第43話:『リグレッション』の人体実験 後半
俺は鎌を手に握り、心の中で魔法をイメージする。俺の体格とMP量から計算すると、最大MPの3分の1くらいを消費することで大体1歳くらい成長するらしい。あまり成長しすぎると万が一戻せなかった時が大変なので、1歳くらいで様子を見ようという話になったのだ。
準備が整ったので俺は自分を対象として呪文を唱えた。
『グロウ』
その瞬間、俺の体に力のようなものが流れ込んできたのを感じた。そして、気が付けばさっきまでよりも視点が高くなっているのが分かった。『グロウ』は問題なく成功したんだな。
成長したルティアの姿が気になっていたので予め用意してもらっていた鏡に自分の身を映してみた。
元は145㎝くらいだったこの体だが、今は見た感じ155㎝くらいはありそうだ。髪が伸びて顔立ちも少し大人びてきていて、かなり印象は変わってるね。でも元の神秘的な雰囲気はそのままで、美しさに磨きがかかった感じだ。これは将来美人になることは約束されているようなものだな。
ただ、一つだけ悲しいお知らせがある。それは、その、胸部が・・・、西ネスト平原のままなのだ。12歳の姿だったときはまだまだこれから成長するのだという希望が持てたが、13歳の姿で身長が10㎝も伸びているのに変化が無いということは、恐らくはもう・・・。
いや、俺は不自然に大きすぎるのよりは小さい方が好きだし、これでも全然構わない。でも、5年後この体がルティアに帰った時にルティアが悲しむのではないだろうか。一瞬、豊胸マッサージという言葉が頭によぎったが、俺がするのはそれもある意味この体へのイタズラになるからルティアを悲しませることになるな。ルティアに変態扱いされるのは俺にとってもダメージが大きすぎるし、下手なことをするのはやめておこう。
「す、すごい美少女ですね!これが今の私の姿だなんて信じられないです!」
俺はブレブレになった心を隠そうとした。が、できているかどうかはかなり怪しい感じになってしまったな・・・。
「うん、可愛らしいと思うよ。これは同年代の男子たちが放っておかないだろうね」
あれ?マジキタさんの反応は薄いな。
「早く『リグレッション』の効果があるのか試そうYO!」
イクシムさんに限っては見た目への反応は0かよ!
そういえばこの人たちは研究命みたいな人たちなわけで、実際命を懸けて異世界の研究をしているわけだ。だったら目の前の美少女よりも実験優先だよね。
コマリさんにこの姿を見せたら折角治ったルティア大好き病が再発しそうだし、ここで実験することにしたのは正解ではあったのかもしれないけど、共感を得られないのはちょっと寂しい。
しょうがないからこの姿を楽しむのはまた今度にして、今は実験に集中するか。
「そ、そうですね。それじゃあいきます。『リグレッション』」
呪文を唱えると、今度はさっきとは逆で体から力が放出されたような感覚が訪れた。そして鏡で確認すると、予想されていた通り『リグレッション』の効果は現れていて、俺は12歳の姿に戻っていた。よしよし、異常は何も感じないし、無事上手くいったと見ていいな。
「おお、実験は成功だYO!カイリ、これはお手柄だYO!」
イクシムさん、急にテンションが上がったな。ほんと研究者っていうのはある意味分かりやすいね。
まあこれで俺も無事に役目を全うできて一安心だ。人間への成長魔法の使用が容認されるようになっても実際どこまで有効に使えるかは分からないけど、いつかこの国の平和の為に役に立ってくれることを俺は願う。
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