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第38話:異世界研究所へ行ってみる

 俺がリノスに来てから約3週間が経過した。こちらに来たのが新リノス歴1019年9月1日で、今日は9月20日だ。どの世界でも太陽と月の動きから暦を作るのは変わらないらしく、奇しくも地球とリノスの日付は全く同じになっている。年数だけは『魔女の反祈』を起こしたケベフの女性を殺害した年を、ケベフを恐れ妬む者達が勝手に新リノス歴元年としたものになっているが。だから、今でもハルウェルとケベフを信仰している者が多いネストールでは1019年という言葉はタブーになっている。でも、地球とちょうど1000年違いの新リノス歴の方が俺としては分かりやすいから頭の中ではこっちを使うつもりだ。

 3週間も暮らせば王都での暮らしにもそれなりに慣れて来て、今ではミサさんの案内が無くても街中を歩けるし食材も買いに行ける。お金はミサさんがいくらでも渡してくれるので気にする必要はない。

 そんな感じで快適な異世界生活を満喫している俺だが、今日はある意味での「仕事」をしなければいけない。それは、首都ネスト北東部にある「研究所」への報告だ。その研究所の実態は地球技術の研究所なのだが、地球のことは国家機密なのでその存在を知るものは皆「研究所」とだけ呼んでいる。

 俺はその研究所と定期的に連絡を取ることを義務付けられている。俺が新しい知識持ち込んだり、研究員たちが俺に地球技術についての質問したりする機会を設けるためだ。いや、ただの日本の高校生だった俺に地球の便利技術のことを聞かれても、大した答えはできないから本当はあまり期待しないでほしいんだけど。

 俺とはそういう関係である研究所だが、実は俺は既に一度訪れている。新たな成長魔法についての報告をするためと、この研究所の所長である『イクシム・タウメッヒ』という貴族に会ってみたかったからだ。

 イクシム様はネストールを古くから支えてきたタウメッヒ家の子息であり、なんと、一度目の異世界転身魔法で地球に行った人物でもあるのだ。この世界では俺以外で唯一地球を生身で感じたことがある人物であるため、一度地球について話してみたいと思っていた。これってもしかしてホームシックってやつか?と思ったけど、リノスでこれだけ充実した生活を送れてるんだし、まさかたった3週間でホームシックになんてならないだろうな。

 結局前に研究所に行った時にはイクシム様は留守で会えなかった。その時にイクシムさんの予定を聞いて、確実に会える日を教えてもらった。今日がその日なのだ。

 俺は厳重に人払いされた区画を通って研究所への入口へと辿り着いた。そして、出入りを管理する衛兵には以前来た時に顔を覚えてもらったので顔パスで中に入れた。

 中はやたらと近代的に見える。地球由来の道具や部品がちらほら見られるので、ここだけ地球だと言われても信じられそうだ。


「こんにちはー、カイリです。イクシム様はいらっしゃいますか?」

 とりあえず俺は今日会う予定のイクシム様を探すことにした。周囲に聞こえるように大きめの声で尋ねてみると、すぐさまこちらに向かってくる人影が現れた。その人物はパーマがかかった短い金髪の男で、サングラスとピアスをしており中肉中背の体に何故かアロハシャツを着ていた。なんでこんなチャラ男がこの研究所に居るんだ?そんな疑問を抱いていると、俺の目の前で立ち止まったそいつがとてもにこやかに俺に笑いかけながら口を開いた。


「ハローカイリ、よく来たYO!私がここの所長のイクシムだYO!私はずっと君と話したかったんだYO!」

 なんかおかしな口調の人が現れたんですけど!


読んで下さってありがとうございます。

活動報告で後書きしてます。

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