side.L 第20話:ここで最大限に賭けるわ 後半
「・・・ということがあって、私ルティアは意識だけでリノスから来て、地球で海入の体を使うことになったんだ」
私は宇水さんにリノスのこと、異世界転身魔法のこと、私の生い立ちや本当の年齢と性別のことなんかをざっくりとだけれど説明した。宇水さんは何も言わずに鋭い目つきで私のことを見ながら話を聞いていたわ。普通こんなことを聞かされたら私のことを変人認定して終わり。でも、何の突破口も見いだせないままこの機会を逃すくらいなら、一か八か相手の動揺を誘って反応を窺う方が良いと思ったの。
彼女は感情を表には出さない性格だけれど、今日の夕方の私の話を聞き入れて家に招いた辺り自分の中で整合性が取れない事柄は解消しなければ気が済まない性格でもあると思うわ。私の話を聞き終わった後は目を瞑って何か考えているようだけれど、きっと氷のように冷たい表情の裏では今の話を噛み砕いてどう反応すべきか考えていると思うの。
「・・・本当に馬鹿げた話ね。そんな話を私に信じろっていうの?その異世界という物の存在を証明することはできるのかしら?」
「残念ながら証明する術は今はないよ。魔法は地球では使えないし。だから今の話で信じてもらうしかない」
うぅ、やっぱり感触が悪いわね。まあ私だって地球という異世界があるなんて話を聞いた時はその話を持ち込んできたネストール王国の重臣がとち狂ったのかと思ったわ。魔法があるリノス生まれの私でもそうだったのだから、魔法のない地球で生まれた宇水さんには猶更そんな不思議な話を信じることなんてできないわよね。
信じてもらえなくても仕方がない、元々分の悪い賭けであることは分かってたからと内心諦めかけていたその時、宇水さんの口から驚きの言葉が出てきたわ。
「その話、別に信じてあげてもいいわよ」
「はえっ、本当に!?」
私の心が諦めようとしてるのに急に信用しないでよ、びっくりして変な声が出ちゃったじゃない!いや、でもこれは流れが来ているのよ。何とか平静を装わないと。
「だって、それが本当なら最近の藤山君の急な変わり様にも説明が付くもの。私があなたに感じた違和感の正体が全く掴めなかったのは、異世界なんて言う未知の存在が絡んでいたからだと思えば納得できるわ。
それに今のあなたを観察していて、あなたがしょうもない嘘で私を騙そうとする人間には見えなかったの。だから今は信じてもいいわ」
なるほど、私の熱意が伝わったのね。これなら話を続けられるわね。
「そうか、信じてくれてありがとう。それなら、さっきの私の話も受け入れてくれるんだな。私は入れ替わる前までの海入のことを全て知っている。転身魔法のことはまだ完全には解明されていないけど、だからこそ宇水さんにも同じことが起こるかもしれない。だから、誰もあなたのことを分からないなんて思って自分を心の檻に閉じ込めるのは止めて。いつか、あなたの完全な理解者が現れる可能性だってあるってことを分かっておいてほしいんだよ」
そこまで言って私は宇水さんの表情を観察した。そこには疑いや出会った当初の無感情の色が浮かんでいるのではないかと思ったが、そうではなかった。彼女は笑っていた。ピアノを弾いていた時の楽しそうな顔とはまた違う、自嘲のようでもあり無邪気な幼さのようなものである不思議な笑みだった。
「ふふっ、そんな可能性、いくらなんでも信じられないわ。それよりも、私、あなたに見せたいものがあるの。付いてきてくれるかしら?」
宇水さんは笑みを隠すこともなくそう告げる。見せたいものって何かしら?突然すぎてよく分からないけれど、この笑みを見る限り悪いではない・・・と思うわ。笑っていても彼女が何を考えているかは全くの謎。
ともかく、今は彼女の言う通りにしてその謎を少しでも解明しなければいけないわね。
読んで下さってありがとうございます。
活動報告で後書きしてます。
※19話を前半にして、20話を後半という形にしました。




