなくてもいいようなことにも思えてきたわ。既成事実って言葉は、今度気が向いたら調べることにするわ。


次で最後です。

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