第7話:転身したら同居人が変態だった件 後半
食事中の方は若干ですが読まない方がいい内容かもしれません。
ミサさんがお茶を淹れてくれて、一息つく。いや、正面には俺をにらみ続けるコマリさんが座っていて何とも落ち着けないのが現実だ。
コマリさんについてだが、改めてまだ朧げなルティアの記憶を辿ってみると、確かに教室と思われる場所で子供たちに優しく微笑みかけながら授業をするコマリさんの姿があった。
確かにこれは優しい、正にミサさんの血縁者と言える雰囲気を纏っている。
しかし、先ほどの俺に対する態度を考えると一つのよろしくない結論へと至る。
「あの、コマリさんはロリコンなんですか?」
「断じて違う!私はあくまでルティアの愛らしさに惹かれたのであって、たまたま惹かれた相手が幼いルティアだっただけだ。だからロリコンとは違うのだ!」
うわぁ、何たる迫力・・・。この愛の重さは、喩えロリコンではなかったとしてもヤバいやつだよ。
しかしこんな人でも5年間、俺のことを護衛してくれる人だ。なんとか仲良くならないと後で困る。
「それならまあいいんですが。私、コマリさんと仲良くやっていきたいので、どうにか受け入れてもらえませんか?」
精一杯気持ちを込めてでお願いした。まあそう簡単には行かないだろうけど。しかし、
「うっ、全然わがままを言ってくれないルティアのお願いの表情、いや騙されるな、いま話しているのはルティアではなく男だ・・・」
あれ、残念な発言だけど、意外と押せば行けるのか?少し希望が見えてきた。
しかし、光明が見えたのも束の間、ここで別の危機が俺に襲い掛かるのだった。
ミサさんが淹れてくれたお茶を飲んだことで急激に尿意を催したのだ。
「急なんですけど、すみません。その、トイレに行かせてもらってもいいですか?」
溜まった物は出さないといけないので、恥ずかしいのを我慢して俺はそう発言した。しかしこれがコマリさんにとって地雷発言となったようだ。
「何!?男でありながらルティアの下半身を見ようというのか!?私ですら見たことがないというのに!そんな真似、絶対にさせんぞ!」
今までで一番の鬼の面でヤバいことを言いながら、俺に迫った。だけど・・・。
「あの、出さないと死んじゃいますよ?あと、そんなに怖い顔で迫られると怖さで余計に・・・」
尿意と恐怖でもう頭がどうにかなりそうな俺は何とかコマリさんを説得できるように必死に話した。すると、コマリさんは急に動きをぴたりと止めた。分かってもらえたのかと思った矢先、
「涙目で哀願するルティア・・・。こんな顔は初めてだ・・・。喩え中が男でもこのルティアの可愛らしさは本物・・・」
そう呟いたと思ったら、そのまま地面にバタンと倒れ伏してしまった。
「あらあら、久しぶりにでましたねー。お姉ちゃんのキュン死」
ミサさんが驚くでもなくそう話す。
「えっと、ミサさん。これはその、よくあることなんですか?キュン死って」
「よくあることと言いますか、ルティアちゃんの新たな表情を見ると大体こうなる感じですねー。今回は中身がカイリさんだということもあって一度は耐えたようですが、2連続はさすがに耐えられなかったみたいですね」
おいおい、どんだけだよこの人。呆れる他ないが、今は俺には別の喫緊の問題があることを思い出した。
「ミサさん、トイレはどこですか!?」
トイレはなんと洋式だった。ギリギリ間に合った俺は、できるだけ下半身は意識しないように用を足すことにした。
しかし、ミサさんにあそこまでヤバい姉がいるとは思わなかった。
ふと思い出す、王城行きの馬車でのミサさんとの会話、
『ふふっ、いくらルティアちゃんがかわいいからって、自分の体にイタズラとかしちゃいけませんよ?そしたら怖ーいことになりますからね』
あれは絶対にコマリさんのことだと確信した。何もしていないのにあそこまで怖いのだから、もし何かしてしまったらと思うと・・・。
俺はそれ以上考えるのはやめ、ただこの体に変なことは絶対にしないと心に誓ったのだった。
幸先が良かった異世界での生活に、一つの陰りが見えた事件だった。
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