第45話:青髪の男 後半
周囲に他に怪しい人影はないということで、俺とコマリさんはひとまず家に戻った。
「すみません、私が不用意に外に出たせいで騒ぎを起こしてしまって・・・」
「この辺りは治安が良い方だから、私も注意するのを怠っていたよ。いくら治安が良くても夜中に美少女が一人で出歩くものではないのにな。そこはお互い不注意だったということにしよう」
俺が反省していると、コマリさんもフォローを入れてくれた。俺だってもう17歳なのだから、自分の身の安全くらい自分で管理できなきゃいけないのに。やっぱりまだ自分が女の子の姿であることに慣れていないな。あの青髪の男は女の子だから狙ったって感じではなかったけど。
「しかし、あの男は本当に何者だったんだ。女性を狙う暴漢という雰囲気ではなかったし、何よりあの素早い身のこなしと水魔法で霧を発生させて視界を奪う技術はかなりの訓練を積んできたはず。どこかの国の暗部の者かもしれんな」
コマリさんもあの男の狙いについて疑問を抱いていたようだ。しかし、国といえば男が国の名前を口にしていたな。
「あの男はニコロ王国のある団体の一員だって言ってましたよ。それで私を勧誘するとか何とか」
「何、ニコロ王国だと?あの国はネストールとの大昔から宗教的な対立が根強いし、今も戦争を起こそうと動いている国ではあるが・・・。何故カイリを狙っている?」
うぇ、宗教的な対立があるのは知ってたけど、戦争まで起こそうとしてるのか。できれば巻き込まれたくはないけど、あの男は明らかに俺を狙ってたんだよなあ。
「私が転身者だってことがバレているとか?それなら異世界の情報を奪って戦争を有利に進めようと私を狙うのも分かる気がします」
「いや、そんなはずは・・・。転身魔法のことはアゲーラ国王が信用した限られた者しか知らない。私も彼らのことは信用しているし、中に裏切り者が居るとは考えたくないが・・・。しかし、楽観視して良い状況ではないな。父にも一度相談しておこう」
うえぇ、なんだか大事になりそうな予感。まあ俺の存在は国の存続に大きく影響するんだから当然か・・・。
「あの青髪の男、謎だらけですし用心するに越したことはないでしょうね・・・。そういえば、あの男はコマリさんのことも知ってるみたいでしたけど、実は知り合いなんじゃないんですか?コマリさんのことを閃光の舞姫とか呼んでましたし」
ふと、男がコマリさんに対して見せた反応が気になったので聞いてみた。
「ああ、その呼び名は私が昔ネストールの各地で魔物退治をしていた時に付いた奴だな。私はあの男のことは知らないが、向こうが知っているということは他国にまで広まってしまっていたのだな・・・。全く、私は舞姫なんてガラじゃないのに噂というのは勝手に尾ヒレを付けて広まってしまうから質が悪い。迸る稲妻の中で優雅に舞うように敵を斬り裂く様は正に閃光の舞姫だと!?私の戦い方を見て誰がそんな呼び名を付けるか!全部根も葉もない噂だ!」
コマリさんは話している途中から急に感情的になり、赤くなった顔を手で覆い隠しながら悶えるようにそう言い放った。
閃光の舞姫っていうのは地雷だったか。コマリさんにとっては黒歴史みたいだけど、やってることは立派な訳だし、その活躍を目の当たりにした人には美化されて見えても仕方がないかもね。
ていうか、普段凛々しいだけに、こうして赤面して悶える姿はギャップ度が高くて大変眼福だ。
閃光の舞姫という言葉を教えてくれた青髪の男にはこの点だけは感謝したい。でも、もう二度と俺には関わってほしくないな。
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