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side.L 第21話:聖域へと案内されたわ

 宇水さんに連れられて再び廊下を歩いて行くと、一枚の扉の前へと行き着いた。


「ここは私の部屋よ。中へ入って」

 宇水さんがそう言って扉を開けて中へと入っていったので、私もそれに続いたわ。それにしても、あれ程私を突っぱねていた彼女が突然自分の部屋にまで招き入れるなんて、何の心変わりがあったのかしら。

 彼女が自分の部屋だと言った空間を見渡してみると、とにかく広さが目立った。私がこの日本に来てから使わせてもらっている海入のアパートの一室でも普通に暮らす分には何も不自由しない広さなのに、この部屋の広さはその4倍はあるわね。その広さの割には物が全然置いてなくて、物寂しい印象を受けるわ。海入の部屋にはゲーム機とかアニメのグッズとか色々置いてあったから余計にそう感じるのかしらね?


「これが宇水さんの部屋かぁ。すごく殺風景だけど、趣味とか無いの?」

「あまりジロジロ見ないで。この部屋のことはどうでもいいの。それよりも、私が見せたいものはこの奥よ」


 ああ、目的地はこの部屋ではなかったのね。彼女が向かう先を見ると、そこには大きな両開きのガラスの扉があったわ。この扉の向こうは外みたいね。そこに一体何があるっていうの?


「ようこそ、私の聖域へ」

 そう言いながら、彼女はガラスの扉を開いて外へと出た。聖域とは何の事やらと思ったけれど、私も続いて入って確認したら、そこはテラスなのだと分かったわ。

 4メートル四方程度の木製の床板を、同じく木製の手摺りが囲っている。その手摺りの網目状の部分には色とりどりのモールが巻きつけられ、設置されたテーブルとイスには星形のシールがいくつも張り付けられていた。この可愛らしい風景は室内の味気無さも相まってとても印象深いものになっている。


「随分と可愛らしい飾りつけだな。これって宇水さんがやったの?」

「そうよ。正確には幼少期の私が、だけれどね。あの頃の私は私の人生の何もかもが上手く行くと信じて疑わなくて、自分はシリウスになるんだ、なんてここで星空に誓っていたの。だから、ここは私にとっては祈りを捧げるための聖域みたいな場所なのよ」


 昔を懐かしみながら、自嘲の表情で空を見上げる宇水さん。日はすっかり沈んでいて、見上げた先の夜空にはいくつもの星が燦然と輝いていた。


「この空間が宇水さんが見せたかった物?この飾りつけといい今の話といい、昔の宇水さんは今とはかなり違う性格だったんだな」

「それが、そうでもないみたいなのよ。私の本質はあの頃からさほど変わっていない。さっきあなたが『自分を心の檻に閉じ込めるのは止めて』って言ったわよね。それでふと思い至ったことがあるの。私はシリウスになるだとか言って、私自身を凍える冬の夜空という牢獄に閉じ込めてしまったのではないかって。それ以来私は、特別になりたい私と周りの影響を受けている私をずっと心から引き剥がせないままでいるのかもしれないわ。そして、どうやら自分で錠を閉めておいて、開ける方法は分からないみたいなのよ。ああ、自分の中でいつまでも上手く繋がらなかった事柄が、今綺麗に繋がった感覚よ。ふふふっ!」


 宇水さんは自嘲の影は消えていないけれど、心底楽しそうに笑った。

 宇水さんはずっと特別になりたいという感情に付き纏われていて、対処する方法が分からずにいるってことかしら。持って生まれたものが私とは違いすぎて理解しがたいけれど、多分そういうことで合ってるわよね。


「私が言ったことが良いヒントになったみたいで何よりだよ。それで、そんなに楽しそうってことは、あなたの問題の解決策も見つかったってことなのかな?」

 雰囲気が二転三転する彼女には振り回されているけれど、何だかんだ良い方向には向かっている。ここはきっちりと話を合わせて押し切ってしまいたいわね。


「そうね。全てが繋がった今なら言えるわ。私の止まった世界の時間を進めるための鍵は藤山君、いいえ、今のあなたはルティアだったわね。そうルティア、きっとあなたなのよ。あなたなら私を特別にしてくれると思うの。今日はもう遅いから、また今度一緒にお話ししない?異世界の話ももっと詳しく聞いてみたいわ」

 やった、良い感じに話が進んだ・・・って、随分と私の評価が上がってるわね!?というか、特別になりたいっていう部分は変わってないのね・・・。宇水さんとの繋がりは保てるのだから悪くはなっていないけれど、これって本当に話が進んでいるのかしら?先が思いやられるわ。でもまあ、今すべき返事はただ一つよね。


「うん、そうしようか。あまり期待されても困るけど、信用を得るためにも異世界の話ならいくらでもするよ。これからよろしく、宇水さん」


読んで下さってありがとうございます。

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